ザ・ゲスト/アダム・ウィンガード監督
イラクで戦死した息子の親友という帰還兵の青年が訪ねてくる。息子は生前家族それぞれを深く愛していたということを伝えたくて来たらしい。好青年だと感じた母は、そのまま空いている息子の部屋にこの青年を招き入れる。かの家族には、なんとなくそれぞれに問題を抱えていて、娘の恋人はジャンキーでまともに働かず、息子は勉強はできるがいじめられている。父は出世を阻まれ、ふてくされて家では酒を飲んでいる。この帰還兵は、それぞれの問題に寄り添うように理解を示しているように見えるのだったが…。
演出的に最初から不穏な空気が流れており、帰還兵に問題がありそうなことはすぐに見て取れる。しかしながらそれが、何の目的があるのかは明かされない。家族の問題を、ある意味で強烈な暴力をもって解決してくれる。当初から逸脱が激しいので、もっと大きな問題になることは見て取れる。そうしてそれは、大きな国家機密にもつながっているのかもしれない。
荒唐無稽なアクションホラーなのだが、面白くないわけではない。帰還兵が超人的な能力を持っているのは間違いないが、しかしどんな問題解決の方法があるのだろう。謎解きでありながら、演繹法的でもある。ちょっと行き過ぎもあるけれど、一定の緊張感は持続する。勧善懲悪的なカタルシスがありながら、しかし行き過ぎが暗い影となって付きまとう感じである。こういう娯楽もあるんだな、というB級感もいいかもしれない。まあ、意見は分かれるだろうけれど。
閉塞した家族のそれぞれの問題は解決していくのだが、そのための代償が大きすぎる。潜在的な願いが叶うことで、何もかも失っていくのである。そういったことに何か示唆的なものを感じないではないが、まあ、実際は教訓的な意味合いを見出す人も少ないことだろう。結局みんな自立しろよ、という話なのかもしれない。