映画のロッキーでシルベスター・スタローンが、生卵を何個も割ってコップで飲むシーンがある。この影響は非常に大きくて、マネする人が続出した(たぶん)。僕ら子供も当然真似をして、世界中の卵の消費量が爆発的に伸びた(ウソ)。
もともと日本人は生卵を飲む習慣はあったし、僕の友人はオロナミンCをコップに入れて生卵と溶いて飲んでいた。風邪をひいたら玉子酒(あれは厳密には生ではないが)を飲むし、卵で元気になるというのは、いわば常識だろう。ラーメンにもうどんにもちゃんぽんにもカレーにも、みんな生卵を落として食べる。すき焼きに生卵が無ければ、何か悲しい食べ物になってしまう。卵一個で50円も百円も取られることがあるけど(もとは20円弱だろう)、みんなその卵のおかげでリッチでおいしく食事ができる。そうしてたぶん、力もつくような気もする。
そう思って生きてきたのに、中国留学中に、中国人が生卵を食べる習慣が無いことに驚いた。さらに驚いたのは、一緒に留学していた諸外国(フィリピンやタイなど)の人々も、生では卵は食べないと言っていた。日本人はクレイジーだからそんなことをすると思われていた。日本は衛生状態がいいんだよ、と説明してもダメだった。何しろ日本は卵輸入してるんだろ、って言われた(確かにそうでもあるらしい)。
ところがある本を読んでいたら、大学に留学している中国人が、日本の卵が安いので喜んでたくさん買う、という話があった。その子は女性なのだが、家にいておやつで、いつの間にか卵をいくつも割って食べてしまう(もちろん生で)というのだ。二十個くらい空になるときがあるという。
昭和のいつの時代なのかはよくわからないのだが、卵が物価の優等生というような意味合いでの文章だったと思われる。
ロッキーより凄い中国の留学生のグーニャン。もちろん、元気に勉強したんであろう(おそらく東大生)。