カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

赤毛のアン  anne of green gables-opening

2009-02-16 | 感涙記
anne of green gables-opening



 最初は高畑勲監督と宮崎駿が組んでつくられていたそうだが、途中で宮崎駿が「ルパン三世 カリオストロの城」の制作に入り降板する(投げ出したという話も聞く)。そのためか、このオープニング映像にあるような爆発する少女性というものは段々影が薄くなって、淡々と物語が紡がれるように変化していく。もちろん最初の頃からこの物語は素晴らしいのだけれど、原作に忠実につくられたという素直さが功を奏してゆき、圧倒的な感動作となってゆく。原作をまったく知らないものにも、なんとなく物語は予想させられるところがあるのだが、前半のコミカルな味から後半までの成長したアンの姿を見る頃には、毎回涙が勝手に流れてどうしようもなくなってしまうのだった。もう僕などは思い出すだけでダメなクチで、「赤毛のアン」という単語だけでも、胸がジーンとくるぐらいである。
 この気が強くて賢いアン・シャーリーという女の子が素晴らしいということが、何よりこの作品の基本ではあるにせよ、しかしむしろ、その成長を見守るマリラとマシュウという不思議な老兄妹の姿が物語を観ているものに大きな感動を与えるのだと思う。
 この二人は、今でいう協調性の欠けた変人ともいえる人間なのだが、そのためかグリーンケーブルズという土地に兄妹とも独身のまま二人で住んでいる。この土地は大きな農場になっており、働き手として、そして恐らくこの土地の将来の担い手として、男の子の孤児を引き取ろうということになる。しかし何かの手違いにより(そんな重要なことなのに自分の目で確かめにいかなったということが不思議だが、しかしそれではこの物語が成り立たない)やってきたのは11歳の女の子だった。それもかなり口が達者で偏屈な。
 この二人は間違えてやってきた女の子に翻弄されて困惑するばかりなのだが、しかしそのことで本当の人間性(何がほんとなのかは僕にも分らないが)というものを取り戻してゆき、アンを通して人間のしあわせを掴んでゆくという物語なのである。
 僕は少女時代を送った経験がないないし(当たり前だ)、監督の高畑にしてもアンの心情が理解できないと言っていたというエピソードもあるくらいで、この女の子の考え方はほとんど驚異の世界なのだけれど、しかし、少女という存在のリアリティが感じられるのも確かで、驚きながらも感心しながら観ていた。おそらく原作のモンゴメリの少女時代の考え方もふんだんに投影されていることだろうが、ただの作り物のハリボテものでは決して醸し出されるはずのない、真実の物語がそこには広がっているように感じられるのだ。
 少女は段々と成長していき、宿敵ともいえるギルバートと恋に落ちるのだが、この必然さもかなり強情でありながら無理のあるものでもなく、またマリラの過去にギルバートの父親と何かあったらしいことも示唆され、運命として申し分のないラブストーリーなのである。いわゆるロマンチックじゃないのだけれど、皆が納得し、望んでいることなのだ。
 物語そのものは、そのようなそれこそ皆が望んでいるとおりに運ばれていくかに見える。しかしそのような感想は、物語にからめとられた者がいつの間にかそう思わされて望まずにいられなくなるからこそ、そうなってしまうのである。僕は詩の朗読などに感激するような環境はまったく理解できないまま、アンのことが本当に誇らしく、マリラとマシュウのしあわせが手に取るように伝わってくるのだった。
実は既に涙を拭きながらこれを書いている状態になっていて、観なくても泣けるというほどすごい作品であるという証明であろうと思っている。もちろんこれを観た人には当たり前すぎて、いまさら何を言っているということなのかもしれない。
 このアニメは子供が観てもおそらく本当の意味は分からないのではないかと思う。もちろん子供が観て面白くないわけではないのだが、子供の成長を見て大人が本当に人間的に成長するように、アンを取り巻く物語の力と真実は、大人の鑑賞眼でなければ読み取ることが難しいのではないだろうか。赤毛のアンは、少年少女のために紡がれた物語ではなく、人間のしあわせを追求した真実の物語なのだと思う。
コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 僕が罪人だったころ | トップ | 酒と距離ができて思うこと »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (takatosi)
2009-02-17 11:23:14
お、埋め込み成功ですね

禁酒ですか、お疲れ様です
最近私も休肝日を頑張ってますが翌日が楽ですよねー

でもタバコはやめましたが、酒は無理かなー
返信する
自分と違う自分の発見です (korin310)
2009-02-17 17:59:58
ご指導ありがとうございました。二つ以上とか煩わしいですが、ま、ぼちぼちやっていきます。
酒のほうは発作中はとても飲める状態じゃなかったというのが正直なところで、なんとなく数日クリアできちゃったという感じです。後はせっかくだから続けてみようかという欲ですね。
飲んでもやっていたことにしろ、気分的に時間がたっぷりあって、映画観たり読書したり、痛みに苦しみながらいろいろ楽しめたのでした。先のことはわかりませんが、人が集まらなければ飲まないでも大丈夫かもしれません。こんな日が来るなんて自分でも不思議であります。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。