まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

第11回九州西国霊場めぐり~野母崎半島から軍艦島を望み、伊王島へ

2022年07月30日 | 九州西国霊場

九州西国霊場第26番の観音寺を参詣し、脇岬海水浴場の美しい海を見た後で、長崎市街に向けて折り返す。

野母崎半島を横切ってやって来たのが、長崎のもざき恐竜パーク。長崎市恐竜博物館や子どもたちの遊び広場があり、この暑さだが多くの家族連れで賑わっている。恐竜で町おこしといえば福井が知られているがm長崎で恐竜というのは初めて聞く。ただ実は、長崎では恐竜の貴重な化石の発見が相次いでいるのだそうだ。

私としては恐竜はともかく、同じ敷地内にある軍艦島資料館に立ち寄る。軍艦島が世界遺産に認定されたのを機に、島の歴史や当時の生活を紹介するために、島を遠くに眺めることができるこの地に開設された。

施設としては小ぢんまりしているのだが、江戸時代に石炭が見つかり、三菱による開発、そして多くの人たちが移り住んで活況を呈した島の様子が古い写真、カラー再現された4K映像、そして今に残された家財道具などで紹介される(館内の展示物は撮影禁止のため、画像なし)。

軍艦島の炭鉱が閉山となり、島から人の姿がなくなってもうすぐ50年である。年月が経つにつれてその廃墟ぶりが人々を引き付けるところで、これまでにも映画などのロケ地に選ばれている。私が知るところで印象的だったのが、B’zの「MY LONELY TOWN」のミュージックビデオ。8年前に軍艦島へのクルーズ船で上陸した時に、軍艦島がロケ地となった曲として船内で動画が流されたのを観て初めて知った。閉山後、軍艦島でのこうした形での撮影が認められた初めての作品ということもある。館内にはB’zのお二人のサイン入りパネルも展示されている。

ここで、恐竜の化石が顔を出す。軍艦島は海底から石炭を採掘するために開発されたが、その石炭層の下には化石が含まれる地層が広がっていて、それがティラノザウルスやトリケラトプスといった有名な恐竜が生息していた白亜紀後期のものだとされている。軍艦島の採掘ではさすがにそこまで掘ることはなかったが・・。

海べりに出て、遠くに軍艦島の姿を見る。島に多くの人が住んでいた当時、この島は不夜城のように煌々と輝いていたそうだ・・・。

もう少しレンタカーを走らせ、来る時に目についた高浜海水浴場に立ち寄る。海水浴場のほか、カフェレストランも併設されている。小ぢんまりした砂浜だが地元の人たちで賑わっている。ここも、海岸の向こうに軍艦島が照らされて見える。海水浴とはいかないが、窓越しに軍艦島を望むカフェでしばらく休憩。

時間は昼を過ぎているが、また旅先で昼食を取り損ねたと言われるのもアレなので、ここで食事としよう。メニューをめくる中で目に留まったのがトルコライス。長崎のご当地料理の一つで、豚カツ、ピラフ、スパゲティが一つの皿に乗っているのが条件。豚カツにはカレーソースがかかり、またサラダも乗っていて一皿でいくつもの味が楽しめる。トルコライスという料理の発祥や名前の由来には諸説あるようだが・・・。

さすがに軍艦島を眺めながらのビールとはいかないが、ガシガシいただき、セットのアイスコーヒーを飲んで夏の一時を過ごす。これだけ穏やかな天気なのだから、ちょうど今頃午後からのクルーズ船の人たちが上陸していることだろう。翌24日の天気はどうかな・・・?

さて、この後はビッグNスタジアムでのフレッシュオールスター観戦なのだが、このまま長崎市街に戻っても時間が早すぎる。もう1ヶ所どこかに立ち寄れるかなということで、伊王島に行くことにした。こちらも訪ねるのは初めてである。

カーナビの案内で住宅地の中を抜け、伊王島大橋を渡る。2011年に開通した橋で、まずは伊王島の手前の沖ノ島に渡る。伊王島はさらにその先だが、この2つの島の間はほぼ地続きである。

まず車窓に現れるのは馬込教会。伊王島、沖ノ島はカトリック信者の多いところという。

この先はリゾート施設が並ぶ。伊王島のフェリーターミナルもどこか南国風である。結構な数のクルマも停まっており、海水浴場に向かう人の姿も目立つ。長崎から手軽に訪ねることができるリゾート地のようだ。

今はこうして大規模なリゾート施設が並ぶ伊王島だが、かつては炭鉱の島だった。今の建物はかつては炭鉱関連の施設や炭住が建っていたそうだ。炭鉱は1972年に閉山となる。その直前の1970年が舞台となる山田洋次監督の映画「家族」は、伊王島の炭鉱に勤めていた一家が、炭鉱の閉山が決まったことを受けて、北海道での酪農をやるために移住する姿を描いた作品である。当時の鉄道、連絡船のシーン、大阪万博や上野動物園のパンダ、高度成長の都会と地方の多様な風景など、なかなか面白かった。その1970年頃はエネルギーの主力が石炭から石油に変わったことを受けて、この頃から炭鉱の閉山が相次ぐ。「家族」の一家のように島を出た人も多かっただろう。

そこで当時の伊王島町は島のリゾート開発に乗り出し、巨大なホテルが建ち並ぶようになったが、バブル崩壊後の長引く不況のため閉鎖。その後ようやく再興し、現在はまた賑わいを取り戻している。昭和以降、なかなか波乱の歴史を持つ島である。

その先にある伊王島灯台に向かう。公園として整備されており、クルマを停めてしばらく歩く。伊王島灯台は明治の始め、イギリスのリチャード・ヘンリー・ブラントンの設計で建てられた。伊王島は地図を見るとちょうど長崎港の外海への入口、防波堤のように見え、灯台は欠かせないものであることがわかる。灯台よりも前、幕府が設けた砲台の跡もある。

灯台に隣接して、伊王島灯台旧吏員退息所という建物がある。明治初期の建物がそのまま資料室として保存されており、中には伊王島灯台の紹介資料が並ぶ。

その一角に、高倉健さんの最後の主演作品である映画「あなたへ」(降旗康男監督)のポスターがある。この作品も「家族」と同じ「ロードムービー」というジャンルで、富山の刑務官だった主人公が、亡き妻が生前に送った手紙の真意を知るために富山から長崎へキャンピングカーで旅をする設定で、「家族」の高度成長期とはまた違った日本のさまざまな風景が登場する。

長崎で舞台となるのは平戸だったのだが、「平戸にある白い灯台」のシーンだけは伊王島で撮影されたとある。ある意味、「家族」で離れた伊王島に「あなたへ」で戻って来たとも言える。

野母崎半島から伊王島にかけて、海の景色を満喫することができた。そろそろ時間的にもよい頃で、長崎駅前まで戻ることに・・・。

コメント