「RURIKO」 林真理子著 (2008年5月、角川書店)
RURIKOは浅丘ルリ子である。このスターが生まれてから今日までを、ほぼ時系列に、家族と映画を中心とする芸能界のそんなに多くない人たちとの間のエピソードをもとにした半生記としている。
この内容、書き方からすると、相当の裏づけはあったであろうが、浅丘ルリ子本人にインタビューしたかどうか、それは不明である。
一読して彼女は、恋多き女ではあるが、あまり破滅的な走り方はせず、さばさばしたところもあり、そのあたりは不思議だが、男からすると好感を持たれるタイプだろう。ファム・ファタルのようでいてそうではない。
だから本書を読んでいて彼女の人生に共感をいだくよりは、登場する石原裕次郎、北原三枝、小林旭、美空ひばりなどの話が、当時の日活映画全盛時の世相、風俗の念入りな描写と相まっておもしろく、巻置くあたわず読み進んでいた。
林真理子にとって、この世界は好きなはずだし、だから話に勢いがある。
裕次郎のデビューから全盛までは、私の小学校終盤であるから、歌謡曲今週のベストテンという類の番組で、彼の歌は覚えてしまっていたし、中学に入ると、学校で話にでる今でいうアイドルは、裕次郎に続く日活の若手俳優たちであったから、にやりとする箇所は少なくない。
小林旭と浅丘ルリ子との間柄はここまで詳しく知らなかったけれど、読んでいてなかなかいい関係だったなと思わせるところが多い。作者がこうあってほしいというところもあるだろうし、二人とも存命であるから手加減もなくはないだろうが、それでもほっとする。
美空ひばりと浅丘との交流は知らなかった。もっとも私にとってひばりは苦手だから興味なかったのかも知れない。
この本を読んだきっかけの一つは、彼女と甘粕正彦との関係である。最近、甘粕についても新しい本が出て、書評によるとこれまでの虐殺犯というイメージの復権も含め見直されている。本書のある書評で、彼女が4歳のときに父親が満映に務めていた縁で、そこのトップであった甘粕に可愛がられ、彼は将来のスター女優を予言した、ということが触れられていた。
それでなおさら、興味を持ったということもある。
一つ不満というか欠陥をあげれば、たくさん出てくる映画の製作か公開の年を入れて欲しかったことである。ネットで調べればわかるし、数人の主人公の生年をメモしておけば推定は可能なものの、スムースに読み進む上では必須データである。