梶哲日記

鉄鋼流通業会長の日々

通過点

2009年10月31日 10時43分57秒 | Weblog
一年前に端を発した世界金融危機で、国内鉄鋼流通も大きな痛手を被りました。わが社が扱っている鋼板はそれまでの鉄鋼メーカーの供給不足もあり、他の鋼材より市中では特に逼迫感があり、在庫があれば言い値で売れ、わが社も当然儲かりました。そこに大きな落とし穴がありました。

わが社は高値を承知で、量を唯一供給してくれる電炉メーカーにその直前に大量の注文をしたのです。その後スクラップの暴落と共にそのメーカーが製品を大幅に値下げし、それが切欠で市中は先安感一色となり、需要激減と極端な買い控えが蔓延したのです。

そしてわが社は今年の2月、在庫は通常1.5~2ヶ月が適正のところ、6ヶ月分まで積み上がったのです。他高炉メーカーの既契約も納期が短縮し入荷が加速しました。逆鞘でしか売れない高値の材料が超過剰となり積み上がました。当然のことながら過剰在庫を早く捌くしかなく、大幅な赤字覚悟の販売が何ヶ月も続きました。

漸く今月10月適正在庫に到達しました。長い道程でしたが、これは通過点にしか過ぎません。何故なら、まだ月次収益は黒字になっていないからです。直近のメーカーの安値の仕入れが出来ず、中身が安い在庫に入れ替わってないからです。また秋口の荷動きの低迷は厳しさを増しています。

しかしながら過剰在庫が捌けたことは、明らかに肩の重い荷が降りたことに他なりません。つまりわが社が守りから攻めの大事な時期に差しかかったことでもあり、心構えだけでも早く作り、攻めの体制を整えることが急務です。

中国特需、その後の利益はわが社の実力だったのか又その利益をどう使おうとしたのか。今回の暴落、予期することは出来なかったのか又その教訓をどう活かせるのか。大いなる課題は残ります。

この損は会社の不利益になる損では無く、一旦人間はものを無くさないとものを大事にしない、天が罰を与えた。天罰はまだ復帰が出来る人に下り、痛みがあるのはまだ治ること。と最近私は捉えています。願わくは社員がこの通過点で氣を抜かず、辛抱して、むしろ氣を集中して難局を乗り切って欲しいものです。
コメント
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