転妻よしこ の 道楽日記
舞台パフォーマンス全般をこよなく愛する道楽者の記録です。
ブログ開始時は「転妻」でしたが現在は広島に定住しています。
 



宝塚大劇場花組公演『ファントム』本日13時公演を観てきた。

宝塚の『ファントム』は2004年に宙組の和央ようかが主演したものが初演で、
私はそれを大劇場まで観に行き(2004年5月20日)、
更に東京公演も、和央の会のお茶会に合わせて観に行った(2004年8月7日)。
私が心密かに「宝塚一のマザコン役者」と断じていた和央ようかに、
これほどぴたりと似合う役もほかになかった。
ファントムの幼児性、クリスティーヌとの異性愛とは思われぬ不思議な心の交流、
母親への敬愛、父親への屈折した思慕、などは、
私はたかこさんの表現したものが非常に好きだった。

そういう意味では、今回のファントムらんとむ(蘭寿とむ)くんには、
私はもう少し距離をおいて観ることが出来た。
らんとむくん自身、たかこさんのようにマザコン全開で演じてはいなかったし、
私から見れば、幾分硬く、熱さも激しさも、ほどほどなファントムだった。
そのぶん、穏やかに悲劇的で、彼の孤独は静かに私の心に染みた。
ちなみに私は2006年に花組の春野寿美礼が演じたファントムは観ていない。
今回の花組公演で、初演の宙組とは演出の違うところがいくつか目に付いたが、
それは2006年再演時に改定されたものなのか、それともらんとむくんのために
新たに書き換えられた部分なのかは、私には判然としなかった。

らんとむくんのファントムは、実年齢は大人でも心は少年のままで、
しかも本質的にはかなり素直な人だということが感じられた。
多分、そのまっすぐな愛らしさが、彼女のファントムの魅力なのだと思う。
そしてクリスティーヌ(蘭乃はな)との声の相性がとても良いことに感心させられた。
めいめいの歌唱も勿論悪くはないが、それ以上に二人揃ったときのパワーは圧倒的だった。
初めてふたりの声が合わせられる『Home』の場面など絶妙だったし、
クリスティーヌがビストロで歌うところも、ファントムの声が重なると、
彼女の内に力がみなぎるのが、ふたりの声が響き合うことでズバリと表現されていて、
これはコンビとしてなかなか得難いことなのではないかと思った。

ジェラルド・キャリエールは、いっぽ(壮一帆)くんだったが、
これがまた、年齢が的確に表現されていて、素晴らしかった。
私は全くオペラグラスを持たずに一階20列で観ていたのだが、
いっぽくんの立ち姿からも、声からも、キャリエールの年齢がよくわかり、
ファントムとの距離感も過不足無かった。
今回のいっぽくんのは、二枚目でありながら適度に年配に作っていて、
その加減が正確だったと感じた。
歌も、悪くなかった。
安定感を欠くところもあったが、ちゃんと踏みとどまって(笑)
芝居歌としては申し分なく聴かせてくれたと思う。

初演の宙を観た当時のファンとしては、演出の変更点のうちでは、
『おまえに選択権をやろう』とカルロッタを襲うファントムの衣装が改善されたこと
(たかこさんのは、巨大なピエロみたいな赤いもこもこで意味不明だった)、
そして、ファントムの素顔を知ったクリスティーヌが恐怖で逃げ出してしまったあと、
一人になったファントムが歌う場面の背景画が、これまた美しく改善されたこと
(宙のときは、デッサンのおかしい少女漫画みたいな母子像で、笑えて仕方なく、
私はなるべく背景を見ないようにしてたかこさんの歌だけ聴いていたものだった)、
の二点が、特に気に入った。

総じて、久しぶりに生で見た宝塚版『ファントム』は、やはり良かった。
演出も綺麗だし、女性ばかりで演じる『ファントム』として、
これは良く出来た舞台だと改めて思った(ツッコミどころは多いが・殴、それでも)。

もっと書きたいことはいろいろあるのだが、今夜は時間がないので、とり急ぎ。

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