愛と悲しみの果て/シドニー・ポラック監督
裕福だが未婚のカレンは、金のない男爵で友人のブロアに結婚を持ちかける。この便宜上の結婚で心機一転し、アフリカで農場経営に乗り出そうという計画なのである(彼女はデンマーク人)。そうして実際に東アフリカに渡り先に準備していたブロアのところまで行くと、彼は彼女のお金を使って、コーヒー農園の開拓に手を出していた。アフリカに渡っている主に英国を中心とする白人社会の連中との付き合いもあるが、彼女は現地の黒人たちを使って、まだコーヒーの木が育っていないコーヒー農園とともに、酪農事業も軌道に乗せようとする。便宜上の結婚であったが、ブロアの良いところにも気づき愛するようになっているのだったが、しかしブロアは浮気性で、いつも家を空ける生活が続いていく。そんな中、現地で出会った白人のハンター(象牙などを売るのだろう)のデニスと恋に落ちていくのだった……。
数々の賞を受賞した名作映画とされている。第一次大戦前後の時代背景と、欧州人のアフリカにおける植民地開拓という実情も描き出した点が、当時の高い評価につながっていたのかもしれない。今となっては差別的なところに平気なので(それが歴史というものだから、僕は批判しているわけではない)、かなり貴重な映画的な演出だと思われる。主演のメリル・ストリープとロバート・レッドフォードが、中年なりに若く素晴らしい演技をしている点も、この映画の魅力である。実際は浮気なのだが、正当に何の良心の呵責もない。夫のブロアはデニスの友人でもあるのだが、何の断りもなくこんなことをしたと非難されても平気で、「(お前には断らなかったが)彼女には断りを入れた」と開き直るのである。まあこの二人寄りの話なので、それでいいのだが……。
実際には西洋の植民地主義によるアフリカ大陸の侵略を背景にしているが、アフリカの自然の美しさと、そうして西洋人が彼らよりの教育などの文化も伝播した功績のようなことも表現していて、これも現代ではとても正当化できない演出である。ハンターにしても象牙や貴重な野生動物を殺しまくったことで得た利益であり、現代ではとても肯定できない犯罪行為である。しかし彼らはアフリカ大陸から奪えるだけのもの奪い、自分らの享楽の糧にしてしまった。そうしてこのような美しい映画までこしらえてしまえるほど、無邪気で罪深いのである。
でもまあ、ライオンに襲われそうになったり、突然飛行機乗りになったり、スリルもあり冒険も楽しい。もちろん恋愛劇もいいし、悲しい物語も余韻を残すものである。あんまり現代人の上から目線で観ないことにすると、やはりこれは名画のままなのかもしれない。