メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

ダ・ヴィンチ・コード

2008-05-19 22:27:57 | 映画
「ダ・ヴィンチ・コード」(The Da Vinci Code 、2006年、米、150分)
監督:ロン・ハワード、脚本:アキヴァ・ゴールズマン、原作:ダン・ブラウン、音楽:ハンス・ジマー
トム・ハンクス、オドレイ・トトゥ、イアン・マッケラン、ジャン・レノ、ポール・ベタニー
 
原作は読んでない。
150分ということを心配したが、ともかく退屈はしないで最後まで見ることが出来た。このあたりはロン・ハワードの腕だろうか。
 
しかし、こういうキリストは神か人間か、あの聖杯はという話はそれ自体が面白いのであって、それが現代の闇に表れてきて、それに絡む人たちの暗闘といっても、活字ならともかく、やはり映像では迫力を欠いてしまうのだろうか。
 
主要登場人物も、実はこっちの側だった、というどんでん返しがあるだけで、演技でキャラクターの深みを出そうとしてもやりようがないと考えられる。
 
トム・ハンクスはほとんど唯一思いがけない背景がない役で、よく我慢した、余計な演技はしなかった、ということは出来る。
オドレイ・トトゥは感じがいい人だが、もう少し危うさが見える演技展開でもよかったのではないだろうか。暗号解読官だから落ち着きは当然なのだけれど。
 
イアン・マッケランは、後半の画面を引き締めていた。
 
ところで、最初からルーヴルが出てくるので、ソフィー・マルソー主演「ルーヴルの怪人」(2001年仏)のように多くの場面をその後も期待したが、これは肩透かしだった。

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八日目の蝉(角田光代)

2008-05-18 18:01:01 | 本と雑誌

「八日目の蝉」(角田光代、2007年、中央公論新社)
 
角田光代の小説を読んだのは「対岸の彼女」以来である。
二世代にわたる女性主人公が、他人と外界をどうやってつかみ、自分の目で足で生きていくか、それを今回は少しサスペンスタッチで描いている。
 
誘拐、カルト集団まがい、こういったものを扱いながら、そんなにおどろおどろしくならず、読み進められるのは、しっかりした細部描写と、そろそろというところでなされる巧みな場面転換だ。
 
巷間で言われるほど、読んでいって最後で一気に打たれるというほどではないけれども、後味はいい。少し前にもしやと想像する、安っぽい展開からは逃れている。
 
これまでがどうあれ、人は生きていく、生きていけるという結末にどうやってたどり着くか。その過程で、自分の生まれ、境遇、家族をどう受け入れるか。
考えてみれば、近代の小説でも大きなテーマであったはず。
 
気になるのは、男はどこにというこ。二人の主人公の相手の男性は、後の世代の相手との会話が少しあるだけで、その人を描いているというほどではない。
 
そういう疑問をもし作者にぶつけると、男にしゃべらせてもたいしたことは出てこない、と言われそうだ。それはそうかもしれない。
こっちが男であるという意識を忘れて、読めばそれでもいいのだろう。

(蝉(せみ)の字は、つくりの上部が口ふたつ)


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ナイトミュージアム

2008-05-17 21:48:54 | 映画

「ナイトミュージアム」(Nisht At The Museum、2006、米、108分)
監督:ショーン・レヴィ、脚本:ロバート・ベン・ガラント、トーマス・アレン
ベン・スティラー、ディック・ヴァン・ダイク、ミッキー・ルーニー、ビル・コックブス、カーラ・グギーノ、ジェイク・チェリー、ロビン・ウイリアムズ、オーウェン・ウイルソン(クレジットなし)
 
離婚してたまに息子に会える男(ベン・スティラー)が苦し紛れの就職先として選んだのがニューヨークの国立自然史博物館(だそうだ)の夜間警備員、やってみると展示物が夜にだけ生命をえて勝手に動き出す。
息子にそれを見せてやりたく、夜になるのだが、その背景にはちょっとした悪だくみがあって、それと闘いながら、最後はこれらの要素を全部駆使したスペクタクルが待っているという話である。
 
話は常套的だが、それでも展示が動き出すとそれなりに楽しい世界が現出する。このままシュールな味わいをもう少し続けてほしいというところで、話はミステリーの解決に向かってしまい、ちょっと残念。
 
ベン・スティラーにしては、そんなにどじでもなく、しょぼくれてもいないが、それはご愛嬌である。
話はたわいなくても、それなりに不思議と最後まで見せる娯楽映画であった。 
 
ベン・スティラーと大の仲良しのオーウェン・ウイルソンが、ああやっぱり出てきたといった感じで登場し、少しはキーとなる役割を演じている。それでもクレジットなしというのは、出演料が只ということなのだろうか。


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ヘンダーソン夫人の贈り物

2008-05-10 21:52:36 | 映画
「ヘンダーソン夫人の贈り物」(Mrs. Henerson Presents、2005、英、103分)
監督:スティーヴン・フリアーズ、脚本:マーティン・シャーマン、音楽:ジョージ・フェントン
ジュディ・デンチ、ボブ・ホスキンス、ウイル・ヤング、ケリー・ライリー
 
第2次世界大戦が始まる少し前の英国、富豪の夫に先立たれその豊富な遺産を相続したヘンダーソン夫人(ジュディ・デンチ)が、つぶれかかった劇場を買い、支配人(ボブ・ホスキンス)を雇うがうまくいかなくなり。夫人のアイデアで当時フランスにはあったがイギリスにはなかったヌードレビューを始める。
その当局との攻防、劇場内のいざこざ、そして戦争の中でこの演目の意味を見つけ、世間に認めさせていく経緯と、支配人との葛藤、そして第1次世界大戦で失った息子の記憶などを織り交ぜながら、最後は銃後の人間的な世界の勝利につなげていく。
 
この話は、実話ベースのアイデア段階である程度の成功を確保したようなものだろう。ジュディ・デンチはオスカー主演女優賞ノミネートである。オスカーはともかく、デンチは期待どおり、ホスキンスもうまい。
 
でも、よく考えてみると、これは一時代前、かの第2次世界大戦はこんなに人を大事にし、戦争中でも人間性を失わなかった、という勝利者の誇りであって、我々からすると、確かにそうだろうが、勝った上にそこまで自慢されてもね、と後から思ってしまうパターンである。
 
その後何十年の間、これら戦勝したヒューマニズム先進国が、その目的のためにはそんな余裕などなくて必死に戦う他国に苦しめられる、ということになるのである。
 
だから、単にこの話のよさに思いを馳せるわけにはいかない、今となっては。
 
当時のレビューの再現、そして音楽はよく雰囲気を出している。

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アイム・ノット・ゼア

2008-05-09 21:37:27 | 映画
「アイム・ノット・ゼア」(I'M NOT THERE)(2007年、米、136分)
監督・原案・脚本:トッド・へインズ
クリスチャン・ベイル、ケイト・ブランシェット、マーカス・カール・フランクリン、リチャード・ギア、ヒース・レジャー、ベン・ウィショー、ジュリアン・ムーア、シャルロット・ゲンズブール、ミシェル・ウィリアムズ
 
ボブ・ディランの6つの側面をクリスチャン・ベイル、ケイト・ブランシェット、マーカス・カール・フランクリン、リチャード・ギア、ヒース・レジャー、ベン・ウィショーの6人で演じ分け再構成しようという映画。
見る前は順にオムニバスで、と思ったのだが、そうではなくていろいろシャッフルするように入ってくる。
 
フォーク・シンガーとして成功し、その後の変化にマスコミや社交界がとまどう、という場面ではケイト・ブランシェットが演じている。見事である。これでオスカー助演女優賞にノミネートされたし、他ではいくつかの賞をとっている。
ここを彼女に演じさせようと企画したところで、この映画はある程度の成功を確保したのだろう。
私もケイト・ブランショットが演じるからというので見る気になった。この詩人の本質を次第に表出させていく男の演技、その弱さと強さの両面、そういえばディランはこういう人だったかなと次々に感じさせる。
 
今、ちょうどその変身をとやかく言われたころのアルバム「DESIRE」(欲望、1975)のLP(持っている唯一のアルバム、解説を書いているのはこの映画にも登場するアレン・ギンズバーグ)を聴きながらこれを書いている。
レコードジャケットの姿は意外に健康そうで瑞々しい吟遊詩人風、帽子にスカーフの横顔は繊細な美人に通じる。
 
映画全体としては必ずしもわかりやすいとはいえない。特に前半は眠くなりそうだったが後半からはまずまず。もっとこのころのミュージックシーンになじんでいるか、ディランを広く知っていれば別だろうけれど。 
6つのキャラクター以外では、夫人を演ずるシャルロット・ゲンズブールはうまくなった。俳優としては両親(セルジュ・ゲンズブール、ジェーン・バーキン)を超えたかもしれない。
      
何回か見ればもう少しという感もあるから、レンタルになったらまた見てみよう。

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