海外旅行からの「持ち帰り麻疹」が各地で報道されている。
感染予防の決定版は、ワクチン接種だ。
日本では、麻疹ワクチンは1966年から任意接種として導入され、
1978年10月以降は定期接種となった。
以下の統計にもある通り、
特に1979年以後、麻疹での死亡数が激減している。
<資料>麻疹が死因として報告された死亡数、1950~1999(昭和25~平成11)年
(厚労省 人口動態統計)
ワクチンによる集団免疫は、接種率が95%を切ると厳しくなってくる。
コロナ禍で外出自粛が続いた間に、乳幼児全般、ワクチン接種率が落ちたし、
また1歳以降の定期接種が2回実施されるようになったのは2000年以降であり、
幼少時に定期接種1回のみだった世代のフォローアップは万全とまでは言えず、
こうした「麻疹ワクチン2回接種」を完了できていない層から、
感染が拡大して行く可能性が高まっている。
もっと以前、1966年より前に生まれた世代は、ワクチンがなかったので、
全くの未接種である割合が高いが、この時代は麻疹に皆が罹り、
その中で死なず、後遺症もなかった者が成人して現在に至っているので、
およそ50代より上は、既感染者が大半だろう。
私もこのグループに属する。
小学校2年生だったので、どれほどキツい病気だったか覚えている。
罹患した者は終生免疫が得られることになっており、
実際、寝ついた私の看病を3週間つきっきりで続けた母と祖父母は、
当時、誰ひとり全く発病しなかった。
ただ、麻疹ワクチンが普及して市中の麻疹患者が激減してからは、
抗体を獲得している者が新たなウイルスに触れるブーストの機会が
昔に較べてかなり減っていると思われるので、
鉄壁の終生免疫が維持されているのかどうかについては、
私は昨今、懐疑的である(汗)。
麻疹既感染者やワクチン2回完了した者も、時に麻疹に感染することがあり、
免疫不全でなければ、修飾麻疹といって明らかに軽い状態で経過する。
ゆえに今回の流行も、一定年齢以上の者や、ワクチン接種済みの人から、
新たな感染者が今後出る可能性も無くはないが、主な問題は彼らではなく、
こうした人たちから感染させられるワクチン未接種者のほうになる。
修飾麻疹は感染力も弱めと言われてはいるが、数値的なことは判然としていない。
ワクチン接種年齢に達していない1歳未満の子供が最も危険なので
罹患歴や接種歴がはっきりしていない周囲の学童や大人は、
可能な限り、この機会に麻疹ワクチンを接種するべきだろう。
しかしこれがまた、需要が急激に高まると、定期接種用のワクチンまでも
枯渇する可能性があるので、定期接種外で用心のため自費で打つ場合は、
渡航ワクチンを扱っているクリニックで輸入ワクチンを選択するのが最善だ。
ワクチンなどという不自然なものは要らない・罹って免疫を得るのが正しい、
という意見に私は与しないが、
罹患して寝込むほうを選択するのも各自の勝手なので、
傍からどうこう言えるものではないし、私が看病するのでもない。
身近に麻疹患者が出ることで免疫ブーストが得られれば、
ワクチン接種者や既感染者にとっては利益が無いこともない。
しかし麻疹ほど感染力が強く、重症化しやすく、後遺症も深刻なものは、
仮に「私や家族は予防接種してあるから大丈夫」であっても、
あちこちで好きに罹る人が増えれば、乳幼児の死者も出かねないし、
社会全体の公衆衛生という観点からはマイナスが大きくなる。
マスク着用は、ユニバーサルマスクというレベルまで行けば意味もあるが、
麻疹ウイルスがばらまかれると、乾燥した状態で空気中を漂うので、
感染者側がノーマスクで、罹りたくない人だけが不織布マスクをつけている、
という程度では、大きな効果は期待できない。
麻疹ウイルスは同じ部屋にいた者には確実に感染するが、
空気中では2時間で失活するので、徹底的な換気は一定の効果が見込める。
最近は、若い医師は麻疹患者を診察したことのない人が多いし、
発疹より先に現れるコプリック斑など見逃すケースがある。
また、そもそも麻疹の最初期は、症状だけではほかの感染症との区別はできない。
市中感染のフェーズになったら、どこにでも麻疹ウイルスは居ると覚悟すべきだ。
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