検察側の罪人/原田眞人監督
検察内部のドラマ。金貸しの老夫婦の殺人事件の被疑者に、過去に未解決のまま時効を迎えた事件でも疑わしかった松倉という男が浮かび上がる。その過去の事件とかかわりのありそうな上司である最上は、執拗にこの男を追い込もうとする。部下の沖野は、先輩の最上を慕いながらも、その捜査方針に疑問を募らせていくのだった…。
キムタクと二宮という二人に、注目の集まった作品のようだ。正直な感想から言うと、二宮の勝ちという感じだが、両方のファンもそれなりに楽しめる演技合戦ではなかろうか。キムタクは、これまでのかっこいいだけの役ではなく、かなりダークな側面を持つ人物だったたけに、それなりに難しいとも言えたし、二宮はオーバーアクト気味だったけど、やっぱり上手いな、という貫禄があった。ちょっと複雑すぎるプロットだったたけに、内容よりこの二人を観るということで、満足感は違うかもしれない。
展開は重層的で、なおかつ冤罪がなぜ起こるのかという重要な背景もよくわかる。こういう組織に私情が挟まると、ものすごく恐ろしいことになることが見て取れる。さらにどんどん皮肉な展開になっていき、最終的には大きく踏み外す人間の心情が見事に描かれている。
ネタバレの要素があるので言えないが、闇組織の動きがやや漫画的な印象があった。リアルなドラマなのに、ちょっと超人的な仕組みではなかろうか。ちょっとネットでググってみると、小説とは結末が違うらしい。まあ、そうだろうなと思うが、映画的なカタルシスの為に、監督がそういう物語に変更したのだろう。
そういう意味では、妙な後味を残す映画ではある。これでいいという話では無いが、政治的な意見は、この映画には必要ないと思う。悪い奴だから死んでもいいという話でもないはずだ。そういう心情は分からないではないが、正義ほどたちの悪い思い込みは無い。二宮演じる愚直な正直さの葛藤の在り方で、何とか物語は持ちこたえる。そういう危ういバランス感で成り立った、なかなかに面白い映画であった。