
何かの拍子に興味を持つと、少なくとも一定期間、
かなり執拗に追求するのが、私のいつもの傾向なのだが、
今は、それの対象が『カラマーゾフの兄弟』だ。
先日一度読み終えたのだが、なんとも未消化の部分が多くて、
決着がわかったところで最初からもう一度読んでみようと、
週末から、二度目の通読に突入している。
さすがに、どの登場人物についても前提がわかっているので、
今度は、初登場のときから行動や言葉の裏まで想像できて、大変に面白い。
作者が小出しにしている様々な情報や、意味のある小さな描写を、
初読のときに、見逃さずに把握し記憶しておくくらいの読解力があれば、
結末を追う楽しさと併せて、作品の細部までを楽しむことが出来ただろうが、
残念ながら、私は実にあちこち、取りこぼしをしながら読んでいたようで、
今回、ようやく、話の奥深さが少しだけ感じ取れるところまで来た。
三度目を読むともっといろいろわかるのではないだろうか。
なんとも折良く、年末には宝塚歌劇雪組『カラマーゾフの兄弟』もあり、
道楽の神様が「カラマーゾフを追求する好機だ」と仰せになっているようだ。
それで私は、amazonでDVD『カラマーゾフの兄弟』も買った。
三枚組で、高かったが、8月後半以降、私的な心配事が多くて弱ったので、
この際、これくらいのゼータクは許されても良かろうと、思い切った。
DVDになっているのは、1968年ソ連制作の映画なのだが、
なんと、映画でもやはり主人公はドミートリーだった。
少なくとも表層的なストーリー展開においては、
感情面でも行動面でも、最も動きのある人物がドミートリーなので、
彼を中心に描くのが、観客に対して、一番親切な手法だということなのだろう。
ただ、私は全く、特定の登場人物に対する思い入れはしていない。
ドミートリーが印象に残る存在だということは再三、書いたが、
彼に感情移入して愛しくてたまらない、という読み方はしていない。
むしろ、どの登場人物もそれぞれ際だっていることが面白いし、
誰が誰に対して、どの時点で、どういう思いを抱いていたか、
それによってどう行動したか、それはどこへ・誰へ波及したか、
という、幾重にも丹念に織られた多層構造の世界が、私にとっては、
ほかでは出会ったことのないものとして魅力があるのだ。
ひとつだけ、自分をホめたいと思ったのは、
私が原作を一度読んで思い描いていた人物像が、
DVDのキャストのイメージと、ほとんどズレがなかったことだ。
ドストエフスキーの筆力、亀山先生の訳の的確さあってのことだが、
それを読み取ることに失敗していなかったらしいことがわかって、
我ながらとても嬉しかった。
DVDは長いので、まだ一枚目しか観ていない。これからが楽しみだ。
小説と違い、出来事が簡潔に、時間軸に沿って並べられていて、
しかも映像の御陰で、愛称で呼ばれていても誰のことかわかるので
(「アレクセイ」と「リョーシカ」が同じ人だなんて、
字面だけでは到底信じられません・爆)
とてもわかりやすくて、面白い。
と同時に、描かれていないエピソードも、原作を読んで知っているので、
映像を見ながら、いろいろと背後の事柄に思いを馳せることも出来て、
読んだあとで観るという順序は、私にとっては良かったと思っている。
Trackback ( 0 )
|