・3日5日6日と三度ポゴレリチを聴き、三度とも印象が違った。
とくに6日の福岡公演での壊れ方は、あまりにも恐ろしかった。
福岡だけを聴いた人の場合、東京でのリサイタルの感想を読んでも
「あんなヒドい演奏を褒める人も居るんだ」と呆れる可能性が高いが、
実は両者は、かなり別物だったことを私は主張したいと思う。
ちなみに私は6日がいわゆる「駄目な演奏」だったとは思っていない。
日常感覚では否定するほかない演奏だったとは思っているけれど。
・3日のホールAで、私は最前列のほぼ中央にいたのだが、
このような席を手に入れたのは、本当に「運」だけだった。
普通に抽選でアテたのだから。
チケットを初めて見たとき私は目がテンになった。
私はいつも、ある程度後ろから見ないと(聴かないと)
舞台がどうなっているか理解できないほうなので、
最前列は、これまで、むしろ避けたい場所だった。
しかし結果として、ポゴレリチのピアノを
あれだけ細大漏らさず直接に聞き取れたのは、良かった。
今考えても、3日と6日が同じ弾き手だったとは信じられない。
・5日と6日が同じ曲目・曲順のリサイタルでありながら、
かなり違う演奏内容だったことは、ご本人にも自覚があると思うのだが、
ポゴレリチ自身の評価は、どうなのだろう。とても興味がある。
福岡のほうがやりたいことをやれた、のだろうか?
それとも自分でも制御できないものがあって、ああなったのだろうか?
・6日の福岡のときは、曲が進むにつれて、どんどん観客が減り
会場からは、生きた人の気配が次第に消えていった。
あの暗い会場で、人の居なくなった後の座席が空洞のように、
あるいは墓碑のように、無言で増え続けていく様は怖かった。
そして残った人のほとんども、また、石のように動かなかった。
・一方で、一旦席を立っても、また戻ってくる人も中にはいた。
あの鬼気迫る演奏の最中にキジを撃ちに行っとっただけだった(爆)。
何曲目の後だったか、前方席までひとりの観客が歩いて戻ろうとしていて、
ポゴレリチは手を止め、その人が席に座り終わるまで、
舞台から無遠慮にじっと見つめていた。
『はっ、はやくっっっ!どこでもいいから座って下さい~~っ!!!』
と、こちらは血の気が引くような思いだった。
・3日には友人O氏が、5日にはS嬢が、チケットを家に忘れてきた(爆)。
KAJIMOTOの場合、その旨を受付で申し出ると、座席番号や予約番号、
予約時の氏名や電話番号などの情報のうち、判明しているものを手がかりに
購入履歴を検索してくれて、調べがついた段階で仮券が発行される、
ということがわかった。御陰で二人とも買い直すことなく入場できた。
ただし該当の席に、もし実券を持参した別のお客さんが来た場合には、
その人のほうが優先される、とも説明された。
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