まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

第15回中国観音霊場めぐり~第23番「神門寺」

2020年09月23日 | 中国観音霊場

9月19日、「WEST EXPRESS銀河」でやって来た出雲市。この列車に乗った人の多くは例えば一畑電車や他のJR線に乗るとか、出雲大社や松江城に行くのが目的なのだろうが、中国観音霊場めぐりがお目当てというのはなかなかいないだろう。私もこの後で出雲大社に行く予定だが、その前にまずは観音霊場めぐりである。

この日訪ねるのは第23番の神門寺(かんどじ)。神の門、いかにも出雲大社につながる名前に見える。

出雲市駅前に出る。この駅に降り立つのも久しぶりである。出雲大社側の出口は神社の拝殿をイメージしており、ヤマタノオロチや因幡の白うさぎといった山陰が舞台となった「古事記」の物語のイラストが出迎える。

この後出雲大社へは一畑電車で移動することにして荷物をいったんコインロッカーに預け、反対側の南出口から神門寺に向かう。地図で見ると1キロあまりといったところだろうか。近郊の住宅地を抜け、島根大学の出雲キャンパスの手前に森が見える。駅から徒歩15分。

塩冶町神前という町名板がある。出雲大社の門前の歴史でもあるのだろうか。

寺の南側の入口に到着する。「出雲国風土記登場地」の表示もある。寺の由来が記された案内板によると、神門寺は781年、光仁天皇の勅願所として宋肇菩薩により創建されたとある。この辺りを神門郡と呼ぶのは、神門を奉納したことから神門臣という姓を賜ったことから取られている。神門は鳥居のことだという説が有力で、だとすれば出雲大社の入口とか、出雲大社を遥拝するとか、そうした場所だったのだろう。

その後、二世が伝教大師、三世が弘法大師で、弘法大師がここで「いろは歌」を作ったとされているが、これは果たして本当だろうか。

以来密教の道場となっていたが、鎌倉時代になり、良空上人が法然の専修念仏に帰依して、その後は山陰における浄土宗の中心的な道場になり、現在に至るとある。

山門から境内に入る。ちょうど彼岸の時季ということで、地元の人が次々と境内の奥にある墓地にお参りにやって来る。

正面の本堂に手を合わせる。寺としての本尊は行基が彫ったとされる阿弥陀如来である。

本堂を見て左手前に「普門殿」の額が掲げられる観音堂があり、慈覚大師作とされる秘仏の十一面観音が中国観音霊場の本尊である。こちらでお勤めとする。7月、8月の札所めぐりを思うと、般若心経を唱えるのも楽になった。

観音堂と並んで弘法大師堂がある。現在は浄土宗の寺だとしても、弘法大師が三世で、「いろは歌」をここから広めたという伝説があるということで、敬意を表しているのだろう(「いろは歌」が弘法大師の手によるということ自体疑わしいとされていることは置いておくとして・・・)。

山門の奥に「塩冶判官高貞公の墓」がある。塩冶高貞は鎌倉~南北朝時代の武将で、当初は鎌倉幕府を倒そうという後醍醐天皇を支え、後には北朝方についた。後に北朝の足利氏内部の争いの中で高師直の讒訴に遭い、自害してしまう。神門寺は塩冶氏の菩提寺だったという。

塩冶判官と高師直といえば、後に浄瑠璃や歌舞伎の「仮名手本忠臣蔵」の登場人物として知られる。忠臣蔵は播州赤穂の浅野内匠頭と三河の吉良上野介のトラブルが発端であるが、当時は事件を直接ネタにすることははばかられたため、南北朝時代の争い、それも高師直が塩冶判官の妻に横恋慕したことから事件が始まったことにした。浅野の赤穂は塩・・ということで塩冶判官、吉良の役職は高家・・ということで高師直となった。よく考えられたものである。

・・・とすると、「仮名手本忠臣蔵」の「仮名手本」は、いろは四十七文字と赤穂四十七士を掛け合わせたもので、塩冶判官ゆかりの神門寺が先に触れた「いろは歌」発祥の地というのはそのつながりから来た・・・ということがあったりして。

納経所にて朱印をいただく。まずはこれで「WEST EXPRESS銀河」と中国観音霊場めぐりがつながり、ほっとする。

ほっとしたところで出雲市駅まで歩いて戻り、改めて一息つくことにする。前夜は出発前に入浴したのだが、やはり夜行での移動だったため一風呂浴びたい。そこで事前にチェックしていたのが、駅前にある「らんぷの湯」。「WEST EXPRESS銀河でようこそ」の看板もある。

「らんぷの湯」というだけあって休憩スペースには数々のランプが並び、浴室内はヒノキの浴槽にランプがともる。露天風呂は竹林を眺めながら一人ずつのヒノキの浴槽につかる。先ほど歩いたのも含めてここで汗を落とす。これから出雲大社に向かうのに身を清める・・というのはオーバーだが。

そして出雲大社である。出雲市駅からはバスで行くのが近いのだが、せっかくなので一畑電車の全線に乗ることにする。ということで、隣接する電鉄出雲市駅に向かう・・・。

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