「折り入って相談があるんだけど…」
さほど仲良しでもない知人、ミノリが言う。
車の運転中、時々オトコに追跡されることがあり
身の危険を感じると言う。
「ピッタリくっつかれて
家の近くまでずっと追いかけられるの。
すごく怖いのよ…」
相手はたいていトラックの運転手だと言う。
「交差点で、目が合うと必ずそうなるのよ」
なんで…?と問うてみたら
とうとう言いなすった。
「やっぱり…私がきれいだから…?」
そ…それだけは絶対に無い!
…声を大にして言いたいが、失礼なのでぐっと我慢。
まあ、とにかくミノリの運転で
一度その交差点に行き
同じ状況で検証してみようということになった。
ミノリは40を過ぎてから免許を取った。
お世辞にも上手とは言えないので、同乗は極力避けたいが
ここは物見高い我が性分…しかたがなかろう。
問題の交差点にさしかかる。
ミノリは、自宅に向かう左方向にウィンカーを出す。
信号待ちの間にミノリは言う。
「ほら、対向車はトラックよ。
また追いかけられるかもしれない…
私、ワイルドなオトコに好かれるみたいなの…」
青になったので、交差点に進入。
ここでミノリは、信じられない行動に出る。
交差点の真ん中で、車を止めたのだ。
「ひ~!左折なのに、なんで止まるのよ!」
「あら、安全のためよ」
右折予定で待機中の対向車…大型トラックの兄ちゃんは
ミノリが譲ってくれたと思い
かっこよく手を挙げて、右折のモーションに入った。
するとミノリは、さらに信じられない行動に出た。
にっこりと兄ちゃんに手を振り返すと
やおらトラックの鼻先をかすめ、急発進。
トラック、出鼻をくじかれ急停車。
ギャ~!怖いっ!
「ちょっと!進路譲ったんじゃなかったのっ?」
「左折の私が優先だもの」
涼しい顔で交差点を抜けたミノリの車を
さっきのトラックがアクセル全開で追いかけてくる。
次の信号待ちでは、後ろにピッタリつけられ
排気ブレーキをブシュー、ブシューと
すっごい勢いでふかす。
こりゃ、相当怒っている。
トラックは乗用車と違って、発進や停止の操作が面倒臭いのだ。
積み荷の関係もあり
交差点であんな思わせぶりなことされたら
腹を立てるのは当たり前だ。
「ね!こうなっちゃうの。怖いでしょ?」
怖いのはおまえじゃわい!
たたきまわしてやろうかと思ったが
待て待て…と思い直す。
こいつがどうなろうと、知ったこっちゃないわい。
トラックは、ミノリが大通りをはずれるまで
執拗に追いかけて来た。
これが真相であった。
そもそもミノリの旦那が悪い。
ミノリより20才上の旦那は
結婚した時からミノリにメロメロなのだ。
婚期を逃した40オトコが、ハタチそこそこの若い娘と見合い結婚。
毎日がキャバクラ気分だったに違いない。
以来30年、何をしても「可愛い、キレイ」でこれまで来た。
ミノリが自分を美しいと錯覚し、増長するのも無理はない。
夫婦喧嘩は犬も食わないと言うが
ラブラブなバカ夫婦に関わると、もっとエライ目に遭う。
短い検討の結果、私はこの問題にタッチしないことを決定。
遅くに免許を取った者特有の思い込みは
周囲が考える以上に危険な要素を含んでいる。
今さら交差点での振る舞いを正して戸惑わせ
事故でも起きたら私のせいにされてしまう。
ここは、運転の得意なかたがたに泣いてもらおう。
ミノリ自身も、相談とは言いながら
解決を望んでいないようだし。
「こんなこと…主人には言えなくて…
私がオトコを誘ってるみたいに思われたら困るもの…」
そう言いながらミノリは、現場検証で結果を出せて得意満面だ。
「ほんとだね!びっくりしたわよ」
私もうなづく。
人は、本当に解決したい問題は
誰にも相談せずに自分で解決するものなのだ。
さほど仲良しでもない知人、ミノリが言う。
車の運転中、時々オトコに追跡されることがあり
身の危険を感じると言う。
「ピッタリくっつかれて
家の近くまでずっと追いかけられるの。
すごく怖いのよ…」
相手はたいていトラックの運転手だと言う。
「交差点で、目が合うと必ずそうなるのよ」
なんで…?と問うてみたら
とうとう言いなすった。
「やっぱり…私がきれいだから…?」
そ…それだけは絶対に無い!
…声を大にして言いたいが、失礼なのでぐっと我慢。
まあ、とにかくミノリの運転で
一度その交差点に行き
同じ状況で検証してみようということになった。
ミノリは40を過ぎてから免許を取った。
お世辞にも上手とは言えないので、同乗は極力避けたいが
ここは物見高い我が性分…しかたがなかろう。
問題の交差点にさしかかる。
ミノリは、自宅に向かう左方向にウィンカーを出す。
信号待ちの間にミノリは言う。
「ほら、対向車はトラックよ。
また追いかけられるかもしれない…
私、ワイルドなオトコに好かれるみたいなの…」
青になったので、交差点に進入。
ここでミノリは、信じられない行動に出る。
交差点の真ん中で、車を止めたのだ。
「ひ~!左折なのに、なんで止まるのよ!」
「あら、安全のためよ」
右折予定で待機中の対向車…大型トラックの兄ちゃんは
ミノリが譲ってくれたと思い
かっこよく手を挙げて、右折のモーションに入った。
するとミノリは、さらに信じられない行動に出た。
にっこりと兄ちゃんに手を振り返すと
やおらトラックの鼻先をかすめ、急発進。
トラック、出鼻をくじかれ急停車。
ギャ~!怖いっ!
「ちょっと!進路譲ったんじゃなかったのっ?」
「左折の私が優先だもの」
涼しい顔で交差点を抜けたミノリの車を
さっきのトラックがアクセル全開で追いかけてくる。
次の信号待ちでは、後ろにピッタリつけられ
排気ブレーキをブシュー、ブシューと
すっごい勢いでふかす。
こりゃ、相当怒っている。
トラックは乗用車と違って、発進や停止の操作が面倒臭いのだ。
積み荷の関係もあり
交差点であんな思わせぶりなことされたら
腹を立てるのは当たり前だ。
「ね!こうなっちゃうの。怖いでしょ?」
怖いのはおまえじゃわい!
たたきまわしてやろうかと思ったが
待て待て…と思い直す。
こいつがどうなろうと、知ったこっちゃないわい。
トラックは、ミノリが大通りをはずれるまで
執拗に追いかけて来た。
これが真相であった。
そもそもミノリの旦那が悪い。
ミノリより20才上の旦那は
結婚した時からミノリにメロメロなのだ。
婚期を逃した40オトコが、ハタチそこそこの若い娘と見合い結婚。
毎日がキャバクラ気分だったに違いない。
以来30年、何をしても「可愛い、キレイ」でこれまで来た。
ミノリが自分を美しいと錯覚し、増長するのも無理はない。
夫婦喧嘩は犬も食わないと言うが
ラブラブなバカ夫婦に関わると、もっとエライ目に遭う。
短い検討の結果、私はこの問題にタッチしないことを決定。
遅くに免許を取った者特有の思い込みは
周囲が考える以上に危険な要素を含んでいる。
今さら交差点での振る舞いを正して戸惑わせ
事故でも起きたら私のせいにされてしまう。
ここは、運転の得意なかたがたに泣いてもらおう。
ミノリ自身も、相談とは言いながら
解決を望んでいないようだし。
「こんなこと…主人には言えなくて…
私がオトコを誘ってるみたいに思われたら困るもの…」
そう言いながらミノリは、現場検証で結果を出せて得意満面だ。
「ほんとだね!びっくりしたわよ」
私もうなづく。
人は、本当に解決したい問題は
誰にも相談せずに自分で解決するものなのだ。