まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

中央西線を行く~信州へ

2020年09月04日 | 旅行記C・関東甲信越

8月29日、近鉄で名古屋に到着して、JRとの連絡口からホームに向かう。構内コンビニの新聞コーナーでは、どの紙面も大きく「安倍首相辞意表明」の見出しが並んでいる。

8時15分発の快速中津川行きは、東海道線の遅れにともない、乗り換え客を待ったため3分遅れで発車する。この先、駅を発車するたびに遅れのお詫びをするので、車掌も大変である。

また大変といえば、駅が近づくたびに、日本語で放送するのに加えて「うぃうぃるびー すとっぴんぐあっと つるまい。ざ らいとさいどどあ うぃるおーぷん さんきゅー」とベタに日本語読みの英語で言わなければならない(単語の並びはたぶんこんな感じ)。いまどき、「次は◯◯です」という放送すら自動音声でいう鉄道会社のほうが多いと思うのだが、どうだろうか。英語だって本場の方に吹き込んでもらったほうがわかりやすいだろう。

しばらくは名古屋近郊の住宅地を抜け、岐阜県の県境が近づく。長いトンネルが繰り返しあり、その合間に定光寺、古虎渓という渓谷ムードの区間を走る。かつては高蔵寺から多治見の間には大小14のトンネルがあったが、1966年に愛岐トンネルが完成し、合わせて複線電化となった。大阪近郊でいえば山陰線の保津峡や福知山線の武田尾辺りと似たようなものといえる。かつてのトンネルの多くは近代化遺産として保存されていて、春と秋には特別に公開されている。某旅行会社のサイトで、大阪~名古屋間は旅行会社専用列車で往復、ウォーキングでトンネルを見学するツアーというのを見たことがある。紅葉の名所だという。

土岐市では明智光秀関連のスポットを紹介する看板が出ているし、恵那から分岐するのは、この日の行き先の候補の一つだった明知鉄道である。この辺りは2020年大河ドラマ「麒麟がくる」の主人公明智光秀ゆかりの地である。大河にあやかった観光ブームに乗りたいところだったが、この状況である。撮影中断を経てようやく9月から話の続きが始まるそうで、NHKでも「麒麟は必ずくる」などとやっている。ちょうどその頃だと「菅がくる」タイミングのようだが。

いつしか名古屋を出た時の遅れは解消したようで、9時32分、中津川に到着。次の松本行きは10時ちょうど発だが、中津川まで来た客の多くが「その筋の人」で、2時間に一本の運転、短編成となると席を確保しなければと、長年の癖から焦ってしまう。改札からは出ずに、ホームの乗車目印に陣取る。側線にロングシートの211系が停まっているが、あれが来るのかな。

特急「しなの5号」がガラガラで先に出た後、果たして側線の211系3両編成がやって来た。これがボックスシートや転換クロスシート車なら、この先2時間座れるか、進行方向のどちらに座るかを気にするのだが、ロングシートならもうどちらでもよい。普段の通勤電車のように座れるかどうかだけだ。幸い、その筋の人が多いといっても通勤電車にはほど遠く、並んでいたほぼ全員が着席できた。

ただ、この区間はクロスシートで通りたかった、あるいはクロスシートが来るものだと思っていた客も多いようで、当てが外れた形だがやむを得ず飲食物を広げる光景が広がる。列車が動き出すと、缶ビールのプシュッという音をさせる人がいるかと思えば(一応、周りをはばかってか缶にタオルを巻いて隠していたが)、私の隣に座っていた人は地酒の300mlの瓶をラッパ飲みを始めたり・・・飲み鉄ばんざい。

この先は木曽川と国道19号線が並走する。ヒノキをはじめとして森林が豊かなところで、沿線には材木が積まれているのを見る。

また木曽川は水力発電の大いなる源であり、長野、岐阜両県で30ヶ所以上の水力発電所が稼働している。車窓からもその姿を見ることができる。水と森林、木曽は多くのものをもたらしてくれる。

森林といえば、木曽には材木運搬を目的とした森林鉄道が何本も走っていた。最盛期には総延長が400キロまで及んだそうだが、道路が整備されるとトラック輸送に変わり、いずれも廃止された。現在は赤沢森林鉄道のように観光スポットとして保存されたり、かつての車両が展示物として残されたりしている。上松駅の裏、かつては材木置き場だった場所にも、王滝森林鉄道で活躍していた機関車、材木を載せた貨車、そして小ぶりな客車が保存されている。客車といっても旅客輸送というよりは、関係者を乗せるのがメインだったのだろう。

ロングシートの旅とはいうものの、途中の駅で下車した人もいて、シートにも適度な間隔が開いている。結局はロングシートに横向きに座る時間も多かったので、景色も見えたしつまらないこともなかった。

11時51分、塩尻到着。列車は松本行きだが塩尻で14分停車して、甲府から来ていた11時57分発の松本行きが先に出る。松本に行くのならそれに乗り換えても、中津川からの列車にそのまま乗っていてもいいのだが、ふと、別に松本まで急いで行かなくてもいいのではないかという気持ちになった。

ちょっと寄り道するか。ちょうど、11時58分発の甲府行きがある。大阪からだと山梨県に行く機会はなかなかない。いっそ甲府まで行ったろか。いや待て、小淵沢から小海線に乗るのも面白そうだ。いずれも久しぶりの地域、路線である。

ただ一方で、暑いのだから温泉でさっぱりするのはどうかという思いも出てきた。温泉に浸かり、浴後は湖畔でビールを一杯・・・これもいいかな・・・?

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