中野剛志が『TPP亡国論』で主張していることは、今の私が毎日ブログで言っていることと、ほぼ同じだ。中野は「おわりに」において、反対派にとっては不利な状況であり、抵抗することは無謀であるのは、あらかじめ予知していた。「戦後日本の歴史において、政府が強く推進し、産業界が全面的に賛成し、大手新聞やテレビがこぞって支持し、アメリカが背後にる政策をひっくり返したという例を、私は知りません」と書いていたからだ。楽観的な見方は全くしていなかったのである。しかし、それでいて、中野が言論戦を挑んだのは、TPP賛成派の論理があまりにもいい加減であったので、あえて異議を唱えたかったのだろう。世界の成長を取りこむといいながら、実際は日米交渉の延長でしかない。中野のすごいのは、落とし所も準備していた点だ。幕府が「避戦・開国」あったのに対して、明治政府は「攘夷・開国」を選択した。明治政府は国益を死守するために、攘夷のパトスを手放さなかったのである。中野は攘夷の気概を持つことを説いているのだ。いうまでもなくそれは、アメリカ頼みの安全保障から、一日も早く脱却することである。国家として対等な関係を築くことが前提であって、TPPへの参加などは論外なのである。マスコミの世論調査によれば、圧倒的に国民はTPP交渉参加に賛成しているらしいが、攘夷のパトスなくしてどう国益を死守できるのだろう。その観点からすれば『TPP亡国論』は、今もって正論なのである。
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