教誨師/佐向大監督
大杉連主演。いわゆる遺作として話題になった作品。受刑者(死刑囚)と対話し、道徳的な説教をするような職業であるらしい。映画ではキリスト教の立場であるようだ。もともとキリスト教の信者というより、受刑後宗教に入った人に対峙してお話をするという役割らしく、そういう対話の場面が延々と続く。場面がほとんど動かないので、演劇のような感じもする。いわゆる演技合戦を中心とした演出なのかもしれない。
しかしながら、途中から少し異質な感じに変化する。対話している受刑者に、ひねくれ具合が著しく偏った理屈をこねる人間が混ざる。ふつうに話ができていた人に、妙なひずみが生じだす。そうしてこの教誨師自体の過去に、大きな深い闇のようなものがあることが明らかにされる。幽霊も出てくる。
個人的には、この映画を見る以前から、当然のように分かり切っているテーマではある。これが分かりにくいと思っている人限定で描いている世界観かもしれない。それが悪いとは言わないが、要するに今の人間社会の罪の罰し方というのは、偽善が含まれているのは当然のことで、死刑というのは代理で復讐していることと、そう変わりはない。社会がそのような死をもっての復讐を認めている訳で、そこに何らかの齟齬がみられるのは、当然のことなのではないか。そうしてそれが文化ということなのかもしれないし、人間の持っている原罪というものなのかもしれない。
面白い映画ではないかもしれないが、大杉の遺作としては、何か思索的なものを感じさせられるかもしれない。