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藤井聡太名人防衛から叡王戦第4局へ

2024-05-29 04:22:09 | 身辺雑記


 叡王戦第4局が5月31日にある。この将棋は大大大注目である。8冠だから当然のことだが、防衛戦が続く。名人戦は4勝1敗だったが、かなりきわどい戦いの部分もあった。豊島挑戦者が乱戦に持ち込もうと、過去に例のない作戦を用いた。最終戦は豊島9段が振り飛車にした。名人戦での振り飛車戦はもう長いこと無かったのではないか。

 豊島9段の終盤力が生かせる展開に持ち込んだ将棋もあり、すごい名人戦の5局だったと思う。豊島9段はAI研究の先駆者である。乱戦に持ち込もうとした理由は藤井名人のAIの戦略研究が、図抜けていてAI研究競争では勝てないと考えたからだろう。

 豊島9段がタイトルを取るようになっても、その将棋の強さを理解できなかった。何か勝ってしまうが、その勝ち方に度肝を抜くような手とか、奇想天外の発想がない。失礼なことだが、面白みのない将棋だと思えた。将棋は勝ちさえすれば良いのかと、難癖を付けていたのだ。

 大山将棋や羽生将棋にある、そして今では藤井将棋にある、信じがたいような発想が豊島将棋には表現されない。それでも不思議に勝ってしまう。その強さが何か違う人だと思えた。ところが、今回の名人戦では考えられないようなさすがだと思える、素晴らしい手が表れていた。豊島九段の進化はすごい。

 藤井名人でなければ、勝てなかったに違いない。最終戦を除けば、きわどい将棋が多かった。藤井名人が防衛を出来たのは、AI研究で上回っているからだ。AI研究は記憶だ、と渡辺永世竜王が悔し紛れに言っていたとおりなのだと思う。記憶力は年齢と共に衰える。

 若い藤井名人には記憶力で豊島9段は及ばないと考えて、乱戦に持ち込もうとしたのだろう。その点で藤井8冠からタイトルを奪うのは、同年齢の伊藤かさらに若い藤本になるだろうと8冠を取ったときに予測した。その予測通り、叡王戦挑戦者伊藤匠七段は後一つ勝てば、藤井8冠からタイトルを取れるところまで来た。

 8冠を制覇することよりもそれを維持することの方が難しい。羽生7冠はタイトルを制覇して、すぐに奪われた。心理的に守るものの方が挑戦するよりも難しい。全ての将棋指しが、藤井将棋を徹底研究している。その長所を出させないように、そして自分が優れていると思われる部分で挑戦してくる。

 伊藤七段は終盤力がすばらしい。藤井戦を除けば、やはり八割以上勝つ強さなのだ。だから何度でも挑戦者として再登場してくる。詰め将棋であれほど卓越している藤井8冠と遜色のない終盤力である。終盤勝負に持ち込めば勝てる可能性があると考えているのだろう。

 外の棋士の場合、終盤に互角であれば、勝てないと考えて中盤戦までに有利の状態にしようとする。ところが、伊藤七段は終盤まで互角で進めば良いとして、無理な中盤の手段を求めない。そのために終盤まで互角の勝負が多い。それなら、藤井8冠が勝つだろうと思いきや伊藤七段が勝ちきったのだ。

 この終盤で勝ちきる戦い方に藤井8冠は、今回戸惑って2敗したと思われる。藤井8冠は今まで伊藤七段には11連勝で負けたことがなかったのだ。違った、間違っていた。伊藤少年と藤井少年は子供の頃から競い合う間柄だったのだ。

 小学生名人戦の準決勝戦で伊藤少年に負けて、藤井少年は泣いたのだった。しかしその時優勝したのは、その伊藤少年でもなく、プロにならなかった早稲田将棋部の川島さんだ。伊藤七段のすごいところは、負けても負けても自分の将棋で挑んできたところだろう。いつか勝てる日が来ると信じて努力を続けてきたのだ。

 同時進行だった、名人戦が防衛できて、いよいよ叡王戦に集中するだろう。次の31日の第4戦は負ければ、8冠制覇が崩れる天下分け目の一戦となる。見たこともないような藤井将棋が見られると思う。終盤にどうなるかと思うと今から気がかりで成らない。

 伊藤七段が藤井8冠の最初の挑戦は竜王戦である。これを4連敗。そして全く腐らずすぐに、棋王戦での挑戦。しかし、これも3連敗。全く調子を落とさず、すぐに叡王戦での挑戦。負けても、戦い方を変えることもない。調子を崩さないところが並ではない。正面からの敗北で何かを学んでいるのだろう。

 そして3度目の挑戦で、何と2勝して藤井8冠を崖っぷちに追い詰めたのだ。両者先手番を勝ち1勝1敗の互角の進行。そして、藤井8冠の先手番を何と伊藤七段が破ったのだ。この将棋は実に難解な将棋で後半で、両者1分将棋になる。すごい連続王手を藤井8冠がかけ、この難解な終盤を見事にしのぎきり、伊藤七段の勝利。

 終盤力で藤井8冠を上回ったように見えた。これは始めて見たことで驚異的なことだ。誰もが驚くほど伊藤七段は急激に強くなっている。藤井8冠が調子を崩して負けたわけではない。伊藤七段が勝負に上回って勝利した気がする。土壇場の1分将棋で慌てず冷静に読み切っていたのは、素晴らしい将棋だった。

 次の第4局は藤井8冠の後手番である。どういう戦型になるか角代わりなのだろうか。非常に興味深い。持ち時間が短い。しかもチェスクロックなので同じ4時間でもさらに短い。藤井将棋は時間が長いほど特徴が出る。その点では叡王戦が一番防衛が難しいだろう。

 伊藤七段が叡王戦に勝利するためには、あるいは8冠からタイトルを取るためには、次の一番にかける必要があるだろう。次の一番は今年、最高の一戦になるはずだ。この一戦を見ることが出来るだけでも、将棋がある程度分ることが嬉しい。

 将棋はAIと人間の関係を表わしている。AIは人間をはるかに超えるのだ。それはどの分野だって同じで、人間はAIとどう関わるかを問われている時代なのだ。AI革命が起きている。そのことを将棋というゲームで先行して見せてくれているのだ。

 人間同士の頭脳の戦いの価値は感じるのだ。そのことはどの分野でも同じで、どれだけAIが優れているとしても、人間らしいものの価値は、比較されながら高まる。野球ロボットの完璧なものが登場しても、人間大谷翔平の方が魅力あるのだ。

 人間が絵を絵を描くという意味が、明らかになるはずだ。AIが描くような絵を描いている人のつまらなさが、明らかになるはずだ。人間にとって藝術とは何か。生きると言うことはどういうことなのか。自分というものは何なのか。そ言うことはAIではどうにもならないことだ。

 人間が生きるという意味がAI革命によって、明確に問われるようになる。たかが将棋というゲームを見ながら、人間の可能性を感じる。人間は人間らしく生きると言うことだ。例えば裁判はAIに任せた方が良い。しかし、藝術は人間が行うことで、意味がある。

 
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