まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

原発の町でのBCリーグ観戦

2014年06月29日 | プロ野球(独立リーグほか)

福井県のおおい町といえば、最近再稼働の差し止め判決が出た関西電力の大飯原発で知られる。また一方では作家の故・水上勉の出身地であり、原発が建設された大飯や高浜の地をモデルにした小説「故郷」という作品もある。原発の誘致で経済的に潤う一方で、農家の後継ぎ問題、過疎化などの問題に直面する地方都市の様子について書かれたものである。

そんなおおい町でBCリーグの試合が開催されるということで行ってみた。福井ミラクルエレファンツ対石川ミリオンスターズ。だいたいが鉄道の駅から遠く離れていたり、ローカルバスで行かなければならないところが多い(いや、バスの便があればまだ良い方)中で、おおい町の中心である小浜線の若狭本郷駅から歩いて10分ほどのところにある。大阪からだと近鉄の小浜行き高速バスも若狭本郷を経由する。十分日帰りで行けるところで、復路はこのバスを押さえるとして往路をどうするかで迷う(結局は前日から出発して、日帰りではなかったのだが)。

Dscn7705 東舞鶴から小浜線に揺られて若狭本郷駅に降り立つ。不安定な天気が予想されていたが、東舞鶴から福井県に差し掛かる辺りでは強い雨も降っていた。駅に着いた時にはましになったが、傘がいるくらいの雨量である。中止ということは避けたいなということで球場まで歩くことにする。

Dscn7706 若狭本郷の駅舎は、1990年に鶴見緑地で開かれた花博の「風車の駅」を移築したものである。そのついでにSL「義経」号も駅舎と反対側の国道に面して展示されている。球場での物売りの状況がわからないので、途中のスーパーで昼食を仕入れてから乗りこむ。

Dscn7710 Dscn7719 国道と青戸入江に挟まれた一帯が総合運動公園となっており、野球場の他に体育館やサッカー場、テニスコートなどふんだんに盛り込まれている。こういう立派な設備も原発誘致の恩恵なのかなと思ってしまう。その一角にある野球場であるが、小ぶりなスタンド。道を挟んですぐに青戸入江が迫っており、ファールボールはすぐに場外に飛び出て、それも海に入ってしまいそうな、そんな感じである。試合中、結構大きなファールもあり、ひょっとしたら何球かは海に飛び込んだかもしれない。

この日はおおい町の提供にて入場無料である。またおおい町の名産品の特売や、宿泊施設の宿泊券などが当たる抽選券の配布が行われていた。来た時には天候のせいで客の入りが悪いかなと思ったが、それでもポツポツと訪れる。

Dscn7717 客席も独特の造りで、ネット裏はベンチシートだが、両軍のベンチ上は人工芝席。応援団はこちらに陣取り、いわばパフォーマンスシートのようなものである。さすがに慣れたもので、この人工芝席に屋外で使う折り畳みチェアを広げて座るのが一番見やすいかもしれない。

Dscn7736 私はネット裏に陣取ったが、スタンド越しに見える青戸入江の穏やかな眺めもよい。その先の半島からは原発の送電線が伸びてきているのだが・・・。

Dscn7732 この日の試合は前期の北陸地区の優勝が決まるかもしれないというもの。首位福井と2位富山の差は0.5ゲーム。福井にマジック2が出ている。ともに残り2試合だが、福井が石川に勝ち、富山が信濃に負けると福井の地区優勝が決まる。うまくいけばここで胴上げが見られるかもしれない。そのためか、BCリーグの村山哲二代表も観戦に訪れていた。

Dscn7723 一方の石川といえば、元メジャーの木田優夫がいる。今季も結構な試合数に登板しており、展開によってはマウンドでの姿を見ることができるかもしれない。

Dscn7729 そして、この投手もここにいたのか。「ナックル姫」と呼ばれていた吉田えり。このところ女子のプロ野球リーグもでき、それなりに一定程度の試合が展開されているのだが、彼女がそちらに加わらないのはなぜだろうか。石川でも成果はなかなか出ていないようだが・・・。

Dscn7735 試合が始まる頃には上手い具合に雨もやみ、空が少しずつ明るくなってきた。まずは天気に心配はないだろう。おおい町の町長挨拶・始球式や地元の伝統芸能の太鼓の披露などで雰囲気を盛り上げる。

Dscn7752 さて福井の先発はエースの藤井。ところが先頭のドラルに安打を許し、続く石突の送りバントがフィルダースチョイスとなる。3番の島袋にも安打が出ていきなり無死満塁。

Rscn7761 ここで4番の岡下がセンターへの犠牲フライ。これで石川が1点先制するが、二塁走者の石突が三塁を狙ってアウト。さらにその間に二塁を突こうとした島袋もアウト。三重殺のような形となってチェンジ。ちょっと雑だったか。

Dscn7763 一方の石川先発は長谷川。1回、2回と3人ずつで片づけて行く。

Dscn7778 ところが3回、福井が一死三塁のチャンスを作ると、9番・佐藤がセンター前にタイムリーを放ち同点。さらに2番・森のタイムリーで2対1と逆転に成功する。藤井も1回の1失点以降は安打を許すものの後続を断っており、2対1とリードして前半終了。

Dscn7781 Dscn7782 スタンドも結構な入りとなっていた。それでも来場者数は551名というが、県内でもいわゆるメイン球場以外での開催となればこのくらいのものである。それでも、ひょっとしたら今日で優勝が決まるかもしれないということで応援にも力が入っている。地元テレビ局や新聞社もファンへの取材で回っている。

Dscn7802 5回終了後におおい町の観光大使による抽選会(もちろん私は外れだったが)が行われたところで後半に入る。

6回、石突、島袋の当たりはいずれも二塁・佐藤のところへ。小柄だが守備の良い佐藤だがいずれもはじいてしまう。強襲安打とも思ったがいずれもエラーが記録された。

Dscn7804 Rscn7808 ここで4番・岡下がレフトへきれいな弾道の3ランを放つ。これで一気に4対2と石川が逆転する。でもまだ、2点差なら試合はわからない。前の席に座っていたおじさんたちの情報では、この時点で富山が信濃をリードしており、今日の優勝は厳しいのではないかということだったが・・・。

藤井は6回は何とか後続を断ち、続く7回にも登板したが3連打でさらに1点を失う。2人のランナーを残して松田に交代。

Dscn7819 ただこの投手のところで試合が壊れてしまった。島袋が2人のランナーを還すタイムリーを放ち、岡下には死球。二死からレフトフライで交代・・・と思ったところで、レフトの金森がポロリ。さらに続く谷口に2点二塁打・・・で、この回だけで6失点。10対2と、試合の行方が決まってしまった。さらに石川は8回にも4安打で3点を追加して、13対2となった。

これには前に陣取っていたおじさんたちも怒り心頭。ここまで何かと激励の野次を飛ばしていたのも我慢の限界のようで、全員が途中で帰ってしまった。途中、新聞記者がちょこちょこ話を聴きに来ていたのだが、「この展開を見て、嘆きのコメントをいただきたいのですが」という質問に、「もう言わんでもええでしょう。わしらがさっきから口々に言っていることをあんたが適当にまとめてくださいや。明日の新聞を見てみるから」と言い残して帰ってしまった。福井打線も6回に長谷川から代わった南、上條の前にランナーを出すも得点につながらない。

Dscn7827 Dscn7831 9回の表には、野茂英雄ばりのトルネード投法で投げる矢島が3人で片づけたが、最終回の裏は石川・ネイディングが無失点で試合終了。

Dscn7834 3時間半近くとなった試合は13対2で石川の圧勝。富山も信濃に勝利しており、この時点でともに残り1試合で富山が逆転首位に立ち、逆マジック1が点灯。福井が30日の石川戦に負けるか、7月1日に富山が神戸で行われるオリックス戦(!)に勝てば富山の前期地区優勝となる。拙ブログをご覧いただいているオリックス・バファローズファンもいらっしゃるかと思うが、オリックス、広島、巨人のNPB3球団はBCリーグとの交流試合を行っており、BCリーグ側から見ればこれも公式戦の扱いである。ということは、神戸サブ球場で富山の胴上げがあるのかもしれない。バファローズとしても複雑なところだろうなあ。

Dscn7838 帰りは少し駅での時間が空いたが、18時26分発の近鉄高速バスで若狭本郷を後にする。若狭の穏やかな海というのがよく、この先に原発があるというのはなかなか実感できない。今回はその関連の施設や、水上勉に関する資料館「若州一滴文庫」といったところに行くことはできなかったが、今の若狭というのを見るに原発は不可欠。いずれそういうところも観てみたいものである・・・。

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