まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

BCリーグ前期は新潟と富山が優勝

2008年07月14日 | プロ野球(独立リーグほか)

先の記事で、BCリーグの新潟アルビレックスBCと富山サンダーバーズという、それぞれの地区の優勝マジック1のチーム同士の試合の結果、どのような光景が見られるのかということを書いた。結果は、12日の新潟対富山戦で新潟が勝利し、まずは新潟が胴上げ。敗れた富山のマジック対象の石川が勝利したため、この日の胴上げは新潟のみ。そして翌日13日の富山対新潟戦で富山が勝利し、前期最終戦で富山の胴上げ・・・ということになった。結果を見れば、1日のズレはあるものの、それぞれのホームゲームで優勝を決めることができたのだから、興行としてもファンとしてもよかったのではないだろうか(結果が同じでも勝敗がこの両日で逆だったら、何とも盛り上がらないことになっただろう・・・)。

P7121977そんな中、「2つのチームが同じ球場で胴上げということになればどうなるのか」ということから、12日に、糸魚川は美山球場に現れる。糸魚川の市街地から上がった丘の上の美山公園の一角にある球場で、園内には糸魚川で採ることのできるヒスイや、ここから伸びるフォッサマグナについて扱った「フォッサマグナミュージアム」というのがある。ミュージアムには以前一度来たことがあり、その時に園内に野球場や陸上競技のグラウンドがあったのは覚えているが、それがプロ野球の公式戦、それも優勝決定試合の舞台になるとは。

開場には時間があったので先にミュージアムでヒスイの展示などを見学した後、再び球場に現れる。中堅120m、両翼92m(外野フェンスも低い)という、一見すれば地方の町のグラウンドにしか見えない球場。設備も簡素なものでロッカールームなどもなく、選手はスタンドの陰で着替えをするというほど。入場した時はちょうど富山の打撃練習中で、野原、草島といった富山の強力クリーンアップが次々に打球をスタンドに放り込んでいた。

ただこの球場、実はBCリーグにとっては重い意味を持つ球場である。

P7122008BCリーグで「MIKITO AED PROJECT」というのをやっている。「MIKITO」というのは、新潟の野球少年だった故・水島樹人(みきと)君のことで、彼は2年前の夏、野球の試合前に急性心不全で倒れ、そのまま帰らぬ人となった。彼は生前、「新潟にプロ野球のチームがあればいいのに」と言っていたとかで、BCリーグ立ち上げの話が広がる中で彼のお母さんが事務局あてに記した「ぜひ、息子の夢を叶えてあげてください」という手紙が、リーグ設立の大きな励みになったという。

P7122003BCリーグでは、樹人君の思いを無駄にしないことと、野球を通じての地域貢献の一環として、AED普及のためのプロジェクトを立ち上げ、オリジナルのリストバンドなどの販売収益や、スポンサーからの寄付金をAEDの購入資金にあて、スポーツ施設に寄付するということをやっている。漠然とした募金というのではなく、試合前には場内放送や選手あいさつなどで協力の呼びかけが行われており、実績もあがっている(というか、最近あちこちで目にするAEDも、1台30万円くらいするとかで、そうおいそれと設置できるものではないとか)。

実はこの美山球場というのが、樹人君の悲劇の行われた舞台(彼は糸魚川の少年野球の選手だったんですね)であり、亡くなった7月9日に近いということで「追悼試合」の意味もあり、この日に試合が組まれていた。それが、ここに来て新潟と富山の優勝決定試合ということになったのだから、地元ファンの期待は大きい。一方、昨年優勝を逃した富山からも大勢のファンが詰め掛けており、もともと2000人くらいの収容人数の内野スタンドが試合開始時にはほぼ満席となり、急遽外野の芝生席も開放することに。また、外野スタンドの後ろにある美山公園の丘に陣取ってタダで見物を決め込む人も多い。

試合前には地元消防隊と新潟の選手によるAED使用のデモンストレーションや、樹人君のお母さんによるあいさつなどが行われた。

P7122012さて試合は、新潟の先発が左サイドハンドの中山、富山が生出の先発。それぞれの優勝がかかっているということで、序盤から熱のこもった投球を見せる。両チームともランナーはそこそこ出るものの、バックが好守備を見せたり、投手が三振に切って取ったり(見逃し三振に打ち取ったときの、主審・古堅の派手はアクションを見ても気合が入っているなと思った)、締まった試合。やはり優勝を目指すチームは違う。特に、ストレートとチェンジアップの組み立てがよかった中山が三振を奪うたびに、バックネット裏で観戦の私も「ほうっ!」とうなるしかない。

投手戦で0対0のまま6回裏。新潟が末次と根鈴の安打で1死1・2塁のチャンスを作る。これまで好投を続けた生出だが、次の阿部の時に暴投、1死2・3塁となる。これで阿部を敬遠し、マウンドを2番手の田中に譲る。打者は新潟の7番・稲葉。

P7122048その稲葉が振り切った打球は、最初はヒット間違いなしと思ったのだがそのまま伸びてライトの芝生席へ。最初は「先制ヒットだ!」という感じで走りながらガッツポーズしていた稲葉も、スタンドインに自分でもびっくりした様子でグラウンドを一周する。満塁本塁打で一気に4対0となり、新潟のファンも優勝を確信した様子だった。

これで完全に試合の流れは新潟に傾き、7回こそランナーを出すものの、中山がそのまま好投を続ける。そして最後の打者をキャッチャーフライに打ち取り、4対0でゲームセット。

P7122067P7122072P7122074 試合終了と同時に、ベンチ前から新潟の選手がマウンドに駆け寄り、抱き合って雄たけびをあげる。そしてやってきた芦沢監督を3回胴上げ。2000人足らずの観客ではあるが、スタンドが埋まっていることもあり、ファンの歓声も大きなものだった。・・・いや、優勝が決まった後の胴上げというもの、テレビで見るよりも実際にナマで目にしてみると全然違いますな。それにしても、昨年は勝率が3割にも満たない弱小チームだったのが、今年は監督はじめ選手を大幅に入れ替えた結果、常に優勝争いの先頭を行くチームになったのだから、さすがは芦沢監督の手腕というのも大きなものがある。

P7122098試合終了後には、BCリーグの村山代表から前期優勝の記念盾が芦沢監督に贈呈。その後、球団からのはからいで、監督・選手と一緒にグラウンドで記念撮影というのがあった。これは観客誰でもグラウンドに降りることができるもので、「サポーター」ではない私もせっかく来たのだからと、グラウンドに降りてみる。

P7122112やはり、スタンドからの眺めとは全然違い、スタンドから「見られている」というように感じる。美山球場のような小さな球場ですらそうなのだから、これがNPBの大きなスタンドだと、観客からの視線というのはいやでもプレッシャーになるだろう。記念撮影の立ち位置を決めるのに時間がかかったが、ジェット風船を飛ばす瞬間も含めての撮影も無事終了。ところで、この写真はどこかに掲載されるのかな??

P7122088グラウンドで選手とファンが盛り上がっている間に、富山ナインは早々と球場を後にしていた。富山が敗れても石川が敗れたら・・・?ということも想像していたが、やはりここは新潟のホーム。ましてや敗れたのだから、とそのあたりはいさぎよかったように思えた。まあ、マジック対象チームが敗れての優勝よりは、自分たちが勝って決めたほうが喜びも多いだろう(事実、翌日の試合でその通りになった)。

P7122115これでBCリーグ前期は終了、26日からは後期が開幕する。新潟・富山の安定した試合は続くだろうが、最後まで優勝争いを展開した群馬・新潟、そして不本意な成績に終わった信濃・福井の巻き返しはあるか。また熱戦が繰り広げられることを楽しみにしたい・・・。

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