先日の十二月大歌舞伎で早々の芝居納めとなりました。客席からの喜びと感謝を込めて、2019年の因幡屋演劇賞を次の皆さまに!今年は観劇本数少なめでしたが、受賞作はいずれも濃厚です。観劇後のブログ記事をリンクしておりますので、ご参考までに。
*劇団うりんこ公演 関根信一(劇団フライングステージ)作・演出
『わたしとわたし、ぼくとぼく』
親子で夫婦で家族で、友だちとも、いや知らない人とも、あの日あの場で舞台を一緒にみる喜びを与えられました。相手を理解しようとすることは、自分を相手に手渡すことでもあります。だから難しい一歩であっても、相手からも一歩がこちらに近づいてくるかもしれない。いつかできるようになると思うのです。
*パラドックス定数第45項 野木萌葱作・演出
『Das Orchester』
シアター風姿花伝「プロミシングカンパニー」の掉尾を飾る1本。固有名詞を全く出さず、あの時代の、あの国のことを描きながら、不穏な動きが近づきつつある現在の日本の様相を炙り出す作・演出の手並みと、それに応える俳優陣に。今年唯一、2度観した舞台です。
*劇団肋骨蜜柑同好会
1月の『つぎ止まります 匣』に始まり、『おにぎり、ください「山の中、みたらし」』、「さよなら平成記念イベント★27時間耐久!劇団肋骨蜜柑同好会の五月祭」(トークゲストとして登壇いたしました、汗)、特に8月に男性版、女性版を交互上演した『ダブルダブルチョコレートパイ』(ビター篇、ミルク篇)、年末の『殊類と成る』まで、主宰のフジタタイセイ氏と、その佳き仲間の方々によるこの1年の怒涛の活動に。
*劇団唐組 第64回公演 唐十郎作 久保井研+唐十郎演出『ビニールの城』
劇団第七病棟初演の伝説の舞台が蘇った!台風19号で明治大学での公演が2日間中止になった翌週、下北沢に聳え立つ紅テントは観客の期待で熱く膨れ上がり、この物語を作る方々の愛で満ち溢れた。来年は唐十郎生誕80年。楽しみです。
*新国立劇場「ことぜん」第2弾 デイヴィッド・グレッグ作 谷岡健彦翻訳 瀬戸山美咲演出『あの出来事』の小久保寿人
無差別大量殺人を犯した少年はじめ、その父親や友人、生き残った合唱指導者クレア(南果歩)の女性パートナーまで、多くの役を演じた小久保さん。技巧を出さず、「抑制している」とすら感じさせない演技は、これまで同様のものを観たことがありません。観劇したその夜に、「今年はこの方にどうしても」と決めました。
芝居を観に行くとき、自分なりに心身を整え、天候や交通状況などにも注意しています。しかし、舞台を作る現場の方々がどれほどの労苦で初日を迎えられたか、天候の変化ひとつに細かい配慮をしておられるか、これから舞台に立つ俳優方がどんな思いで袖に控えておられるかを想像すると、もう胸が苦しくなります。とくに10月の台風19号で、多くの公演が上演中止になったときはそうでした。予約者への中止の連絡、振替観劇日の案内、代金の払い戻し等々、上演できないことを、いちばん悔しく残念な思いながら、落ち着いて手際よく進めておられる姿に尊敬の念を覚えました。
これほどの配慮と努力をして上演される舞台を観るのですから、背筋を伸ばし、その印象を書き残すときには、自分の心に正直に、ぎりぎりまで言葉を吟味して心を尽くしたい。改めてそう思わされます。
公演の当日パンフレットや劇場発行の媒体への寄稿、トークゲストや、まさかの劇評講座講師など、思いも寄らない場をいくつもいただいた年でもありました。至らない者を用いてくださった方々に、この場におきまして深く感謝申し上げます。
今年1年、因幡屋ぶろぐにお運びくださった皆さまおひとりおひとりに感謝いたします。人生に与えられた演劇という宝を、自分にできる方法で、感謝を以てお返しする。その心で続けてまいります。ありがとうございました。そして、これからもよろしくお願いいたします。
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