カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

政治家のカッコいい珍しい映画   シン・ゴジラ

2017-11-11 | 映画

シン・ゴジラ/庵野秀明・樋口真嗣監督

 もともと前評判も高く、実際に大ヒットしたが、同時期にダークホースだったはずの存在の「君の名は。」が恐るべき次元の記録的なヒットを飛ばしてしまい、その陰に隠れてしまったような印象を受けた。もちろんそれでも十分に売れて、話題として聞かない訳では無かったが。結局DVDで観たという僕のスタンスは、そういう背景的な理由である。
 東京湾で謎の水蒸気があがり、地下を通っているアクアラインの崩落があったりの事故が起こる。安全確保のために航空機は全面運休させ、原因を探ることになる。海底の火山噴火など考えられる災害候補は上がるが、なかなか絞り込めない。そんな中生命らしき映像が飛び込んできて、なんだあれは? という事になっても、巨大生物というありえない状況がなかなか受け入れられない政府の対応の姿を映しだしていく。
 何もできずに傍観している政府の危機対策中枢だったが、この謎の巨大生物は東京湾から多摩川河口を遡上、蒲田方面へどんどん登って移動していくのだった。この時点では水生生物が上陸する(その巨大さからいって、重力に逆らって起立できるなどと言う物理的なことが可能かどうかも不明である)のかは客観的には不可能とみられていたが、品川あたりで動きを止めた巨大生物は立ち上がって体を変形させ巨大化していく。いわゆる何らかの影響で、自ら進化する生き物であるようなのだった。
 やっと政府は自衛隊に出動要請を出して「駆除」をする選択をする。ヘリコプターから攻撃する段になって、逃げ遅れの市民の姿が確認され、命令を下す首相はこれに躊躇してしまい、結局撃てない。しかし何故か巨大生物は蛇行に戻り東京湾に引き返してしまうのだった。
 既に街は破壊され、数百という単位で人的な被害が出た模様。復旧はもちろんだが、国連はじめ各国から対策が持ち上がってくる。いまだに属国日本という立場が改めて浮き彫りにされて、日本側の対応に不審も見られるようだ。そんな中、今度は鎌倉沖からゴジラの第二の遡上が始まったのだった。さらに今度の上陸では、巨大に進化しているのはもちろん、歩行しながら東京をひたすら目指しているのだ。
 多くの人が紹介している通り、凄まじいアクションシーンもふんだんにありながら、その進行のほとんどすべてが、会議などの話し合いの場で物事が決められていく手順が描かれていく。何という面倒なことかと思う訳だが、これが日本という法治国家の物事を考える手順そのものであるという事なのかもしれない。超法規的に素早く動かなければ大変なことになることは理解しながらも、また、自分の利権などの迷いや保身だけを考えている訳でもなく、それでも重大なことをトップが安易に決めらない姿が、延々と続いていく。何しろ指針となる前例がない。基本的に戦争をやらなければならない状況下で、被害も受けながらであっても、武力を使う躊躇を、これでもか、というくらい描いていく。妙にリアリティがある上に、しかし政治家たちは、あんがい皆それなりに有力である。本来の政治家と比較してどうなのかと考えていると、国の中枢は、中盤あっさり皆死んでしまうのだが…。
 その後の日本の若い政治家たちは、素晴らしすぎる。これが本当に日本人なのか。アメリカ人の方にも疑い深い人が居ないでは無かったが、基本的には優れた判断力と情熱を併せ持った素晴らしい人たちが、コジラに対峙して全力を尽くすという話に展開してく。国連は再度原爆を東京に落とすという決定を下しており、その投下する時期へのタイムリミットはわずかだ。ゴジラが自らのエネルギーを補填して活動期に入るその直近までに、日本独自のゴジラの血液凍結作戦を実施しなければならない。国際世論で世界中のコネを使い時間を稼ぎ、日本の持てる力のすべてを、この作戦に集中させることになるのだった。
 これを観て政治家を目指すような純粋な人が増えるといいな、と思う。今の政治家の多くも、最初はこのような国難に立ち向かうような気位もあったことだろうとは思う。特に近年は、日本は震災という国難を体験した。いわば復興もという大義を背負った時である(途上であるのは、今も変わらないのではないか)。そうではあるが、この期に及んでも、何か手をこまねいているような人々がいるようにも感じられる。政治家だけが良くても何もならないのかもしれないが、少なくともこれから先のことを語るべき人が出て来てきてもいいように思う。ゴジラを通してこの映画に流れる主張は、そういう情熱なのだと思う。さらに独立国家としての日本とは何か。日本はいつまで戦後なのか。ゴジラの求める日本観は、きわめて辛辣な皮肉なのかもしれない。
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