9月1日、下関は唐戸まで来て、ふく(ふぐ)をはじめとした海の幸を味わった後、せっかくなので関門海峡で対岸の門司港に渡ることにする。この関門海峡、私の好きな景色の一つである。関門海峡を渡る手段として新幹線、山陽線、連絡船、関門橋、関門トンネル、人道トンネルとさまざまあるが、唐戸と門司港という観光エリアを結ぶという意味では時間も最短の連絡船が人気である。
2階のオープンデッキ席に陣取る。確か前に乗った時は波も高く、船も結構揺れたし波しぶきがかかった。この日は穏やかで、5分の航海もあっという間である。
門司港の乗り場に到着。折り返し便を待つ客がずらりと待っている。果たして1回の乗船でさばくことができるのだろうか。
ちょうどこの日はフリーマーケットのイベントが行われていた。骨董品や古着、手作り雑貨、おもちゃなどが並ぶ。こういうところで掘り出し物、お宝を見つけるのを楽しみにしている人も多いことだろう。
しばらく、門司港レトロをぶらつく。どこかに入ろうというつもりもなく、下関まで来たのでそのついでに門司港まで来た・・というくらいの感覚である。
関門海峡、山口県・下関と福岡県北九州・門司・・・海峡を隔ててはいるが一つのエリアを形成しているといっていいだろう。ふとここで、関門というが下関と門司、住むならどっち?という質問が来たらどうだろうかと思う。本州と九州の差はあるが、それぞれに歴史あり、産業あり、景色あり。近くの中核である小倉への距離も似たようなもので・・。
ルーツが中国地方にある私とすれば、下関のほうが若干近さというか、親しみがあるように感じるのだが、これはどちらがよくてどちらが劣っているというものでもない・・。
門司港駅に到着。九州鉄道記念館やレトロ観光トロッコも前回乗ったことから、また次の機会にする。今回はそのまま改札をくぐり、小倉行きの普通列車に乗る。一応、九州の鉄道の「始発駅」からの出発の風情を楽しむことに。
門司に到着。ここで下関行きに乗り換える。この先、交流~直流の電源切り替えを挟みながら関門トンネルをくぐる。海底をくぐっているというのはすごいことだと思うが、地元の人たちにとっては当たり前の景色で、トンネルの中でも普通にスマホをいじりながらすごす数分間である・・。
下関に到着。台風10号の通過による代替えプランで山口県まで来たが、後はこのまま鈍行乗り継ぎで広島に戻ることにする。
その前に昼食・・というか一献。あれ、先ほど唐戸市場でいろいろ食べたのでは?というところだが、アルコールは口にしていない。また、前日から山口県のいろいろな食をいただいたが、最後のピースを埋めることにする。
向かったのは、駅前にある大衆食堂「一善」。大衆食堂といいつつも、午前中から一献ができる店である。で、最後のピースとしたのはクジラ料理・・。
扉を開けると、まずはできたての一品がカウンターや冷蔵庫に並ぶ。この中で鯨カツを選択し、瓶ビールとともにいただく。先ほど揚げたてという。
そして鯨さし。こちらは完全な冷凍品だが、これをしばらく常温で自然解凍し、醤油につけて、まだ氷のシャリっとした食感を残しつつ、鯨の身の味を楽しむ。そうするうち、観光客らしい人、地元の常連らしき方それぞれが入って来て、店員さんはその両方の扱いも手慣れた様子だ。
そして鯨汁。見た目は豚汁と似た感じで、豚肉が鯨ベーコンに置き換わったものといえばわかりやすい。今回、ビールもあったので単品で注文してアテとしていただいたが、これは定食、せめてライス単品と合わせて注文したほうがよろしい。ふく(ふぐ)はないが鯨はある。また一方で準備を終えた刺身が冷蔵庫に、そしてカウンター前の惣菜置き場に並ぶ。観光客、地元客へだてなくいらっしゃいませの雰囲気で、ここはまた訪れたいところである・・。
こうして前日からさまざまなものをいただいた後、広島に戻ることに。とりあえず、下関発岩国行きに乗車。115系3000番台のゆったりしたシートで、列車の揺れに身を任せる。
新山口で長時間停車。山陽線のこの区間、乗務員の交代とか貨物列車の通過待ちなどの理由により、新山口で停車時間を確保する列車が多い。いったん改札を出て、コンコースの緑を楽しむ。
この後、徳山で数分の停車があった後、まだ日が明るいうちに岩国に到着。あとはそのまま乗り継いで帰宅・・。
今回は山陽線を中心に回ったが、山口県といえば2023年6月の豪雨により、山陰線の人丸~滝部間(実質、その前後含む区間)、美祢線の全線で運休が続いている。両区間とも代行バスが運行されるが、復旧はまだ先のようである。この両区間もいずれは訪ねてみようと思うのだが・・・。