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『大東亜戦争の正体』

2008-11-09 05:11:29 | Peace Cafe
このブログへのコメントで、近現代史の推薦できる本として紹介いただいたものだ。やっと図書館まで行ける時間が出来たので、借りてきて読んでみた。清水馨八郎著、祥伝社。歴史の研究書かと思って読み始めて、まるで違っているのでとまどってしまった。学問と言うものは主観を出来る限り排するという姿勢が大切だと思う。稲の作物学の研究に於いて、出穂のメカニズムの研究をする。このことが温暖化とどのように関係するかが研究課題であるとする。予見を廃し、科学的な客観性をどう確保するかを、実験法の設定の大前提とする。学問研究とはどの分野でも、そうしたものであろう。大東亜戦争が、アメリカの侵略戦争である。このような発想を持つのであれば、それを裏付ける研究の深さが、資料の正確さが何より重要に成ろう。しかもその研究材料は2次資料でなく、原本に当たったものであることが、重要である。所がこの本ではそうした姿勢は、皆無である。つまり、この本は国粋主義政治思想のプロパガンダ本と位置づけることが、私の評価である。

おかしな論理展開を文面で指摘してゆく。
○「白人の野蛮性と世界制覇への道」では、稲作の優秀性と比較して、麦の農業生産性の低さが、一番有利な職業は略奪というのが一般常識になるのであった。P44
○日本がその生命線である朝鮮半島や満州に進出したのは、白人のアジア侵略を防ぐためだった。つまり自衛のためであり、植民地支配ではない。P88
○日本は生きるために、東南アジアの石油資源に頼らざるをえず、南方進出も止む得ない処置だった。p94
○日本の真珠湾攻撃の成功は、世界中を感動させこそすれ、悲しんだり、困ったりした国は一つもない。P98
○日本はロシアの植民地になりかけていた満州を助けた。そこへ清朝から皇帝が帰ってきた。それを日本が助けた。P112
○ドイツは国家として何の謝罪もしていない。日本が行ったような戦時賠償も、どの国にも払っていない。P122
○韓国は日本とはまったく異質の文化圏で、この恨の国と日本とは、永久に親交できることはない。P144
○戦後韓国がアジアの中で、日本に次ぐ経済発展を遂げられたのも、すべて日本のお陰であることを忘れている。P150
○「創氏改名」はしたから進んで願い出たものだ。日清、日露戦争に勝った国の氏名なら大手を振ってシナ大陸にも、日本内地にも移住できるからだ。P156
(引用部分には内容が分かる範囲で省略等があります)

こうした決め付けを根拠にして、日本の偉業をたたえ、天皇制を礼賛することになる。これではとても歴史研究の書とは言えない。この本を読んで、歴史を学ぶとは到底出来ないことがわかると思う。田母神氏の懸賞論文を読んでも、同じことが言える。全体が二次的な伝聞にもとづいて論理構成がされている。自分の論理補強に都合のよい形での引用が、目立つ。アメリカの侵略戦争である。とする側面は当然ある。欧米の帝国主義の暴虐は、世界史上許されないものである。例え、罠にはまって、日本が満州に進出したり、真珠湾攻撃をしたり、したと言うなら、日本は何とも、主体性のない情けない国ではなかったのか。負ける戦争にだまされて引きこまれるような愚かな日本人であったと言う結論になる。それが、「負けるが勝ち」と言うような屁理屈を持ち出し、世界平和は日本が作り出したという、不思議な結論になっている。そこには、脱軍備、脱武器輸出、を日下公人氏からの引用しマオタイさんの「もったいない」まで動員して、日本人の優秀性を主張している。何とも不可思議な本であった。個人的悲憤慷慨本を読んで、歴史を学んだ気に成っている人がいる。残念だ。ではどんな本から学べば、と言うなら、2冊ある。「戦争責任・戦後責任」朝日選書506、「ガンディーの生涯上下」レグルス文庫
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5 コメント

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ありがとうございます (本町じい)
2008-11-10 20:29:27
 お忙しい中、いろいろご教示いただいて、嬉しく思います。この本は、笹村様のご意見と正反対の内容のものを紹介させていただきましたので、どのようなご感想いただけるかと思っていました。ご丁寧にありがとうございます。
 恐縮ですが、いくつか質問させてください。
 笹村様は、「研究材料は2次資料ではなく、原本に当たったものであることが、重要である。」とおっしゃいつつ、「おかしな論理展開を文面で指摘してゆく。」と9点の事柄を示していただきましたが、これらについて「おかしな論拠」とおっしゃる根拠を「原本」をお示しいただいて、もう少しご説明いただけませんでしょうか。
 そもそも歴史上の論争となっている事件に「原本」があるのでしょうか?ないから論争になっていると思うのですが。
 また、その当時、戦争に引き込まれずに日本はどのように対応したら良かったとおっしゃるのでしょうか?以前、笹村様は、明治政府の外交が悪かったから、その時点ではどうしようもない、というようにおっしゃっていたように思うのですが、もう一度お願いします。
 ご紹介いただいた本は、早速読んで勉強します。
返信する
原本 (笹村 出)
2008-11-11 06:15:26
清水氏の著書を近現代史の推薦書のつもりで読みました。この本には研究者としての基本姿勢がない。こう言っているのです。

麦がかつて生産性が低かったことを持ち出し、米の優秀性を自慢し、日本人の勤勉さ、優秀性と繋げる。
たしかにそうした傾向はありました。しかし、麦の方が、生産性が高くなった現在、又日本農業の生産性が低い現在。そんなことは忘れたように、農業を知っている者はこうした発言はしません。

ヨーロッパの小麦農業はヨーロッパに適合して展開されてきていて、決して、幼稚な物ではありません。白人狩猟民族説はおかしいと考えます。どの民族も歴史的段階において、様々な生活形態をとっています。日本人も狩猟採種に暮した時代があったはずです。正直その資料を今捜している余裕がありません。

「麦の生産性の低さが、白人の野蛮性に繋がる。」
こんなひどいでたらめ論理に、反論の原典など探しようもありません。もし、そうした暴言とも言える極端な結論に至るなら、その道筋の説明に説得力が必要です。これは差別理論です。

暮らしが大変だからと言って、人間野蛮になるとは限らないことは誰でも知っています。

清水氏の著書を近現代史として、推薦する以上、学問研究書としての、深さを期待するのは当然です。

私のようにブログで感想を述べている者に、根拠の原本を示すような姿勢を求めてはいけません。

普通に暮す者が、生活感覚で、どんどん意見を主張してゆくことこそが大切だと考えています。
個人的感想こそ大切だと思っています。
誰しもが学問研究をしている訳ではありません。しかし誰もが生活者です。それを前提にして、承知して、読み意見を述べてゆく必要があります。

研究者とは立場が違います。生活者の意見表明の場を形成して行く大切さがあると思います。「地場・旬・自給」ブログの意味、価値を、そこに求めています。

その上で、それぞれの生活に根ざした感性で、肌感覚で考え、感想、意見を、公表してゆく。ここを大切にしたいというのが、私のブログだと思います。それが、これから時代に、より大切に成ると考えています。
その前提で読んでいただけるとありがたいです。
返信する
失礼します (本町じい)
2008-11-22 19:55:24
 笹村様の推薦の書を読みました。
 その前に、笹村様のおっしゃることには疑問を感じます。自分は生活者で研究者ではないから、根拠の原本を示す必要はないが、自分と意見が違う人はちゃんと根拠を示せ、とおっしゃっています。
 ところで、清水氏は、歴史の専門家ではなく、都市と交通の専門家で理学博士です。
 笹村様がご紹介された「戦争責任・戦後責任」という本においては、極東国際軍事裁判(東京裁判)を是とし、それを根拠として日本の戦争責任についての論理を展開しています。しかし、東京裁判は、裁判長はオーストラリア代表、その他の判事も戦勝国かその植民地だけで、日本の敵国であった連合国側の本国の意のままに、中立性のない人たちが裁いたものです。それも、裁判長であるウェッブは、ニューギニアにおける日本の行為について検事の役割をしていた人です。さらに裁判を始めるにあたって、ロンドン協定を締結し「平和に対する罪」や「人道に対する罪」、「共同謀議」罪をつくり、個人の刑事責任を追及しました。しかしこれは事後法で国際法上の根拠がまったくないものです。
 A級戦犯個々の犯罪についても、戦犯側が反論できる場面でも、他の戦犯の人に責任転嫁し貶めることになるからと沈黙したり、本来ならば立憲君主制の明治憲法下で、「陸海軍を統帥す」とされた天皇に責任を押し付けることも可能だったのに、それをしないで、A級戦犯の人たちは自らの命を差し出して天皇を守ったりしたため、必ずしも事実に基づいて判決を下されたわけではありません。
 昭和天皇を処刑しなかったことは、いかに恣意的な裁判だったかがわかるものです。東京裁判が裁判の名に値しないことは全世界の国際法学者の常識だそうですが、それを盲目的に是として論理を進めているこの本が、学ぶべき本なのでしょうか。この本の著者に笹村様のおっしゃる研究者としての基本姿勢をまったく感じません。

 しかし、この本には、ドイツの賠償問題も記載されていて参考になります。それによると、ユダヤ人には補償をしたが、外国に対してはしていない。そのユダヤ人も、属地主義をとり主に国内のユダヤ人を対象にするもので、さらにその補償はナチスの不法に対して支払うものでドイツ国家としての不法ではないと書いてあります(P180~)。したがって、ドイツは国家に対する賠償をしていません。笹村様の疑問のひとつは解決すると思いますがいかがでしょうか。

 笹村様は「暮らしが大変だからと言って、野蛮になるとは限らないとは誰でも知っています。」とおっしゃいますが、そうでしょうか。暮らしが大変になるとは、昔は、今も国によってはそうですが、それは餓死を意味します。人が餓死するところを日常見ていれば、家族を餓死させてはならないと、泥棒くらいするようになっても不思議ではありません。せっぱ詰まれば家族の命のためには私も泥棒くらいするでしょう。家族を座したまま餓死させるなど、逆に人のすることではありません。民族の移動は、気候変動や人口増加による食糧不足が理由と言われていますが、その過程で残虐なことも行われていたはずです。事実、民族移動ではありませんが、アメリカやオーストラリアでは先住民を百万人単位で虐殺しました。
 麦の生産性の話にしても、北欧の寒冷な石ころばかりのやせた土地のそれも農業技術の発達していない時代の話です。現在の久野の農業の話ではありません。

 この本の出版元の朝日新聞は、従軍慰安婦問題や靖国神社参拝問題などで韓国や中国がこれらの問題を外交問題とする前に、記事にしてあおった売国奴です。
例えば、靖国神社参拝問題では、昭和60年8月7日に報道ステーションのコメンテイターの加藤千洋記者が中曽根首相参拝批判記事を書き、同年8月27日に中国が初めて外交問題としました。
 朝日の出版したこの本こそ、日本人を洗脳しようとする偏向したプロパガンダ本だと思います。研究の書とは程遠いものです。
 長文失礼しました
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最初の一文 (笹村 出)
2008-11-24 06:30:31
最初の一文で、後は読む気にもなれません。
読んでおりません。
近現代史研究書として推薦できる。とされたのは、ご自身でしょう。今更専門家で無いなど言われたら、読んだことが馬鹿馬鹿しくなります。
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失礼しました。 (本町じい)
2008-11-24 11:28:37
9月7日のコメントを読み直してください。
いつ「研究書」と言う話が出てきたのでしょうか?

笹村様の推薦された本も、史実に忠実な研究書とはいえません。GHQの日本人洗脳のために行われた東京裁判を無批判に是としたものです。

それにしても、ご自分と意見の違うものには、耳を傾けようとなさらないのですね。
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