娘がいたらどうだったかな、と思うことがある。結果としていないのだから考えても仕方ないことだが、もしもという話で、ふと思うということだ。いて欲しかったとかそういうことはあまり考えない。そんなことは僕には分らない。
小さいころは可愛くて楽しかったかもしれないとは思う。将来お父さんのお嫁さんになりたい、などと言われたら、死んでしまうかもしれない。そういう気分というのはあるかもしれない。将来娘がお婿さんを連れてきて、会わないとか駄々をこねるとか、なかなか楽しそうにも思う。
しかしである。実は娘がいなくて良かったと思うことの方が多い。娘が年頃になって、お父さん臭い、などと言われるに決まっていると思う。あっち行けとか、妻と一緒になって僕を非難するに違いないと思うのだ。音を立てて食べるなとか、行儀よくしろとか、ひとの話をちゃんと聞けとか、とにかくいろいろ言われたのではないか。そういう日々が続いて、心が折れそうになったのではないか。
とにかく僕には娘がいない。そうしてそれなりに平穏な日々を送ることが許されている。そういうのって、しあわせのうちに入るのだろうか。