安倍晋三首相が旗振りをして、労働者の賃金のアップを主張している。今日はトヨタ自動社の豊田章男社長と首相官邸で会談し、ボーナスで満額回答をしたことに対して、謝意を示した。本来であれば、雇用や賃金を守るために、ナショナルセンターの連合が立ち上がるべきだが、そうならないのが日本の労働運動なのである。稲葉振一郎の『経済学と教養』でも賃金のアップが取り上げられており、それを真っ先に提言したのが、ロナルド・ドーアであることを知った。金融緩和に匹敵する効果を上げる可能性があるという。しかし、それを実行に移すにあたって、障害として立ちはだかるのが、企業別組合である。企業と一蓮托生であっては、目先のことに目を奪われてしまい、そこまでマクロ的な力を振るのは無理だからだ。稲葉は「ミクロ的な水準では各労働組合が企業の外側に立つ『対者』となることによってこそ、よく達成しうるはずだ」と書いている。つまり、その考えというのは「抵抗が公共性へとつながりうる」というのだ。そして、その抵抗の主体は、労働組合に限らないのである。農業セクターや地方なども含まれる。あくまでも不況局面の場合に限定されるとしても、平等を訴えて既得権益を維持しようとした方がプラスに働き、「経済の効率を上げ、公益にかなうということもありうるのだ」と指摘している。デフレ不況を長引かせた原因の一つは、牙のなくなった労働組合のせいなのである。アベノミクスはそこまで踏み込もうとしている。強い日本を実現するために、あらゆる方策を動員しているのである。
←連合は労働者の味方ではないと思う方はクリックを