宇宙でいちばんあかるい屋根/藤井道人監督
原作小説があるらしい(未読)。書道教室の屋上は、つばめのひみつの憩いの場だったが、ある日そこにみすぼらしいおばあちゃんが先客でいて、このばあちゃんが空を飛べるのを目撃して驚いてしまう。見た目はホームレスだが、ちょっと不思議な感じのばあちゃんのおかげで、つばめは自主性の無い中学生から、少しずつ自分の意思を出せる人間になっていくのだった。
つばめは隣に住む年上の亨君に密かに恋心を抱いているが、亨のうちのお姉さんは働かない彼氏に騙されて付き合っている様子だ。つばめの家では二番目のお母さんが妊娠している。つばめは幼いころに自分を捨てて家出した母親のことが気になっている。彼女はどうも水彩画家として名を馳せている様子なのだが……。
群像劇とまではいかないが、それぞれが心になんとなくのわだかまりを抱えている。中学生の人間関係の狭さもあるが、お互いのことを知っているようで、ちゃんと向き合うことがそれぞれ苦手にしている感じだ。しかしながら物語は非常にスローに鈍く展開し、普段会話はそれなりに汚い言葉遣いを連発するが、向き合う場面では言っていることがはっきりしない。そういう話だということなのかもしれないが、ちょっと消化不良かもしれない。
いわゆるファンタジーなのかもしれないが、そういう説明はあまりなく、結果として不思議なことを成し遂げるおばあちゃんがいる、ということなのだろうか。えんじ色の屋根の家におばあちゃんの探している孫が住んでいるということが分かるが、それが何故わかっているのかは、あくまで謎だ。そうして事故で足に怪我をした亨君とその家を探す。設定として面白そうな雰囲気はあるものの、何か詰めが甘いような、そういう印象も受ける。おばあちゃんとの会話も、含蓄がありそうで、しかし本当に意味のあることなんだろうか。
ある意味でお話の展開は分かるけれど、それが本当にどうなったかまでは、実のところよく分からない。それでいいという話であろうけど、やはり消化不良になるのはそのためだろう。いろんなものを抱えて苦しんでいる十代の考えというのは、そういう世界観の中にあるということなのだろうか。