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殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

ゲタ味噌

2008年10月26日 16時46分27秒 | 不倫…戦いの記録
激動の年が終わり、新年を迎えました。

年末、キラ子は年相応の男性と

慌ただしくできちゃった結婚をしたので

義父は元気がありませんでした。


しかし、義母に届いた年賀状の中に

キラ子の名前のものがあったために

はなはだ賑やかな幕開けとなりました。



{○○○○子様様}

ワープロ打ちの宛名書きからして、喧嘩上等!の意欲満々です。

裏には、手書きのメモをコピーしたものが貼り付けてありました。


{○月○日

 パパと○○で食事のあと、ホテル。

 パパ、すごく元気。

 あの年で2ラウンドはリッパよね}


{○月○日

 パパったら、お店の裏でいきなりなんだもん。
 
 ごほうびに○○のバッグおねだりしちゃった。

 そのあと○○でごはん}
 


            げっ…


ミミズの這ったような字で延々と綴られた、いわば援交日記。

しかも困ったことに、日付や店名、品物など

どれも請求書とピッタんこ…。


キラ子本人のしわざか

誰かがキラ子の日記をコピーして、義母に嫌がらせをしたのか…。

どちらにしても、気味の悪いものです。


義母は、キラ子のお腹の子の父親を心配し始めました。

義父の子ではないか…年賀状は、そのアピールではないかと言うのです。


「そんなまわりくどいことするようなタマじゃないよ。 
 
 誰の子か、本人にもわからないのとちがう?
 
 別の人と結婚してくれたんだから、いいじゃん」


「人ごとだと思って!」


ほんとに、人のことは、どうしてこう気楽で面白いのでしょう。        
 
それにしてもキラ子…しっかり彼氏はキープしつつ

義父のオゴリで栄養補給しながら胎児を育成していたのね…。


納得いかない義母は

後日、双方を知る知人に頼んでキラ子に確かめてもらいました。


キラ子は

「せっかく幸せをつかんだのに…」

と泣き崩れたそうです。


泣かなくても、イエスかノーかでいいのに…と思いましたが

自分のメモを誰かにコピーされて悪用されたとしたら

私ならショックで泣くかもしれません。

結局、犯人は分からずじまいでした。

私は、キラ子が義父と二股かけていた

駅前商店街のおじさんが怪しいとひそかににらんでいます。



夫は、あの手首ザックリ事件以来

こちらへ来ることのなくなったM子の所へ時折通い

私は子供たちの少年野球や習い事

それに夫が途中で投げ出したPTA役員まで引き継ぐ羽目になり

多忙によって適度な距離を保っていました。


 
          家を出たい…

          つまらぬことに振り回されて

          感情を乱すことなく

          子供たちと三人、穏やかに笑って暮らしたい…


その願いは日に日に強くなっていきました。

でも、その時は勇気がありませんでした。


嫁いで間もない頃、義母の親戚のおばさんから聞いた話…

おばさんの友達の話が、根性なしの私の足を止めていました。


おばさんの友達は、暴力癖のある夫と離婚し

男の子を一人連れて家を出ました。

昔のことなので

身寄りも資格もない子連れの女性が

住み込みでいきなり働ける所は限られていました。

その人は、お約束のように水商売に入りました。

育ち盛りの男の子を抱えて、慣れない仕事は大変でした。


通勤でハイヒールや草履を履くと底がちびるので

節約のために店まではゲタを履いて通いました。


そこで頑張って№1…ならドラマですが

そんな生活感のにじみ出たホステスさんの成績は、やはりそれなり…。


30を過ぎたあたりから、店に居づらくなってきました。

そこで、飯場(はんば)という所へ流れました。

工事現場に住み込んで働く男性たちの食事を作ったり

洗濯をする寮母さんのような仕事です。


やはり子連れで住み込みましたが

男の子は中学生になり、弁当が必要になりました。

飯場の朝は多忙な上、子供の弁当を調理する自由はありません。

そこでこっそり、飯場の朝食である味噌汁の具をすくって

弁当のおかずにしていたそうです。


男の子は文句ひとつ言わずそれを食べ続け

やがて大人になって母親に孝行したという

ちょっといい話だったのですが

私の頭には「ゲタ味噌の恐怖」として残りました。


怠け者、特技なし、実家帰れず、よく食べる男の子二人…。

今家を出たら、もろ、ゲタ味噌…。


なけなしの貯金を持ち出したところで、時間の問題です。

9歳と3歳…無理をして泣かせるより

じっとして大きくなるまで時間を稼ごうと思いました。


夫が子供に危害を加える人間ではないことも、重要な要素でした。

       
        だって、私、怠け者なんだもん。
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残り火

2008年10月26日 09時58分09秒 | 不倫…戦いの記録
家の近辺で、M子の車が目撃されるようになったのは

それからすぐのことでした。


無職で暇になったM子は

夕方になると実家から2時間かけて

はるばるやって来るのでした。


少し離れたところに車を止めて

ずっと待っているのが、ベランダから丸見えです。



         「ほら、来てるよ」


夫は一瞬、さもいやそうな顔をします。

結局は出て行くのですから

ジェスチャーをしなくてもいいのに、男というのは、厄介です。


同じ待つなら

会社のほうへ行って、仕事帰りに会えばいい…と思いましたが

人通りの多さに加えて、多分Kさんがネックなのでしょう。


夫とM子…肝の小さい人間というのは

目先の不都合を避けたい一心から

かえってもっと大胆で人の気持ちを逆なでする行動に走るようです。


黙認というか、あきらめというか

もうここまできたら

行き着くところまで行かせるしかないという気分でした。


そこには、すでに彼らの意志では消せなくなってしまった火が

どこまでくすぶり続けるのか眺めていたいような

一種残酷な気持ちも混じっていました。



一日おきだったのが週に1回になり、やがてたまに…になりました。


当初、飽きたのかと思っていましたが

大学院入試の勉強を始めたのと

親の監視がいちだんと厳しくなったためでした。

          M子、どこまでも、マイペース。



ある夜、どうしたことか

夫はM子の車に行きたがりませんでした。

待てど暮せど「彼」が出て来ないので

M子はとうとう門の前まで来ました。


明るい門灯で、M子の姿がはっきりと見えます。

数ヶ月前よりも、かなり痩せていました。

二階のベランダから眺める私を恨めしそうに見上げていました。


渋る夫を引っ張って玄関まで行き、外へ出しました。

夫の姿を見るなり、M子はうつ向いてゆらりと動きました。


「またやった…」

夫はいまいましそうに舌打ちします。

何が起きたのかわからない私は

M子の足元を見て、あっと声を上げました。


血がぽたぽたと落ちています。

蛍光灯の光に浮かび上がるそれは

どこまでもどす黒く

粘度のある異様な液体に思えました。



       「人んちの前で、何やってんのよ!

        そんなに死にたきゃ、首を吊りなさい、首を!」

私は小言を言いました。


リストカット…その言葉や意味を当時はまだ知りませんでした。

今思えば、申し訳ないことを言ったと思います。


夫はタオルを持って来てM子の背を押し、その場を離れました。

車で手当をしてやり、帰らせたようでした。

その夜はたまたま両親が留守だったので騒ぎが大きくならず幸いでした。



「ああいう癖があるんだ…」

戻って来た夫は言いました。

「ずっと前からやってたらしい。

 最初それを知った時は

 俺が守ってやりたいと思っていたけど

 あんまりたびたびじゃあ…」


       「入院したというのも、そのせい?」


「多分…。

 親は知らなかったと思う。

 教師を辞めたショックで自殺を図ったと思ったんじゃないかな…」


         「当分、面倒みてやるしかないね」


 
告訴する…と息巻いていた父親でしたが

待てど暮らせどその気配はありませんでした。

 
コメント (6)
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