カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

THEダイエット!

2012-01-18 | 映画
THEダイエット!/関口祐加監督

 監督さん自らの体験をつづるセルフドキュメンタリー。ダイエット体験談というより、自分が太っているという理由と歴史、そしてアイディンティティの確認ということのようである。太っているということの自己確認の仕方のすさまじさと面白さで引っ張って行きながら、シリアスな部分では自分をここまで私小説的にさらけ出してしまって本当にいいのだろうかと心配になるようなお話だった。日本女性でありながらオーストラリア人的なあからさまさも会得している不思議な人物である監督さんのパーソナリティの勝利なのかもしれない。
 太ってしまう理由ははっきりしている。痩せるために何をしたらいいのかというのもものすごくシンプルにはっきりしている。しかし、実際に太らなくしたり痩せたりするのは大変に難しい。結局どうしたらいいのかと迷っている人が多くなるようだが、迷わなくてもやり方を知らない人などいないだろう。迷っているのは楽をして痩せたいというだけのことだ。ダイエットを実行しても効果の出るのは大変に遅い。そのスピードの遅さに人は耐えられないのかもしれない。そういう速度の遅さを克服するにはどうしたらいいのか。それは、そのようなシンプルさを自分で受け止めるしか方法がないということだ。現在の自分を認めること。それができるかできないか。自分のことは自分自身が一番よく知ってるって? そのように考えている人にはダイエットは成功しない。自分を知らないことを知ることがいかに難しいことなのか。期せずしてダイエットに励むうちにそのことに気づく人は偉いものだと思う。結果的に、そのことを知ることができれば、ダイエットはやっとスタート地点に立てるということなのだろう。
 別段禅問答をしたいわけではない。自分自身を認められないからダイエットという手法が分からなくなっている。自分を知っている人が痩せている人とは限らないけど、ダイエットに成功している人は、意志の強さの前に自己分析が上手くいく人なのかもしれない、というだけの話なのである。映画の結末はだから、ダイエットの成功談ではない。カバ女にもカバ男がつくかもしれない。そういう表現をしていたのだけど、それは自分自身の肯定なのかもしれない。相対的に他者がそれを認めることによって自己確認をしているわけだ。
 楽しい映画だが、同時に本当は辛い物語だ。これを日本女性ができるということに、何かちょっと不思議な感じすらしてしまう。日本を脱出した日本女性だからこそ、日本の女性性に目覚めてしまう。そういうところがなにより考えさせられるドキュメンタリーということなのだろう。
コメント
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