ゼロ戦が祖国日本の空で飛行する。それだけで日本人であれば、熱いものがこみあげてくるはずだ。朝日新聞によると、購入しようとしているのは、栃木県出身で、ニュージーランド在住の実業家だと言われる。パイロットとして搭乗した人たちの多くは、もうこの世の人ではない。息子娘の私たち世代までは、「丸」という月刊誌があって、そこで戦記物を読むことができたし、親からゼロ戦の話が聞けた。当事者ではなくても、私たちは身近に感じて育ったのだ。時が経過するにつれて、大東亜戦争が闇に葬られようとしている。ゼロ戦に250キロ爆弾を抱いて、敵艦に突っ込んだ若者たちがいたことも、忘れられようとしている。富岡幸一郎は『新大東亜戦争肯定論』において、大岡昇平の『レイテ戦記』のなかの「十章 神風」を引用している。当時の日本の指導者は、誰一人勝つとは思っていなかった。一勝してから和平交渉に入りたかったかった。そのために犠牲になったことを、大岡は「若者に無益な死を強いた」と批判している。しかし、その一方では「これらの障害にも拘わらず、出撃数フィリッピンで400以上、沖縄1,900以上の中で、命中フィリッピンで111、沖縄で133、ほかにほぼ同数の至近突入があったことは、われわれの誇りでなければならない」と書いたのである。危機に直面したときに、若者は命を捧げたのである。その気概が私たちに残っているか、どうかなのである。ゼロ戦を思い浮かべると、すぐに「海ゆかば」の曲が聞こえてきてならない。
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