shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Tango & Beatles / Tango & Liverpool Project

2010-06-19 | Beatles Tribute
 ビートルズ・カヴァーにはラトルズやユートピアのような正統派(?)が存在する一方で、何やらワケのわからん企画物も多い。私は生来いちびりな性格なので、由緒正しいビートルズ・ファンなら見向きもしないような盤でも面白そうならとりあえず試聴し、1つでも気に入ったトラックが入っていれば買ってしまう。
 この「タンゴ & ビートルズ」を買ったのは3年ほど前のこと、ビートルズ・ナンバーをラモーンズ風にパンク化したパンクルズ、クリスマス・ソングをマージービートでロックさせたビートマス、ロックンロールであろうがバラッドであろうがおかまいなしにビートルズを片っ端からルンバ化するという前代未聞の暴挙(?)に出たロス・ローリンなどのおバカな傑作カヴァー・アルバムに出会ってすっかりその筋系の音楽にハマった私は、面白ビートルズ・トリビュート盤を求めてネット検索に明け暮れていた。そんな中で偶然見つけたのがこのアルバムで、タイトルを見た私は “タンゴとビートルズ” っていくら何でもそれは遊びすぎちゃうの、と思ったものだ。
 そもそも“タンゴ”というジャンル自体、私はほとんど知らない。 “タンゴ” と聞いて頭に浮かぶのは小学生の時にシングル盤を買った「黒猫のタンゴ」くらいだ。そういえばジリオラ・チンクエッティのタンゴ・アルバム「スタセラ・バロ・リスシオ」も持っているが、スタッカートを多用して音をブツ切りにするようなタンゴ独特のサウンドにイマイチ馴染めず、買って一度聴いただけで CD 棚の “多分二度と聞かないかもしれないコーナー” へと直行した。別にタンゴが嫌いというワケじゃないが、ロックやジャズのような “生涯の音楽” としての魅力は感じない。
 そんなタンゴのリズムで、あろうことか珠玉のビートルズ・ナンバーをザックザックと切り刻んでいったのがこのアルバムなんである。私は eBay でアルゼンチンのセラーから$8.50で入手したが、送料込みでも1,000円ちょい... 試聴できるサイトを見つけられなかったのでミズテン買いになってしまうリスクはあるがが、タンゴがハズレでもビートルズなら曲で聴けるだろうという皮算用だった。
 届いたCDを見るとアーティスト名が “タンゴ & リヴァプール・プロジェクト” となっている。いかにもその場でテキトーにデッチ上げたような名前だが、この怪しさがたまらんのよね(^o^)丿 こういう珍盤・奇盤・怪盤の類はハイ・リスク・ハイ・リターンというのがコレクターの基本だが、今回は私的には見事に “当たり” だった。
 リード・ヴォーカルはサワ・コバヤシという日系らしき女性で、微妙に「アビー・ロード」をパロッたジャケット・デザインも担当している。ヴォーカルはこれまで何度も取り上げてきた「ボッサン・○○」シリーズや「ジャズ・アンド・○○'s」シリーズにぴったりハマりそうな “雰囲気一発” タイプ。アルゼンチンはこの手の癒し系ヴォーカルが多いなぁ...(^.^)
 短いつなぎの効果音トラック⑥⑪を除けば全11曲、⑫⑬はそれぞれ④⑨のダンス・リミックス・ヴァージョンになっているので実際には全9曲だ。タンゴのリズムが哀愁舞い散る原曲のメロディーと抜群のマッチングを見せる②「ミッシェル」や③「アンド・アイ・ラヴ・ハー」、疾走感溢れる原曲を換骨堕胎して見事にタンゴ化したセンスに唸らされる⑤「ヘルプ」、絶妙なテンポ設定とアレンジで完全な社交ダンス・ミュージックと化した⑨「ティケット・トゥ・ライド」あたりが特に好きだ。
 頭の固いビートルズ・ファンの中には “ナメとんのか!” と怒り出す人もいるかもしれないが、私は逆にこんなおバカな企画でタンゴ化されても相変わらず輝きを放ち続けるビートルズ・ナンバーの “楽曲としての力強さ” に、グループ解散後40年を過ぎても今なお人々に愛され続ける彼らの凄さの一端を垣間見たような気がした。

ミッシェル


ティケット・トゥ・ライド

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