2日連続書評。
あちこち別の本に浮気しつつ
ようやく読み終えた669ページ(笑)
48歳の作家と43歳の女優の、
それぞれの家庭を捨てての逃避行物語の
ずるずる奈落に落ちる様のリアルな描写ってだけで
休み休み読まないとお腹いっぱいになっちゃう。
でも夢物語じゃなく
このリアルさが本書のアイデンティティだろう。
粗筋を書けば単に上記の一言で終わるのだが、
それが単なる表層であることは
本書にある次の一節でよくわかる。
「現実に起こったことを箇条書きにすれば、
そうなる。
だがそれは、岩を打ち砕き、ごうごうと音をたて、
飛沫をあげながら流れていく川に、
安全な岸辺から小さなスプーンで
ほんのひと匙、水をすくいあげ、
これがこの川のすべてである、と
したり顔で呈示するようなものであった。」
ところで本書を読む方の大多数は
48歳作家の正臣か、43歳女優の志摩子の
どちらかに自己投影したりするのだろうが
ワタシはなぜか
53歳大学教員の志摩子の夫滋男が気になった。
男と逃避行に及んだ10歳下の女優の妻を
悲しげに、寂しげに眺めながら
最後まで優しく静かに去っていく初老の夫。
そんな滋男に自分を同化させて読んだのは
たぶん今年同じ歳になるからだけでも無いだろう。
自分も同じシチュエーションに陥った時
きっと同じリアクションだろうと思うほど
この男の心理がよくわかる。
それにしてもこの内容で
タイトルが「Over the Rainbow」とは
ある意味皮肉?あるいはメタファー?
2006年柴田錬三郎賞受賞作。
「虹の彼方」小池真理子:著 集英社文庫
あちこち別の本に浮気しつつ
ようやく読み終えた669ページ(笑)
48歳の作家と43歳の女優の、
それぞれの家庭を捨てての逃避行物語の
ずるずる奈落に落ちる様のリアルな描写ってだけで
休み休み読まないとお腹いっぱいになっちゃう。
でも夢物語じゃなく
このリアルさが本書のアイデンティティだろう。
粗筋を書けば単に上記の一言で終わるのだが、
それが単なる表層であることは
本書にある次の一節でよくわかる。
「現実に起こったことを箇条書きにすれば、
そうなる。
だがそれは、岩を打ち砕き、ごうごうと音をたて、
飛沫をあげながら流れていく川に、
安全な岸辺から小さなスプーンで
ほんのひと匙、水をすくいあげ、
これがこの川のすべてである、と
したり顔で呈示するようなものであった。」
ところで本書を読む方の大多数は
48歳作家の正臣か、43歳女優の志摩子の
どちらかに自己投影したりするのだろうが
ワタシはなぜか
53歳大学教員の志摩子の夫滋男が気になった。
男と逃避行に及んだ10歳下の女優の妻を
悲しげに、寂しげに眺めながら
最後まで優しく静かに去っていく初老の夫。
そんな滋男に自分を同化させて読んだのは
たぶん今年同じ歳になるからだけでも無いだろう。
自分も同じシチュエーションに陥った時
きっと同じリアクションだろうと思うほど
この男の心理がよくわかる。
それにしてもこの内容で
タイトルが「Over the Rainbow」とは
ある意味皮肉?あるいはメタファー?
2006年柴田錬三郎賞受賞作。
「虹の彼方」小池真理子:著 集英社文庫