テレビ画面で「京都の○○寺から紅葉の中継をお送りします」というシーンを見るようになった。今年は紅葉の進みが遅いようだが、ようやくその時季になってきたようだ。そういえば私もまだ今年は本格的な紅葉を見ていない。11月に入り、奥多摩に出かけたり、神宮外苑のいちょう通りを観に行ったりしたが、いずれもまだまだ木々は青々としていた。
11月最後の週末となった25日(土)、どこかに出かけようと地図やネットなどを見るうちに、秩父の長瀞の地名が目に飛び込んできた。長瀞には春に満開の桜を見物に出かけたが、さすが由緒ある名勝、秋の紅葉のスポットでもあるようである。ちょうど見ごろを迎えているということで、天気もよいことだし出かけることにした。
池袋から東武東上線に乗り、寄居でセメントを積んだ貨物列車を見て、秩父鉄道の三峰口行きの列車に乗り継ぐ。車内は紅葉見物や、「その筋」とおぼしき乗客で混雑していた(私もハタかれ見れば「その筋」の太い人・・ってなことになるのかな?)。沿線にも三脚を立てて陣取った「その筋」の人の姿を多く見かける。時間帯からして、そろそろ秩父鉄道自慢のSL「パレオエクスプレス」が通過する頃だろう。
観光客でごった返す長瀞駅着。秩父鉄道で来た人、観光バスでやってきた人。埼玉県内はもちろん、東京からおよそ2時間弱で自然あふれるポイントに来られるということで賑わっている。
駅前の土産物屋群を抜け、見物スポットの岩畳へ。荒川の河原に隆起した奇岩の上に立ち、対岸を見やる。すっかりと黄色くなった木々を見る。青い空、黄色い木々、そして荒川の穏やかな緑が実にいい関係だ。そこに上流から木舟が静かに下ってくる。また、カヌーを操って下ってくる人もいる。
前回の桜見物の時にはこのライン下りの船には乗らなかったが、今日は乗ってみよう。ちょうど岩畳のところが乗り場になっており、川を下り、帰りはバスで長瀞駅に戻るコースで1550円とある。団体の乗客も多いのだが、そちらは船を貸切利用するし、また一般用の船も次々に出ている。ちょうど待っていた船に乗り込む。
風が川下から吹いてくる。さすがにちょっと冷たい。そんな中、船の舳先と艫に船頭が一人ずつつき、舳先のほうが棹で川底をぐいっとやり、艫のほうが艪でアシストと、観光ガイドを行う。モーターは使わず、全て昔ながらのスタイル。ガイドの話では、今日は水かさが少なく、実に穏やかな流れとのこと。川も透き通っており、川底を泳ぐ魚の姿も見える。この荒川が下流に行くと隅田川になるのだが、とても同じ川とは思えない。
水かさが少ないとはいっても、岩のために流れが急になっているところもあり、そこは棹を使わず自然の流れに乗って速度を上げる。「横のビニールを上げてください」時折船がバウンドしたようになり、しぶきが飛び散る。水かさの多いときはもっと迫力あるだろうな。
水の流れもよいが、両岸に広がる紅葉の景色もなかなかのものである。
15分くらいの川下りを終える。乗客は出迎えのマイクロバスに乗って長瀞駅に戻るが、船は・・・?何とユニック車で川から吊り上げ、陸送して上流の川下りコースまで持って行き、またそこから岩畳まで乗客を乗せて下るのだとか。確かに、あの岩場を艪をこいで上るのは不可能である。
長瀞駅に戻り、ここからすぐに秩父鉄道の旅を続けてもいいのだが、「上長瀞のほうに紅葉のスポットがありますよ」と船頭さんに勧められていたこともあり、再び荒川の流れにそって今度は上流のほうへ歩く。20分ほど歩いたところにある「月の石もみじ公園」。
そこはちょうど今を盛りと、赤々とした景色が広がっていた。先ほどの川下りの時の紅葉もきれいだったが、やはり紅色の景色こそ、見る者をうならせる。
すっかり満足。その足で、上長瀞駅へ。ここから終点の三峰口に行くことにする・・・。