カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

人間の真実の残酷さを見る  カバチタレ!

2014-03-30 | 読書

カバチタレ!/原作田島隆・漫画東風孝広著(講談社)

 広島弁でいろいろ理屈をこねることを「カバチタレる」というらしい。理屈をこねるだけではどうにもならない訳だが、その理屈の根拠になっているのが法律にあるとすると話はまったく違ってくる。喧嘩というのは腕力が強ければそれはそれで大変に有利であるけれど、大人の社会においては法律をもってする以上に強いものは無いということが、この漫画を読めば一目瞭然なのである。もちろんそれは法治国家という国の成り立ちの根幹を支えるものである以上、実に当り前にゆるぎないものなのだが、どの場合にどのような法律を知っているかということで、人生を変えるような大きな喧嘩に勝つことが出来る。単なる机上の空論で無い恐ろしい理屈の世界を知ることになるのである。
 漫画なのでデフォルメはある。それは絵柄に限らずといえそうだが、この比較的下品な絵柄とは裏腹に、あんがいこれは実話なのではなかろうかというリアルな迫力のある内容も多いのである。法を利用してあくどいことをする輩も多いし、労使関係のトラブルも、どこかで聞いたことがあるようなものもある。残された遺産をめぐって家族がもめる話などもあり、えげつないが実にありえそうな話ばかりだ。実のところ人間というのは欲の営みを送っている生き物なのかもしれない。前近代的な人身売買まがいの行為も、金をめぐるトラブルにおいては本当にリアルに響いてくる。壮絶に残酷だが、それが人間の営みの根拠にある法律の解釈しだいなのである。
 考えてみるとお金というのは、現物よりも架空の力のほうが強い気がする。札束といっても、つまるところそれは紙である。ところが人間は、これを信用して動く習性を持っている。犬や猫やサルだって、この金でどうこうするようなことは皆無だろうが、人間だけはこの紙の力の前に屈服してしまうのだ。なんとも滑稽にも思える反面、非常に悲しい習性に思えてならない。しかしこの紙を否定すれば、人間生活には支障をきたす。いっそのことこれを拒否する生き方を選択すると、金による恩恵も受けない代わりに、人間としては何も手出しをすることが不可能になる。法律といっても、刑事的な犯罪で無い限り、結局は金による解決以外に道は無い。金の無い人間に法を使って何か金銭的な保証を求めても無駄なことに過ぎないのである。要はかねの取り合いのための道具として、法律という武器を如何に使うかというのが、本当に賢い人間の生き方であるかのようだ。
 人間の残酷物語を娯楽として読む。しかしこれが楽しいし、実際に大変にためになるような気がする。カバチたれる人生が楽しいのかは疑問だが、ある種の本当の人間ドラマが展開されているからだろう。金で買えないものがあるらしいのは信じたいが、本当の人間ドラマは金次第。それが限りなく真実であるのは、自分の目で確かめた方がいいのではないだろうか。
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