江戸時代の小説を読んでいると「ぼてふり」はよく出てくる。当初、ぼてふりって何?と思ったが、漢字で表記すると「棒天振り」で、あ~そうか!とイメージできた。
棒天振りは、天秤棒の両端に魚や野菜などを入れた桶や箱などの容器をぶら下げて、売り声を上げながら売り歩くこと。また、その商売をする人のことである。「振売(ふりうり)」ともいう。行商の一種だね。
この、比較的狭い範囲を巡回する形態に多く見られる業態は、室町時代からあったようだが、最盛期はやはり江戸時代。何故?そうなったのか、カチャッてみたところ・・・
江戸はもともと江戸城を中心として周囲に武家地を造り、そこに商人や職人を移住させる形で発展し、世の中が平和になるにつれて、江戸に移住する人が増え、狭い地域なのに100万人を超えるほどになった。しかも、人口の3分の1は、まったく生産的活動を行わない巨大な消費階級(武士)だ。
大量の食料品を外から江戸の街の隅々に供給するために、流通システムは巨大で複雑で細かなものに発展していき、そのシステムの末端が、棒天振りの人々だった。
つまり、急増した人々に食料を供給するため、棒天振りも増えていったわけだ。
棒天振りは、食品を扱う商売のなかでも、特別な技術や知識がいらない、店もいらないので簡単に開業できた。なので、社会的弱者も棒天振りによって健全に働き、生活できていたようだ。ある意味、良い時代なんですね。
棒天振りの売り物は食品だけにとどまらず、ホウキ、風鈴、もぐさ、暦、樽、ざる、蚊帳、草履などの日用品や、金魚・鈴虫・松虫、錦鯉などの昆虫やペットもあった。また、壊れた物の修繕や看板の文字書きなど、生活の中で必要なサービスを売り歩くものもいた。
ということは、買い物にいかなくても、家にいながら何でも揃い用はたせるわけだ。
「先々の(町々の)時計になれや小商人」…時計代わりにもなっていたのね。
棒天振りって…エライね。棒天振りが盛んだった時代を、ちょっと覗いてみたいものですね~。