ヴェルディ:歌劇「椿姫」
指揮:ニコラ・ルイゾッティ、演出:ウィリー・デッカー
ソニア・ヨンチョヴァ(ヴィオレッタ)、マイケル・ファビアーノ(アルフレード・ジェルモン)、トーマス・ハンプソン(ジョルジョ・ジェルモン)
2017年3月11日 ニューヨーク・メトロポリタン歌劇場 2018年5月 WOWOW
時々見たくなる「椿姫」、録画してからしばらく置いておいたが、いい演奏だった。
この何年か、2011年のエクス・アン・プロヴァンス、2012年のメトロポリタン、2013年のスカラ、と見てきた。
前の二つではナタリー・デセイがヴィオレッタで、メトの方は今回と同じデッカーの演出(2005年が最初)。
それぞれ再度見てみないと比較は難しいが、今回グレーの縦じまの円型の壁とカヴァーはかかったりはずしたりされるが四角いソファー、それ以外は、大きな時計が象徴的にまた時に傾斜した舞台にと使われている。衣装もヴィオレッタの赤とそれを脱いだ時のシュミーズ姿、男たちは常に黒のスーツ、医師グランヴィルと侍女アンニーナも黒のロング、友人フローラも黒の男装、と徹底している。これらはデセイの時も同様だったと思う。
冒頭の乾杯の歌もヴィオレッタ以外は全員黒で、パーティなのに男だけかと見えるくらい。
デッカーの演出はミニマリズムと形容されることもあるようだが、それはこのように最小限の視的要素で、主人公たち特にヴィオレッタの音楽で語られるものに集中するということだろうか。
オペラをある程度見ている人ならリアリズムの舞台はたいてい知っているから、それに乗っかったというときこえは悪いけれど、それもこのオペラなら許容されるだろう。
ブルガリア出身のヨンチョヴァはこのリリカルとドラマチック両方にまたがる歌唱を強めの声で、聴くものの集中を切らさず、ほとんど出ずっぱりの中、ヴィオレッタの一生を見事に生きていた。
冒頭のところはやはり高級娼婦らしいうまさが出ており、アルフレードと一緒になってからの筋からするといそがしい展開も見事に歌いきっている。第3幕に入るところも、舞台の背景、衣装など、面倒な変化もないから、そのままの勢いで入っていける。倒れているところから始まって、最後息絶えるところであのメロディーが聴けるというのも、ヴェルディの憎い演出である。
基本的にヴィオレッタの歌をベースに全編流れていくから、「カルメン」、「ボエーム」とならぶ人気作品、名曲なのはもっともである。
マイケル・ファビアーノのアルフレード、登場したときはその細身の体躯に今風の細身のスーツで、どうなのかと思ったが、歌いだすと単なる直情的というより、この音楽に微妙な襞をつけていた。
ハンプソンのジェルモンは堂に行ったもの。
ルイゾッティの指揮は破綻なくうまく盛り上げていたと思う。これだけの作品で、演奏経験のあるメトのオーケストラ、やはりこれまでの蓄積だろう。
指揮:ニコラ・ルイゾッティ、演出:ウィリー・デッカー
ソニア・ヨンチョヴァ(ヴィオレッタ)、マイケル・ファビアーノ(アルフレード・ジェルモン)、トーマス・ハンプソン(ジョルジョ・ジェルモン)
2017年3月11日 ニューヨーク・メトロポリタン歌劇場 2018年5月 WOWOW
時々見たくなる「椿姫」、録画してからしばらく置いておいたが、いい演奏だった。
この何年か、2011年のエクス・アン・プロヴァンス、2012年のメトロポリタン、2013年のスカラ、と見てきた。
前の二つではナタリー・デセイがヴィオレッタで、メトの方は今回と同じデッカーの演出(2005年が最初)。
それぞれ再度見てみないと比較は難しいが、今回グレーの縦じまの円型の壁とカヴァーはかかったりはずしたりされるが四角いソファー、それ以外は、大きな時計が象徴的にまた時に傾斜した舞台にと使われている。衣装もヴィオレッタの赤とそれを脱いだ時のシュミーズ姿、男たちは常に黒のスーツ、医師グランヴィルと侍女アンニーナも黒のロング、友人フローラも黒の男装、と徹底している。これらはデセイの時も同様だったと思う。
冒頭の乾杯の歌もヴィオレッタ以外は全員黒で、パーティなのに男だけかと見えるくらい。
デッカーの演出はミニマリズムと形容されることもあるようだが、それはこのように最小限の視的要素で、主人公たち特にヴィオレッタの音楽で語られるものに集中するということだろうか。
オペラをある程度見ている人ならリアリズムの舞台はたいてい知っているから、それに乗っかったというときこえは悪いけれど、それもこのオペラなら許容されるだろう。
ブルガリア出身のヨンチョヴァはこのリリカルとドラマチック両方にまたがる歌唱を強めの声で、聴くものの集中を切らさず、ほとんど出ずっぱりの中、ヴィオレッタの一生を見事に生きていた。
冒頭のところはやはり高級娼婦らしいうまさが出ており、アルフレードと一緒になってからの筋からするといそがしい展開も見事に歌いきっている。第3幕に入るところも、舞台の背景、衣装など、面倒な変化もないから、そのままの勢いで入っていける。倒れているところから始まって、最後息絶えるところであのメロディーが聴けるというのも、ヴェルディの憎い演出である。
基本的にヴィオレッタの歌をベースに全編流れていくから、「カルメン」、「ボエーム」とならぶ人気作品、名曲なのはもっともである。
マイケル・ファビアーノのアルフレード、登場したときはその細身の体躯に今風の細身のスーツで、どうなのかと思ったが、歌いだすと単なる直情的というより、この音楽に微妙な襞をつけていた。
ハンプソンのジェルモンは堂に行ったもの。
ルイゾッティの指揮は破綻なくうまく盛り上げていたと思う。これだけの作品で、演奏経験のあるメトのオーケストラ、やはりこれまでの蓄積だろう。