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朝鮮労働党の新規約は従来の規約にはなかった「党中央委員会第1書記は朝鮮労働党総書記の代理人だ」という文言が新たに加えられた。労働党第8回大会5日目の1月9日に修正・採択された。

2021-06-02 | 朝鮮民主主義人民共和国

【独自】北朝鮮、後継構図を念頭に「金正恩代理人」新設

登録:2021-06-02 06:41 修正:2021-06-02 09:05

 

労働党の新規約に「党第1書記」 
ナンバー2を超えた“潜在的後継者” 
キム・ヨジョン副部長指名する可能性も
 
 
北朝鮮の朝鮮中央テレビは今年1月14日、金正恩国務委員長が前日、平壌体育館で開かれた第8回党大会記念公演「党を歌う」を観覧したと報じた/聯合ニュース

 北朝鮮が今年1月の朝鮮労働党第8回大会で改正した党規約に、事実上の“潜在的後継者”と言える「朝鮮労働党総書記の代理人」条項を新たに設けたことが確認された。

 1日、本紙の取材によると、朝鮮労働党の新規約は従来の規約にはなかった「党中央委員会第1書記は朝鮮労働党総書記の代理人だ」という文言が新たに加えられた。労働党第8回大会5日目の1月9日に修正・採択された新たな党規約は、労働党中央委員会関連規定の第26条に「党中央委員会は党中央委第1書記、書記を選挙する」という内容と共に、「労働党総書記代理人」規定を新設した。

 「朝鮮民主主義人民共和国のすべての活動を指導する」(北朝鮮憲法第11条)朝鮮労働党のトップである労働党総書記は「白頭血統の3大継承者」である金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長だ。今回新たに作られた「労働党総書記代理人」条項は、ナンバー2を超え、事実上“潜在的後継者”を念頭に置いた条項と見られる。これに先立ち、労働党中央委の機関紙「労働新聞」は1月10日付の2面で改正された労働党規約の内容について報じたが、「党中央委第1書記」を新設したという事実には全く触れなかった。当然、これまでこの肩書きで公に呼ばれた人物もいない。

 労働党総書記の代理人と規定された「党中央委第1書記」は、約70年に及ぶ朝鮮労働党の歴史において前例のないものだ。ただし、金正日(キム・ジョンイル)総書記死去直後の2012年4月11日に開かれた「労働党第4回代表者会」で、金総書記を「永遠な総書記」に推戴し、金正恩現総書記を「労働党第1書記」に推戴したことがある。しかし、これは2016年5月に開かれた第7回党大会の時まで一時的に存在したものだった。推戴の形で任命された当時の「労働党第1書記」と今回新設された選出職の「労働党中央委第1書記」は、さまざまな意味で含意が異なる。

 北朝鮮が「党中央委第1書記=党総書記代理人」制度を設けたにもかかわらず、これまで発表していない事実をどう見るべきか。二つの可能性が考えられる。

 第一に、事実上“潜在的後継者”指名制度とみられるこの条項を、将来を見据えた“予備条項”として設けた可能性だ。この場合、統治制度の安定性を確保するためと見ることができる。第二に、特定人物を「党中央委第1書記」に選出しておきながら、わざと公開していない可能性もある。しかし36歳という金正恩総書記(1984年1月8日生まれ)の年齢や、父親の金正日時代とは異なりできるだけ多くの事項を公開する金正恩時代の“公開主義”の傾向などから、現在としては前者である可能性が高いとみられる。

党第1書記で統治の安全性確保図る…白頭血統でない第3人物の可能性は低い

 ならば、代理人条項は具体的にだれを念頭に置いているのだろうか。2018年2月初め、平昌(ピョンチャン)冬季五輪の際、金総書記の特使として文在寅(ムン・ジェイン)大統領に会って以来、対南・対米など国政の様々な分野で“代理人”の役割を果してきたキム・ヨジョン労働党中央委員会副部長である可能性が高い。

 キム・ヨジョン副部長は公開された公式の肩書に囚われず、権力の中枢で公開的に活動してきた唯一の「白頭血統」だ。白頭血統とは「社会主義朝鮮の始祖」であり、「永遠な首領」と呼ばれる金日成(キム・イルソン)主席から金正日総書記、金正恩総書記につながる家系を指す北朝鮮の用語だ。キム・ヨジョン副部長は2018年以降、特に対外政策分野で金総書記の“代理人”の役割を果たしてきたため、韓国や米国、日本などはキム副部長を「金正恩へとつながる最も正確で速い道」(韓国政府高官)とみている。

 北朝鮮もキム・ヨジョン副部長が“特別な地位”にあることを公然と宣伝してきた。昨年6月、キム・ヨジョン副部長が主導した「対北朝鮮ビラ事態」が代表的だ。キム副部長の「対北朝鮮ビラ非難談話」(6月4日)以降、北朝鮮各地で「決起大会」が相次ぎ、「各界の反響」が「労働新聞」で数日にわたり大々的に報道された。また、キム副部長が「対南事業を総括」し「指示を下した」という内容の統一戦線部報道官談話が「人民の必読メディア」である「労働新聞」2面トップ記事(6月6日付)で掲載された。北朝鮮で特定の人物の談話以後、「決起大会」や「各界の反響」、「指示」などが続くのは特別な事情がない限り、最高指導者に限られる。

 一部では、前回の第8回大会で急浮上したチョ・ヨンウォン党中央委政治局常務委員兼中央軍事委員が「第1書記」に選出された可能性も取り上げられている。2月に開かれた党中央委第2回全員会議で「党中央委と政府の幹部たちを辛らつに批判した」という「労働新聞」の報道(2月11日付)と、3月の第1回市・郡党責任書記講習で「党中央の唯一の指導体系をさらに徹底的に立てることについて」を講義した事実などが、こうした推定の根拠に挙げられる。チョ・ヨンウォン常務委員が事実上“北朝鮮のナンバー2”であり、”金正恩総書記の秘書室長”の役割を果たしていると見られているのだ。

 しかし、労働党を長く研究してきた複数の専門家は、「北朝鮮で最高指導者の代理人はナンバー2というより、白頭血統だけに許された(潜在的)後継者と見るべきだ」と指摘する。これと関連し、これまで北朝鮮に存在した“第1”が付く肩書の歴史は示唆するところがある。金日成主席死去後に限ると、1990~2000年代の「国防委員会第1副委員長」(チョ・ミョンロク)、現在の「国務委員会第1副委員長」(チェ・リョンヘ)などが“権力序列第2位”に当たる。白頭血統でない彼らには“第1”と共に必ず“副”が付けられてきた。“副”の字がついていない肩書は、「白頭血統の3代継承者」である金正恩に付けられた「党第1書記」と「国防委員会第1委員長」(2012年4月13日)の事例が唯一だ。

イ・ジェフン先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)


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