カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

キモかわいい?   ランゴ

2015-10-27 | 映画

ランゴ/ゴア・ヴァービンスキー監督

 CGアニメーション。日本では副題に「おしゃべりカメレオンの不思議な冒険」となっている。が、これはあんまり子供向けのお話という感じではない。そうでありながら、いわゆる大人すぎる作品でもない。日本人には少し分かりにくい、米国的に精神の発揚のあるコメディである。
 水槽ごと砂漠に落ちてしまったカメレオンが、砂漠の水不足にあえぐ町にたどり着き、ひょんなことからヒーロー的な保安官に任命されてしまう。水不足に陥った真の原因を探ると共に、実は単に人に飼われていたという過去しかない口達者のカメレオンの奮闘を描いていく。
 まず、キャラクターの造詣が、ちょっと違う。リアルな感じもあるにはあるが、デフォルメの仕方が少しグロいという感じかもしれない。ヒロインのイグアナ(かな)にしても、決して美しくないし、男たちはおおむね皆気持ち悪い。主人公も滑稽なカメレオンだし、爬虫類特有の、表情が分かりにくい感じもそのままだ。しかしながらそうであっても、ちゃんと感情は伝わってくるのだから不思議といえば不思議かもしれない。いや、むしろ抑制が効いていることで、かえってその感情の揺さぶられ方を、観る方が勘案してみているのかもしれない。
 さらに、砂漠の生き物たちの非情な感じも西部らしい。保守的な仲間意識を持ちながら、どこか抜けており、そうして強がっても無力なのだ。そういう中で際立った悪人があらわれ、恐怖のどん底に陥る。生き物の力関係の図式もはっきりしており、このような窮地を、実に巧みなアイディアで乗り切っている感じだ。そういうところは、だからアニメなんだということで、実に成功しているのではないか。人間のリアルな西部劇では、もうすでにこのような世界は描きにくくなっているのかもしれない。悪と戦う正義にしても、内面に複雑なものを宿しており、悪人だって実は事情がありそうである。時には単純に展開するが、その実その複雑さを勘案するから、嘘の仮面のカメレオンから、等身大のヒーローとしての脱皮が感激的なのかもしれない。
 北米では大変に成功した映画となったが、他の国ではどうなのだろうか。このような精神的な復活の夢というのは、まさに変貌したアメリカン・ドリームかもしれない。それが他国の人たちにはいまひとつわかりにくいのではないかとも感じた。もちろん理屈抜きに大変に楽しく観たが、声がジョニー・デップだからとか、そんな感じでは本当には面白くないのではないかとも思った。観てもらうための話題作りとしては掴み程度で、やはり自己啓発に近いようなものが、この映画のメッセージなんだろう。ま、頑張って仕事しましょう。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする