東京タワー オカンとボクと、時々、オトン(劇場版)/松岡錠司監督
オダギリジョーと樹木希林版。先にも書いたがこの映画目当てでドラマ版も観てしまったに過ぎない。ドラマは、まあ、そうだな、という出来栄えだったし、広末の立場も良く分からなかったが、劇場版の方は視点がかなり東京寄りになっていて、オトンもそこまで変人じゃないし、恋人役の立ち位置もなんとなく違っていた。結婚しない理由はどちらも良く分からないけど、別にマザコンだからしない訳でもないだろう。かなり情緒的なお話ではあるが、さすがに樹木希林はとぼけた味があって、悲壮な感じとのコントラストが素晴らしい。オカンの若い頃を樹木希林と内田裕也との間の娘である内田也哉子がやっていて、母娘だから当然似ていて自然である。またどうしてもこの芸能一家の私生活とも設定がダブっていて、観ていて感慨深い思いがする。このキャストの設定だけでも、この映画は成功していると言っていいのかもしれない。
原作者の才人であるリリー・フランキーのことを詳しく知っている訳では無いが、やはり実際の人物はテレビなどで見るのでなんとなくは分かる。少なくともオダギリジョーとはかなり違うキャラクターではあるけれど、文才もあり絵心もあり、個性派俳優としても素晴らしい。またオタク的な抽斗の多さもあって、なんとなく憎めないいい人(いいかどうかはよく分からないまでも)なのである。そういう興味もあってこの私小説的な物語を楽しめるという事もある。若いころの自堕落すぎる時代は僕にはよく分からないが(特に借金については)、だから母親とのスペシャルな関係があるらしいというのは、理解できる。親は苦しめられるが、ある意味でその期待に応えた子供なのかもしれない。
確かに僕には少し情緒的過ぎるお話ではあるのだが、そういう特殊な親子関係があって、現在の自分があるという事なのだろう。しかし、普通のこともあるが、やはり実際は特殊である。普通過ぎると面白くないので、そうでは無い体験こそ私小説として生きている物語なのであろう。