世の中は、どんどんスマホに移行している。
電車の中でもホールの客席でも、スマホを使いこなす方々を
当たり前にたくさん見かけるようになったし、
携帯ショップでも最早スマホが主流で、ガラケーは激減している。
我が家でも、そろそろ替えどきか?という話が時々出るが、
ユーザーの感想などをネットで読む限りは、
ガラケーに慣れた者には、スマホのストレスは大きいようだし、
価格的にも、主人はまだ納得できないというので、
家族三人、未だにガラケーを愛用している。
私など特に、ほとんどメールのためにしか携帯を使っていないので、
スマホ移行の意義がなかなか見いだせないユーザーであるわけだが、
しかし携帯のメール機能を愛しているかというと、別にそうでもない。
誤変換に泣かされることはとても多いし、
語彙の少なさに辟易させられることも、よくある。
主人は、自分のガラケーの使いやすさを評価していて、
手放したくないと言うのだが、私はそのあたりについては曖昧だ。
私の現・携帯に関して、ひとつ感心しているのは、
全く単語登録などしていなくても、
『いまわのきよしろう』を一発で『忌野清志郎』と変換してくれることだ。
私が教えたのではなく、最初からそうだった。
また、『あんとにおいのき』も、ちゃんと『アントニオ猪木』と変換する。
『杏と匂いの木』などというタワケは、うちの携帯は言わない。
なかなか、私仕様の賢い携帯ではないか、と最初は思ったのだが、
しかし『ぽごれりち』と入れると、彼のことは全然知らないようで、
『ぽご礼理知』と勝手な変換をしてくれた。何人(なにじん)か!
別に奇跡の携帯だったわけではなかった。
また、こいつは(ほかの機種もだろうが)慣用句の類いには概して弱い。
例えば『かぜがふけばおけやがもうかる』を
『風が吹けば桶屋が儲かる』に一発変換することなど、
一太郎なら朝飯前だが、私の携帯だと、
『風が吹けばおけや蒲生刈る』と、後半が腰砕けだ。
『こうやのしろばかま(紺屋の白袴)』だと『荒野の白袴』になり、
ちょっと格好いいような気もするが、
『ちぎっては投げ ちぎっては投げ』と入れようとすると、
『ちぎって鼻毛 ちぎって鼻毛』になり、お下品だ。
こういう点は、やはりスマホにしてATOKを搭載したほうが、
変換に関するストレスが減って、快適になるのだろうと思う。
私にそれが使いこなせるかどうかは、また別の問題なのだが。
……という話を、今朝ほどしていたら、娘が言った。
「どんな誤変換も、わたしの携帯には、勝てんよ」。
聞けば、彼女の携帯に、『もってくる』と入力すると、
表示される変換候補が尋常でないのだった。
『もってくる』の『も』の字もなく、出るのはいきなり、
bring bringの
bringを bringに bringが bringは bringで bringと
bringも bringです bringから bringや bringなと
bringのん bringだ bringな bringへ bringとして
bringまで bringだけ bringという bringだった
bringでし bringより bringって bringとか bringか
bringについて bringなら bringによる bringばかり
bringじゃ bring等 bringでしょう bringなんて
bringがどんだけ活用・格変化しとるのか!
スクロールしてこれらを全部やり過ごして、ようやく、
『持ってくる 盛ってくる もってくる 漏ってくる』
というマトモな日本語が候補として表示される。
娘が変なことを学習させたのではないか、と私は疑ったが、
断じてそんなことは無いと言う。
ならば、この携帯に『もっていく』と入れたら、
さぞかし『take』の嵐になるだろう、
と私は期待したのだが、こちらは最初から、
『持っていく 盛っていく もっていく
漏っていく 保っていく 守っていく』
と出るだけで、極めてつまらなかった。
「こいつの『bring押し』だけは、手間でしようがない」
と娘は苦笑していたが、いやそれ、単純に、
壊れとるんと違うか。
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