転妻よしこ の 道楽日記
舞台パフォーマンス全般をこよなく愛する道楽者の記録です。
ブログ開始時は「転妻」でしたが現在は広島に定住しています。
 



(資料のアウトラインだけ置いておくので、できたらいつか誰か
補足取材をして、ポゴ氏本人にもアイディアの変遷やその契機について
聞いてくれたらいいな~~~、的な(^_^;)

・1981年9月5~7日、ポゴレリチ22歳当時、
シューマン:交響的練習曲作品13をミュンヘン、ヘルクレスザールにて録音。
日本での発売は1983年7月。

・1981年11月25日~、来日公演Aプロの一曲目として交響的練習曲作品13を演奏

・この時期の演奏は、全体の構成としてはシューマンの初版に倣いつつ、
楽譜は主として第2版を用い、第2版に無い第3変奏と第9変奏、
及び第1変奏も初版を使っている。つまり、主題+12の変奏。
また、私自身は譜面をきちんと追って弾いた・聴いたことがないので定かでないが、
この最初の形式では、各変奏曲内での反復は施していないと思われる。
80年代初頭は、ポゴレリチが全体的にタイトで切れ味の良い演奏を選択していたようで、
同時期の録音であるショパンのソナタ2番においても、
90年代に見られるような反復は一切行われておらず、
当時は「演奏時間が長い」ことがポゴレリチの特徴であるという前提は
誰にも・どこにも、無かった(^_^;。

・1983年6月2日3日、来日公演Cプロの一曲目として交響的練習曲作品13を演奏。
遺作変奏は無し。
当初、アリス・ケゼラーゼとのジョイントリサイタルの予定であったものが、
ケゼラーゼが病気で来日を取りやめたため、
急遽、ポゴレリチのソロ・リサイタルに変更されたもの。
83年来日公演時の、彼の本来のソロ・リサイタルの曲目には
交響的練習曲は入っていなかった。

・1984年出版のReflections from the Keyboard(David Dubal)の中で、
I'm not going to play the Schumann Symphonic Etudes any longer,
although I've recorded it, and it was one of my best stage works.
I just don't have anything to say about it anymore. It's dry for me.
Maybe I'll come back to it in some years.
と発言。

・1994年12月4日東京でBプロの後半として交響的練習曲作品13を演奏、
来日公演としてはこのとき「遺作変奏付き」初出し。
ただし、来日前の曲目発表では、遺作変奏1~5は、
主題から変奏11まで弾いたあと、変奏12(=フィナーレ)の
直前に5曲とも挿入されることになっていた。
このあと演奏順序が変更されることになり、実際のリサイタルでは、
主題のあと遺作変奏1~5、それから第1変奏から終曲まで、
(つまり2024年1月来日公演のかたち)となった。
来日公演プログラム冊子の中に変奏順の変更に関する紙片が挟まれており、
ポゴレリチからの意思表示は演奏会の直前であったと思われる。

・1995年11月13日の三鷹公演において(私自身は行っていない。友人からの伝聞)、
再三のプログラム変更ののち、最終的に演奏会の当日、
しかも前半まで終わって休憩のあとのアナウンスにより、
突然、プログラム後半として、交響的練習曲が演奏されると発表された
(直前までの予定ではラヴェル『高雅で感傷的なワルツ』とショパンのソナタ2番)。
このとき遺作変奏があったか、あったとしたらどの位置であったかは資料なく不明。
なお、この三鷹のプログラム変更の理由は、「体調が大変悪いため」。
コンディション不良のとき弾く曲として唐突に交響的練習曲が出て来る、
というあたり、83年に続き、この曲が彼の急場を救う一曲となった訳で、
確かに"one of my best stage works"(Dubal 1984)であったと思われる。

・2018年12月1~8日の来日公演において、
交響的練習曲「遺作変奏付き」がプログラム後半として演奏された。
このときの曲順は、遺作変奏1~5から開始し、そのあと主題と12の変奏。

・2024年1月20~27日(予定)の来日公演において、
交響的練習曲「遺作変奏付き」がプログラム前半2曲目として演奏された。
曲順は、主題のあと遺作変奏1~5、そのあと12の変奏、
つまり94年の来日公演時のアイディアに戻ったかたち。
2018年以後に、何か考えがあった・考えが変わった等の事情があり、
それゆえにこそ今回改めてこの曲を取り上げ、
この順序・このプログラムで演奏したのだろうと思われる。

また、私の記憶では、少なくとも2018年以降は12の変奏の箇所にも
それぞれ適宜反復が施されて、全体に長大になったという印象。
少なくとも、聴いていて「ここにリピートがあったのか」と
意識した箇所がいくつかあった。
しかしこれについてはCD等この時期の記録となる音源がないので、
今となっては詳細な検証は不可能。
現在の彼の使用楽譜のエディションなども興味深いものがあるので、
いつかどなたか盗み見て、…じゃない、取材してくださったら嬉しいです(逃)。


以上、ポゴ・ヲタとしては、この話だけでリサーチ・ペーパー1本書けそう(^_^;。

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