殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

けもの道

2008年10月24日 16時03分08秒 | 不倫…戦いの記録
          
            そ…そんな…


「うちには男の子がいないから

 そのうち絶えるだろう。

 残すほどのたいそうな家ではないから、それでいい。
      
 でも、おまえが男の子を連れて戻ってくれば

 いずれその子たちが引き継ぐことになる。

 畜生になり果てた一族の血をうちへ入れることはならん。

 一人で帰りなさい。

 向こうに残るのもだめ。

 選択は一つしかない」
  

泣いて頼めば、あるいは譲歩してくれたかもしれません。

しかし、そこが不器用な長女の哀しさ…

じゃあ、いいや…と思いました。



     「私はけだものと結婚して、けだものの子供を生みました。

      この子たちと、けだものの世界で生きて行きます」


                  
「気が変わったらすぐに帰っておいで…待っているから」

祖父は言いました。


自分は義姉のように実家に頼りきっていないと自負していた私ですが

最後は誰かがなんとかしてくれる…

そんな甘えがどこかにあったと気づきました。


家に帰ると、夫の両親は実家での話の内容を聞きたがりましたが

おまえらのことをケダモノだの畜生だの言っていた…

とも言えないので

事情を説明した…とだけ伝えました。

両親は、厳しい私の祖父が苦手でした。


ほどなく、夫はふらりと帰って来ました。

みんなで、何も聞かない、言わないと決めていたので

静かに迎えました。

義父は我慢できないので

自分の部屋に閉じこもって会わないようにしていました。


帰った当初は、相変わらずのツンツンぶりです。

いかにも「帰ってきてやった」ふうに装うので

憎たらしいことこの上ないですが

感情を揺さぶられるのも馬鹿馬鹿しくて放っておきました。


私は少し前から長男を少年野球に入れており

週3回の練習や、毎週のようにある試合で何かと忙しく

そして楽しい日々を過ごしていました。


夫は野球が得意です。

今までそこにいるかとも言わなかった長男と

グローブの手入れやボールの投げ方など

「本当の親子」みたいに話していて

ほのぼのとした、家庭らしい雰囲気が漂う時間も

少しずつ増えていきました。


しかし、つかの間の平和はすぐに破られました。

教頭から電話があり

M子とその両親が

いよいよ夫を相手に訴訟を起こすことになったと言われて

義母は仰天しました。


電話を代わりました。

M子は結局退職することになったそうです。

精神的に参ってしまい、入院中だそうで

学校側もこれ以上かばうわけにはいかず

県教委も見放したということでした。


       「それで、訴訟の内容は何ですか?」

「婚約不履行ということです」 

       「はぁぁ~?」       


       なんとまぁ、みみっちぃ。

       せめて結婚詐欺にしてくれよ。 



「あと、職を辞した際の精神的苦痛に対する慰謝料と

 アパートを移った際に生じた損害の賠償責任…

 示談の場合は応じる…と」


           せこ…


きまじめな教頭は、メモを読みながら一生懸命です。

「私はほんとに、この件に首を突っ込むんじゃなかったと

 つくづく後悔していますよ…」

        「突っ込むからですよっ」
      

示談にはせず内容証明郵便を待つ

訴訟に至った際にはこちらも起訴する用意がある

この件での教頭の介入はここまで


それらのことを伝えてもらうことにして電話を切りました。

最後のは、教頭の希望です。
 
すべてサスペンスドラマで仕入れた知恵でした。


本当に訴える気があるのなら、黙っていきなりやればいいのです。

一旦教頭に話が行くのは、まだこちらの出方をうかがっているからです。


            チキンどもが!
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実家にて

2008年10月24日 09時12分54秒 | 不倫…戦いの記録
両親は、告訴…という単語にショックを受けていました。

世間知らずの義母はともかく

弁護士を始め、あらゆる職業の知り合いがたくさんいる…

と日頃豪語している義父の恐れようは、少々滑稽でした。



そんな時、実家の祖父から一枚の葉書が届きました。

時候の挨拶の後に
   
   「近頃面白くない噂を耳にはさみ、老いの胸を痛めております。
   
    ぜひともお二人でお越しの上、ご説明いただきたく

    一日千秋の思いでお待ち申し上げます…こと、しかと」


               ヤバ…


電話ですむことを葉書にしたのは

両親の目に止まるのを予測してのことと、すぐにわかりました。


この件は実家に一切伝えてなかったので

どこからか耳にして、驚いたのでしょう。

それほどのスキャンダルになっているということです。

葉書には二人で…とありましたが、片方はいません。

重い気分で実家に向かいました。


祖父は心臓が悪く、入退院を繰り返していました。

元気な頃なら心配して飛んで来たでしょうが

それも無理な体になっていました。


強い反対を押し切っての結婚だったので

実家に迷惑をかけたくないと思ういい子ぶりの気持ちが

かえって祖父や両親を心配させたようです。



「すぐ離婚しなさい」

祖父は言いました。

その頃にはもう、愛想の尽き果てていた私に

依存はありませんでした。


「すでにどっちが悪いなどと検討する段階ではない。異常じゃ」

 
          ごもっとも…



「あっちに余裕がないから

 ここまでの騒ぎになるんじゃ。
 
 女が出来ても囲えるわけでもない。

 女房の機嫌を取るなり

 大枚渡して入れ替えるなりの経済力もない。

 貧乏人がお大尽と同じことをしたがるのは、馬鹿だ。

 父親も同じというじゃないか。

 会社の未来もないぞ」


  
        全部知ってるのね…


「辛抱は大事だ。

 しかし、いずれ花が咲く時のためにするのが辛抱。

 そうでないのは辛抱とは言わん。

 自虐じゃ」 


         一言もござんせん…。


「今は子供連れだから、一旦帰りなさい。
 
 子供を置いて、嫁いでから買った物も全部置いて

 お金は一円も持たずに着の身着のまま

 今夜にでもタクシーに乗りなさい。

 ここまで帰ったら払うから」


       「え…子供を置いて…?」


「それがきっぱり縁を切るということじゃ」


       「お願いします。

        子供も一緒でいいでしょう?」
       


「子供の先生に手を出すような男は、ケダモノじゃ。

 ケダモノの血のかかった子は、いらん」

 
コメント (1)
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