メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

すべてうまくいきますように

2024-08-20 17:14:49 | 映画
すべてうまくいきますように ( Tout s'est bien passe。2021仏、113分)
監督:フランソワ・オゾン
ソフィー・マルソー(エマニュエル)、アンドレ・デュソリエ(アンドレ)、ジュラルディン・ペラス(パスカル)、シャーロット・ランプリング(クロード)、エリック・カラバカ(セルジュ)、ハンナ・シグラ
 
本人の意思による安楽死について、最後までひきつけるつくりで、このテーマについての主張、結論というよりは本人、家族たちの思い、ためらい、うごきを映画としてのきわめてうまい語り口で結末まで一気に見せる。
 
85歳のアンドレ、脳疾患で倒れ自由がきかず認知症も、もう生きていくのが限りなくつらく自分の意志で死にたいと考え、二人の娘エマニュエルとパスカルの姉妹に頼み、彼女らもいろいろ悩み苦労しながら、フランスでは法律的に禁止されているからとスイスで実行という計画をたてる。
 
アンドレには不仲の妻クロードがいるが、進行とともに実はアンドレはホモセクシュアルでもあり、その相手も登場する。
そうやって最後はとなるのだが、その数分はこまかく意外、意外が続いていき、ラストをみんなが聞いて、、、終わる。
 
つくりはさすがフランソワ・オゾン、場面転換が早く、そのカメラワークが見ていて飽きない。テーマは深刻だが疲れずに見ていけるというか、映画の魅力を楽しめる、というとテーマに失礼か? そうでもないだろう、見終わったあとにこの問題が人間味をもって残っている。
 
この映画、オゾンだからというよりまずはソフィー・マルソーを見たいというのが一番で、どの場面、どのカットも、我ながら本当にソフィー・マルソーが好きなんだなあと思う。
 
妹役のジュラルディン・ペラスがいい取り合わせでドラマの進行をうまく見せている。父親役のアンドレ・デュソリエもとぼけてわがままで存在感を出している。
母役のシャーロット・ランプリング、この人も好きで他のオゾン作品でもいい役をやっているのだが、なぜか今回は登場場面がほんの少し、でもここはこの人ならではだったのか。

そして音楽が場面をひきたて秀逸である。
ブラームスのいくつか、ベートーヴェン最後のピアノソナタがうまく使われているし、終盤に主人公は、孫がクラリネットでチェロ・ピアノとの三重奏「町の歌」をやっているのをうれしそうに聴いていた。

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