高校生デビュー/英勉監督
中学生時代はソフトボールに一筋に打ち込んでいた晴菜だったが、高校生になったら恋に生きると決めていた。自分なりに勉強して高校生らしい(いけてる)格好をしてナンパされるように噴水の前に立ち続けるが、半年間空振りし続ける。そこで脱げた靴を拾ってくれたイケメン君と出会う。それが同じ高校の先輩(かわいいクラスメイトの兄)だと分かり、恋する女子高生になれるよう、コーチしてくれるように頼む。最初はもちろん断られていたが、過去に女性関係で大きな心の傷があるらしいヨウ君は、絶対に自分に恋をしないという条件で、結局コーチを引き受けてくれることになるのだった。
2011年の作品で、出ているキャストが何だかみんな可愛らしい。要するに今も活躍している人が多いみたいで、当時のそれなりのアイドル路線の映画だったのだろう。失礼ながらヒロインの女性だけは僕はよく知らないのだが、観たことが無いわけでは無さそうだ(大野いと)。ローティーン向けの映画だと思われるが、行き過ぎたデフォルメと恥ずかしい演技が延々と続くので、忍耐の必要な人が多い映画かもしれない。
いわゆる天然のイケてない女の子が、なりふり構わず行動して、その健気さにほだされて、結局ものすごくイケメンで優秀な男子が心を動かされるというファンタジーの世界を満喫するための映画である。これはもう、少女漫画の世界では、ものすごいループでもって展開されてきた世界観なのだが、改めてその偉大なるマンネリを見てみて、さすがにさらに考えさせられることになる。それは他でもなく、自分の母親にもこのような世界観があるような気がする、というか、そういう価値観のようなものが、彼女の行動を左右しているように思えるからだ。これは僕が選んで(なぜ選んだかというのはすでに忘れていることだが)借りた筈の映画だが、自分の恋のお勉強をするために観ているというか、ふつうにこういう娯楽が好きだから観ているわけだが、しかしこれほど露骨にお話が展開されていると、かえって退屈になっていろいろ考えざるを得ない。そうして気づいてしまったのは、まったく母に似つきもしない若い女の子の言動に、母親の言動が被ることに気づいたのだ。ちょっとのけぞってしまうような感覚はあるが、事実そうなのだから仕方がないじゃないか。
もう少し解説が必要なことは分かるのだが、要するに女性にはいつまでも少女性というか、自分なりの望ましい価値観のようなものがあって、それがたぶんこのような「天然の私」なのではなかろうか、というわけだ。しかしこれは理想なので、実際の自分と乖離があっても全然本人は気づいていないのである。まったく平和である。
というわけで、ちょっとしたトラウマ映画になりそうなので、誰も見ないでください。
追伸:よく考えてみると池田エライザが出ているらしいと、観ているときにつれあいが言っていたのだが、どこで出ていたのか、最後まで分からなかった。しかし考えてみると、これを借りた動機は、池田エライザだったはずなのだ! もう返却しちゃったよ、まったく。