goo blog サービス終了のお知らせ 
転妻よしこ の 道楽日記
舞台パフォーマンス全般をこよなく愛する道楽者の記録です。
ブログ開始時は「転妻」でしたが現在は広島に定住しています。
 



通し狂言 しらぬい譚:1月3日(火)~27日(金)国立劇場
第十九回伝統歌舞伎保存会研修発表会+お楽しみ大喜利:1月22日(日)国立劇場
二月大歌舞伎猿若祭:2月2日(木)~26日(日)歌舞伎座
六本木歌舞伎:2月4日(土)~20日(月)EXシアター六本木
二月花形歌舞伎:2月1日(水)~25日(土)大阪松竹座
広島交響楽団第367回定期演奏会ケマル・ゲキチ:2月26日(日)広島文化学園HBGホール
文楽広島公演(PDF):3月4日(土)JMSアステールプラザ
三月大歌舞伎:3月3日(金)~27日(月)歌舞伎座
アンドラーシュ・シフ ピアノ・リサイタル:3月23日(木)東京オペラシティ
宝塚歌劇星組THE SCARLET PIMPERNEL:3月10日(金)~4月17日(月)

この中で、やはり最大イベントがあるのは3月か(笑)。
3月23日は娘の大学卒業式で、実は最初あまり行く気がなかったのだが(殴)
同日夜にシフが東京で弾くと知って、私は俄然、やる気になった。
前日に東京に行き、まず歌舞伎座の夜の部を観て、
23日の朝は娘の袴姿を大学で撮影し、すぐ歌舞伎座に行って昼の部を観て、
夜は東京オペラシティに行こう、と私は予定を立て、チケットとホテルを手配した。
職場には、「娘の卒業式なんです~(^^)」と言って、
22日と23日には私の仕事を入れないようにと、前もって頼んでおかなくては。
できれば24日の仕事も、夕方くらいからにして貰えれば助かるな。
……こうなったら、娘には絶対に卒業して貰わないと困る(爆)。

その後は、4月のこんぴら歌舞伎をどうするか検討中であるのと、
あとは、五月大歌舞伎團菊祭が上半期の最大眼目になるだろうと予想している。
なにしろ今年の團菊祭では、彦三郎一家の三代襲名があるし、
しのぶちゃんの長男マホロン(眞秀くん)の初お目見得もあるのだ。
上の記事内容により、『魚屋宗五郎』でマホロンが丁稚役をやることがわかったが、
さて宗五郎は菊五郎が務めるのだろうか、それともいよいよ菊之助が歌舞伎座で……?
彦三郎一家のお披露目がどうなるか、特に倅マン(侑汰くん)は何を演じるのだろうか。
更に、團菊祭なのだからもうひとつの柱は成田屋なわけで、海老蔵が何を出すかも注目だ。
また、みちこ(北翔海莉)さんの舞台『THE PAJAMA GMAE』も既に決まっているので、
9~10月の日本青年館または10月シアタードラマシティのどちらかでは必ず観たいと思っている。
私はこの作品自体は知らないが、ドリス・デイが主演したものなら、
歌を聴かせられるみちこさんには、きっと似合うことだろう。

**************

そういえば今年から、ラ・フォル・ジュルネ金沢が中止になり
かわりに地元金沢独自の、風と緑の楽都音楽祭2017が開催されることになった。
目玉は、ベートーヴェンの交響曲・ピアノ協奏曲・ピアノソナタの全曲演奏となっており、
私自身は、こういうコンプリート系の企画についてはどうも通常、
「揃える」ことに力点が置かれ、一曲一曲の完成度には濃淡が生じる、
という気がして積極的には聴かないのだが、
一方で、私はベートーヴェンには好きな曲が結構多いのと、
予定されている演奏者には贔屓のピアニストも入っているのとで、
今回のはそれなりに心惹かれる部分もある。
チケット発売は2月だし、連休をこれに費やすかどうかの決定は、
とりあえず今のところ保留している。

「風と緑の楽都音楽祭」 ラ・フォル・ジュルネ→独自開催(中日新聞2017年1月13日)
『ラ・フォル・ジュルネは音楽事務所「KAJIMOTO」(東京)が東京、金沢など四都市で企画してきたが、金沢については地元音楽家や邦楽などを加えた独自の企画も盛り込んでいた実行委と意見の食い違いが毎年続き、昨年十二月にKAJIMOTO側が撤退を表明。今年から金沢では独自開催することになっていた。』『前田(利祐)会長は「一年目なのでメンツにかけても成功させなくてはならない」と強調。音楽祭でチーフアドバイザーを務める作曲家池辺晋一郎さんは「ラ・フォル・ジュルネがなくなっても、オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)によって音楽が根付いていることをより強く発信する機会になる」と述べた。』『「ベートーベンがやってきた!」をテーマに、OEKやベルリン・カンマーシンフォニー(ドイツ)など内外のオーケストラ、指揮者、ソリストらが出演。ベートーベンの交響曲、ピアノ協奏曲、ピアノ・ソナタを全曲演奏する。「第九」では合唱団を北陸三県から募る。』

Trackback ( 0 )




国立劇場に行ってきた。
ポゴレリチを聴きに東京に来たから
せっかくだしと思って観劇の予定を入れたのだが
偶然にも討ち入りの当日に討ち入りの段を観ることになった。
梅玉、幸四郎、魁春、笑也、児太郎、
…いろいろ感じ入ったが、それにもまして、
今月もまた、あらしちゃん(松緑)@小林平八郎にシビれた。
いや~、格好良かったわぁ……。

詳細は、多分、帰宅後に。

Trackback ( 0 )




雪の舞う国立劇場。午前11時開演。
三ヶ月通して上演される仮名手本忠臣蔵の、二ヶ月目。

堪能いたしました。
音羽屋の旦那(菊五郎)さん圧巻、
後半、勘平の台詞は極めて少なく、言葉によらない演技だけで
あれほど激しいドラマを見せていたのだと、私は見終わって改めて畏れ入った。
型の美しさは当然のことだったが、それを超えたところに
今回の菊五郎の目覚ましさがあった。
そして大播磨(吉右衛門)にもただただ感服!
仇討ちという肚(はら)を持ちながらも、それを皆に悟らせない、色気や大きさ。
周囲の懸命の訴えや、周辺で刻々と進行する事件を
吉右衛門の由良之助は、これまた台詞も動きも抑えたままで、
見ていない・聞いていないかのように装いながら、
実はすべて詳細に把握し続け、最後に時を見極め、決断を下した、
……というのが、大変よくわかった。
これぞ、主役!!

あらしちゃん(松緑)の定九郎がまた、キレッキレ!だった。
暗闇から最初に登場する定九郎の白い手、
与市兵衛を殺して奪った財布を口に咥え、
血に汚れた刀を着物の裾で拭き、足を踏み出したかたちの見得、
財布の中身を手探りであらため、たった一言の台詞「…五十両」。
……と、花道から舞台上手へと猪が駆け抜け、
その刹那、猟師の火縄銃の音が響き渡り、
目を見開いた定九郎の口元からは真っ赤な血が零れ零れて、
白塗りの太股に音もなく落ちる……!
たったこれだけなのだが、まさに息詰まるほどの10分間で、
今のあらしちゃんの、極限までの様式美を見せて貰ったと思った。

更に、今回のあらしちゃんのお蔭で、
私は初めて定九郎がどういう役なのかがわかった。
以前は、「悪の華」としてのビジュアルが定九郎の見どころだとしか
私は思っていなかったのだが、この芝居において大切なのは、
むしろ定九郎が「誰なのか」という部分なのだった。
すなわち、定九郎は塩冶家の浪人でありながら敵方に通じる裏切り者であり、
勘平の舅・与市兵衛を殺害した仇でもあったわけで、
偶然とは言え、この男を撃った勘平は、
二重三重に忠孝を尽くしたことになったのだ。

定九郎が、ただの色悪としてのチンピラでなく、
深い意味を持つ役としての印象を、残していればいるほど、
彼の命を絶ち五十両を奪い返すことになった勘平の行動もまた、
その価値を発揮するのだと、私はようやく理解できた。
だからこそ、功成り名遂げた武士となるはずであった勘平が、
志半ばで腹切をすることになった切なさと
命の際に連判状に血判を押すことのできた晴れがましさも、際立つのだ。
そして、由良之助が最後に、勘平の血糊の残る形見の刀で丸太夫を斬って、
手柄を立てさせてやる場面も、
定九郎の登場から始まる道筋が鮮やかであれば尚更、
結末としての手応えを増すのだ。

ともあれ、今回の五段目六段目七段目、私にとっての決定版になったと思う。
観ることができて本当に良かった!
おそらく、これが今年の私の観劇の中ではベスト1となるだろう。



Trackback ( 0 )




今夜は これ。
あらし(松緑)ちゃんが藤間流家元として宗家と共演する。
二日間で三公演行われる藤間会舞踊公演の、初日。


後日記(9月28日):午後3時開演で、終演が夜9時45分だった(爆)。
普通の歌舞伎公演と違って事前に終演予定などがサイトに出ていなかったため、
上演時間の詳細は開演してから知った。
こんなに長いとは予想だにしていなかった(汗)。
3時から始まるのだから、夜7時過ぎには終わると思っていたのだ。
甘かったorz

(↓クリックすると大きめの画像が出ます)



……実は私、藤間会を途中で脱けて、サントリーホールにも行ってきました(殴)。

そもそもは、前述の通り見通しが甘かったので、
藤間会が終わってからサントリーホールに向かえば、
一曲目のショスタコーヴィチ『黄金時代』が終わったあたりで入れるのでは、
と思っていたのだ。
しかし藤間会の上演時間を確認したら、それは全く不可能だとわかったので、
『春駒』まで終わったところで、一旦、歌舞伎座を出ることにした。
地下鉄を乗り継ぎ、サントリーホールの読響定期の開演に滑り込みで間に合い、
ポストニコーワのピアノ目当てで、プログラム前半だけ聴くつもりで入った。
するとこれがまた、オケも含めて予想を遙かに超える素晴らしい演奏会で、
私はかつてなくショスタコーヴィチの音楽に感銘を受けてしまい、
えらいこっちゃ、いっそ後半もこのまま聴こうかと、激しく迷ったのだが、
やはり、藤間宗家の舞踊に猿之助や勘九郎・七之助、亀三郎・亀寿、
梅枝に右近、最後は吉右衛門まで出るという、藤間会の魅力が勝(まさ)った。
それで溜池山王から東銀座まで、タクシーで戻った。なんという道楽!

真剣に体ふたつ欲しいと願った一夜だった。

Trackback ( 0 )




昨日は これを昼夜通しで観た。
素晴らし過ぎた(T_T)。
昼夜、どちらもハズレ演目がひとつもなかったどころか、
あちらもこちらも見どころ満載で、
あまりにも見応え・手応えが大きかった。
地元だったら通っていたのではなかろうか。


詳細はまた後ほど。

Trackback ( 0 )




(写真は、さくらぴあ大ホールの所作台とミニ花道(笑))

昨日は、あらしちゃん(松緑)が広島に来たので、観に行った。
あらしちゃんの鳴神、対するは梅枝による雲の絶間姫、
亀寿の白雲坊に、萬太郎の黒雲坊。

いつも思うのだが、松緑の芸風には覇気があり、正の力が漲っている。
ご本人の頭の中は、……ブログ等を読んで私が観察した範囲では、
むしろ鬱屈したものが絶えず渦巻いている感じなのだが(逃!)、
舞台の上にいる松緑は、強い力を放射するような存在感を持っている。
昨日の鳴神は、「松緑の『正』の三段活用」だった。
初めは三千世界の龍神を法力で封じ込めていた高僧・鳴神上人が、
美しい絶間姫を迎え入れてしまい、抗しきれず破戒、
最後は欺かれて怒りが爆発し、文字通り「怒髪、天を衝」いて、幕。

まず序盤、高僧としての鳴神上人は清らかに美しかった。
ファンとしての私の欲目もあるのかもしれないが、
舞台上手の岩屋にいるところでは、あまりに鳴神が高潔な空気を醸し出しているので、
私は幾度も、穴の空くほどあらしちゃんを見つめたくらいだ(爆)。
義経のときも思ったが、静の松緑は実に洗練されて美しい。

ところが、絶間姫の色仕掛けに負けて鼻の下が伸びたあたりから、
同じ人とは思えないほど、鳴神が可愛らしくなったのだ。
とてつもない法力を持つ鳴神上人の素顔は、無垢な少年そのもので、
私好みのマザコン芸も垣間見え、物語半ばの鳴神は愛おしいばかり。
それでも一度は、「帝の命を受けた者であろう」と姫を疑って岩屋に駆け上がるので、
このときだけ美しい鳴神に戻るのだが、そのあと姫の涙にほだされてからは
もう再び、完全に愛すべきコミカル鳴神全開であった(笑)。

そして最後に、絶間姫に騙されたと知って憤怒の形相になる鳴神は、
これぞ歌舞伎の醍醐味、荒事の楽しさ全開!
松緑の父の初代辰之助の鳴神は、ここでの陰のエネルギーの放出が凄まじく、
隈取りが顔じゅう血だらけに見え、私は心底、
「こええええええーーー(T_T)!!!」
と思ったものだったが、
昨夜の松緑のはそれとは正反対と言っても良いくらいの、
破格の陽性パワーと、燃え上がるような勢いがあった。
これは私にとって、ある意味、大誤算だったのだが、素晴らしかった(爆)。
松緑の鳴神の怒りは、四尺玉・連発のような華やかさで、
私はただただそれに見とれた。
まさに『生きながら鳴る雷』、その雷鳴の痛快で心地よかったこと!
柱巻きの見得、立ち回りから幕切れの六方に至って、もうもう、完全燃焼。
いや~~、良かった!!!楽しかった!!!
あの鳴神なら、クワーっっ!!!!!と全力で走り出したことで
怨念が全部炎になり、火の玉と化して独りで天まで行ったかもしれない
(で、雲の絶間姫は結局、無事という(笑))。


今回の巡業プログラム冊子を見ると、松緑の談話として、
『祖父や父をご存じの方にはその匂いを感じて頂けるようなものにしたい』
という言葉が紹介されているのだが、こういうところにも、
私は今の松緑の充実ぶりが感じられるような気がした。
自分は祖父や父の足下にも及ばない・こんな自分が演じて申し訳ない、
というようなことを、松緑は以前よく日記に書いていたが、
そうした葛藤が、少しずつ良いかたちで昇華されつつあるのでは、
と思った。……だったら、いいな(^_^;。

****************

梅枝は、極めて美しいだろうというのは予想どおりだったのだが、
それ以上に、雲の絶間姫がどういう人間か、ということが
かなり鮮やかにこちらに伝わって来たのが素晴らしかった。
花道に登場したときの、あたりの空気がりんと透き通るような美しさは、
文字通り「姫」様の風情だったのだが、
今は亡き夫(恋人?)との馴れ初めを話して聞かせるところは、
うぶな鳴神など手玉に取ってしまう語り口で、
帝の命を受けた策略家であることがよく伝わって来た。
更に、鳴神上人を堕としたあと、去り際に手を合わせそっと詫びる姿には
彼女の真心が確かにあり、実に魅力的な女性なのだと改めて感じられた。
アンバランスな天才少年のまま大人になった鳴神には、
所詮、太刀打ちできぬ手練れ(^_^;、
しかし彼女には彼女の人生があり、健気な女でもある、
……という納得感が、私は大変気に入った。

Trackback ( 0 )




昨日は、さくらぴあで開催された、
葛西聖司アナによる『歌舞伎プレセミナー』を聞きに行った。
ちょうど一週間後の7月20日に同会場で公演のある、
『松竹大歌舞伎』公文協・中央コースの演目に関する講演で、
観劇予定の者にとってはぴったりの予習となる内容だった。
『鳴神』の大薩摩、『文売り』『三社祭』の清元について、
聴きどころがプリントになったものを配布され、
葛西アナの解説を聞き、私たちも一緒に声に出して読んだりしたので
(声を出したお蔭で、寝なかった・爆)、
普段は曖昧に聞き流しているようなところを
きちんと味わうことができて良かった。

私はこれで結構長く歌舞伎や文楽を観ているつもりなのだが、
常磐津と清元の違いが、実は、あまりわかっていない(汗)。
自分の中で、義太夫は「語り」だし、長唄は一応「唄」として捉えているが、
「常磐津」と「清元」は、筋書(=プログラム。西では『番附』)に
そうだと書いてあるから、……という理解しか、していない(殴)。
しかし今回、文字になったものを確認し、声に出して言ってみることで、
どういう場面がどのような調子で語られ(歌われ)ているかがわかり、
かつ、葛西アナのご指導においては、
「難しいところ・わからないところは、遠慮なくトバしていい」(笑)、
となっていたので、私のようなド素人にとって実に気楽で、
かつ、なかなか愉快で、勉強になった。

大薩摩(元来は江戸浄瑠璃の一派。現在は後継者なく長唄に吸収されている)
が良い具合に囃してくれていることもわかったので、
20日には、あらしちゃん(松緑)の鳴神が、梅枝演ずる雲の絶間姫に
騙されて貞操を奪われ(爆爆)、挙げ句、柱に巻き付いて怒り狂う物語を、
言葉の面からも改めて味わいたいと思ったワタクシだった。

……男が、いいトシまで清らかに過ごした結果、超人的な力を持つに至り、
それがあるとき、女の色仕掛けに負けて凡人に成り下がる、というのは、
インドの『一角仙人』伝説が起源、というか元ネタなのだね(^_^;。


嚴島神社 世界遺産登録20周年記念事業
平成28年度 松竹大歌舞伎
(さくらぴあ)
7月20日(水)昼 12時30分開演(12時開場)・夜 17時開演(16時30分開場)
上演予定時間 3時間05分 @さくらぴあ大ホール
(S席6,500円、A席4,500円、B席3,000円、幕見席1,000円(当日のみ、B席より販売))

一、歌舞伎の見方  
二、歌舞伎十八番の内 鳴神 
三、文売り   三社祭

【主な出演者】
中村時蔵、尾上松緑、坂東亀寿、中村梅枝、中村萬太郎 他

Trackback ( 0 )




(菊五郎、仁左衛門、菊之助、松緑、
左團次、團蔵、友右衛門、孝太郎、権十郎、
歌六、錦之助、竹三郎、亀三郎、亀寿、
右近、米吉、……についても書きたいのだが、
今夜は時間切れ。嗚呼)

Trackback ( 0 )




昨日は博多座まで雀右衛門の襲名披露を観に行った。
ジャッキーの晴れ姿が観たかったのは勿論だが、
花を添えるのが藤十郎・仁左衛門・菊五郎、
それに菊之助・松緑・亀三郎・亀寿も出演とあっては、
菊五郎劇団を応援する私としてはもう見逃せない面々だったのだ。
二度は来られないので、昨日一日で昼夜通しで観た(^_^;。

雀右衛門のお披露目としては、昼が『熊谷陣屋』、夜が『本朝廿四孝』、
だったのだが、私にとっては夜の八重垣姫のほうがたっぷりと観られた。
『陣屋』の相模の女らしさ、母親らしい気持ちの細やかさには好感が持てたし、
物語の進行に連れて、藤の方(菊之助)と立場が逆転してしまうところも
ごく自然に感情移入できて良かったと思ったのだが、
相模の印象を決定づけるほどの場面は、私にとっては、無かった。
澤瀉屋版のように最後に相模との夫婦の道行きで終わるのならともかくも、
通常の演出では、どうしても熊谷次郎直実の話になってしまうので、
女形の御披露として観るならば、やや物足りなかったと思った。
舞台中央で直実(仁左衛門)と義経(時蔵)の芝居が展開している間、
上手と下手で、用の無い(爆)藤の方と相模とが、
結構長い間、ただ客席に背を向けて待っているというのもなんだかな、と(汗)。

しかし、そのこととは別次元で、仁左衛門の直実は素晴らしかった。
台詞の迫力は言うに及ばず、一挙手一投足が美しいし、
最後に花道で膝を突いた姿勢などもう哀切を極めていて、
顔を全部かくした姿だというのに、ひとりの父親に還った直実の胸のうちを
体の線だけであれほど雄弁に表現できるとはと、つくづく畏れ入った。

夜の『本朝廿四孝』、……出ました、私の昼寝確率120%演目(逃!!)。
今回も、……はい、一睡もしなかったとは、言いません(逃×2!!)。
しかし、音羽屋の勝頼は、目覚ましかった!!
この出だしの場面、私は今回、菊五郎の姿と声の美しさにヤられて、
過去最高の集中力で聴き入った。こんな綺麗な台詞だったのか…!と。
そして八重垣姫は高貴で愛らしく、それでいて素直な強さがあり、
雀右衛門の「健やかさ」が最高に良いかたちで発揮されていたと思った。
八重垣姫はなよなよしていても変だし、我が儘に見えてもいけないので、
雀右衛門の「健康な恥じらい」方とそれに拮抗する自己主張の見える様が、
私は大変気に入った。
更に時蔵の濡衣、これがまた舞台下手に座っているだけで
匂い立つように美しく、溜息ものだった。
「臈長けた」、とはああいう姿のことを言うのだな……。

それにしても、いつも思うのだが『十種香』の場だけ観ると、
この芝居、後半がほとんど私の頭では理解できない。
長尾謙信(左團次)が出て来て文箱を勝頼(菊五郎)に渡し、
これを持って塩尻に行けと命じるのだが、
なんで!?誰に会いに!??と私は例によってここで道に迷った(殴)。
今回も、一応ちゃんと聞いていたつもりだったのだがやはりわからなかった。
勝頼は正体を隠していて、簑作という花作りの男に身をやつしているのだが、
謙信はそれを見抜いていて、彼が塩尻に発ったあと、
勝頼を討てと家来に命じる、……のだが、いつ彼の正体に気づいたのか、
なぜこの塩尻に行かせるタイミングで彼を始末することにしたのか、謎謎謎。
この家来というのが、昨夜は菊之助と松緑だったので、
私にとっては豪華なオヤツ(爆)みたいな嬉しさがあったけれども。
菊之助は若々しく松緑は猛々しく、…おいしゅうございました<(_ _)>。

私は結局、この芝居がわかっていないから寝るということなのか、
いや毎回必ず寝るから、いつまで経ってもこの芝居がわからないだけか。

Trackback ( 0 )




昨日今日の二日で、團菊祭を観て来た。

今回の私は、夜の部・松緑の『馬盥の光秀』に強い感銘を受けた。
あらしちゃんは圧巻だった。
要所要所で、あらしちゃんの光秀は、
私の想定していたものをその都度、上まわっていて、
観ているこちらは、「!」「!!」と緊張が高まった。
光秀としての深い声音も素晴らしかった。
その前の和尚吉三のときと全く違う声の出し方だった。
加えて、今のあらしちゃんは全身がキレっキレだった(笑)!
足の親指の先まで力が漲り、冴え渡っているような動き方で、
光秀の引っ込みのかたちが強烈だったことと言ったら、もうもう!!
……今回の團菊祭は結局、松緑の光秀を観に行ったのだ、
と私は今、思っている。

昼の部は、最後の『楼門五三桐』にヤられた。
私は、本当に音羽屋の旦那(菊五郎)さんの声が好きなんだと思い知った。
そこまでの四時間が全部吹っ飛ぶ、旦那さんの超絶美声にシビれた(爆)。
演しものとしては実に短い一幕なのだが、
鶴の一声ならぬ、菊の一言(爆爆)!!

Trackback ( 0 )



« 前ページ 次ページ »