まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

新聞列車と北勢線~時刻表検定受験の旅・3

2006年11月23日 | 旅行記D・東海北陸

近鉄名古屋駅から宇治山田行きの急行を待つ。乗ったのは最後部の車両だが、横には新聞の束が積まれたワゴンが停まっている。ひょっとしてこれも一緒に乗るのか?

P1011706 折り返しの列車がやってきて乗客を降ろすと、先に後部の扉が開き、4、5人くらいの係員が新聞の束を次々と運び入れる。ドア横の通路や、一部は座席の上にも積み込む。その後に一般の乗客が乗るわけだが、空いている座席には座ってもよいとのこと。そのため、新聞と乗客が同居する妙な空間が出来上がった。

P1011707 新聞の行き先は沿線の宅配やら、一部は駅売りもあるようだ。ロットとしてはトラックで運ぶまでもないし、また定時制というところから、このように列車で運搬されているのだろう。いま、列車で貨物を運ぶといえばコンテナ、車扱含め専用列車によるが、こういう「貨客混載」も、鉄道輸送の原点といえば原点か。

そんな話を大和人さんとするうち、桑名着。ここで駅前のバスターミナルを抜け、今は三岐鉄道となった北勢線の西桑名行き。駅の東口にあって西桑名とはこれいかに。

P1011712  久しぶりに(三岐鉄道としては初めて)出会う北勢線。この線は線路幅が762mmと狭いいわゆる「ナローゲージ」ということで、全国的にも希少価値があるもの。ナローゲージというからには車両も小ぶりで、立って手を伸ばせば天井着くし、シートに腰掛けて足を伸ばせば、いかな短足の私でも向かいのシートに足が乗る。車体は三岐鉄道カラーの黄色だが、中には車体全面に広告の塗装を施したものも。

ほどよく空いた状態で出発。モーターを震わせ、一生懸命といった感じで走る。民家にほど近いところを走ったかと思えば、田園風景の中をのんびりと走る。なかなか、ローカル線に乗っているなと実感できる。

P1011714 大和人さんの解説によれば、駅の設備などには近鉄の面影を残しているところがあるが、自動改札機を設置したり、一部の駅を廃止する代わりに列車本数を増やしたり、あるいは駅の改築も積極的に行ったりと、新たな北勢線として積極的に取り組んでいるとのこと。昨今、地方私鉄の経営の厳しさがクローズアップされているが、何とか地域に根ざした鉄道を目指して、徹底的にケチるのではなく積極的な投資を行う。これが将来いつか実を結ぶことになるだろうか。鉄道ファンのほうばかり向いてアピールしている私鉄もあるが、やはり地元客に親しまれ、利用されるものでないとね・・・。

P1011716 終点の阿下喜着。以前来たときにはホーム1本きりの終着駅だったと思うが、広々とした島式2面のホームに生まれ変わっており、新しい駅舎も現在建設中。運転手が話し好きの方で、駅のことなどいろいろと教えてくれる。古い駅舎もなかなか味のある建物であるが、こちらは取り壊しになるとか。ただ、新しい駅舎も黒塗りのシックな感じの建物であり、こちらはこちらで人気が出るのではないだろうか。

P1011721 しばらく、駅前にある「阿下喜一部商店案内図」なるものを見る。しかし「一部」ってなんだろうな。全部ではなく一部という意味なのか、「一部」という集落名なのか、「一部」「二部」の一部・・・って、商店にJ1、J2のようなランク、いや阿下喜だからA1、A2とでもいうのか、謎である。

P1011725 大和人さんとその謎について話していたのだが、話だけしても仕方ないので、とりあえず駅前散策。坂を登ると、先ほどの一部商店図には記載のなかった立派な建物に出会う。よく見ると「阿下喜温泉 あじさいの里」とある。ふらりと来て温泉というのも面白いが、本格的入浴の代わりに、建物前にある無料の足湯へ。温度が3段階にわかれており、それぞれ入ってみたがやはり温度が高いほうが気持ちよかった。折り返しで乗るつもりだった列車の時間は過ぎたが、つい長居、いや長湯してしまった。

阿下喜駅に戻る途中の菓子屋さんに「軽便煎餅」なる幟が出ていたので、どんなものかと立ち寄る。するとバラ売りの板煎餅のほかにも、北勢線の車両をあしらったバッジなども売られており、これも購入。一緒にいただいた店主敬白には、

「雄大な鈴鹿の山並みと 四季おりおりの風景をはこびながら

春には、桜並木 夏は、きらきらひかる員弁川 秋にはまっかな紅葉たち 冬は、まっ白雪景色

一世紀に渡り走りつづける軽便鉄道 美しい日本の歩きたくなる五〇〇選にもえらばれています・・・」

P1011727 印象に残った北勢線訪問。「平成に残る軽便鉄道」として、また地域の足としてこれからも末永く活躍してもらいたいものである・・・。(続く)

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