メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

カフェ・ソサエティ

2018-07-31 21:15:34 | 映画
カフェ・ソサエティ(CAFE SOSIETY、2916米、96分)
監督・脚本:ウディ・アレン
ジェシー・アイゼンバーグ(ボビー)、スティーヴ・カレル(フィル)、クリスティン・ステュワート(ヴォニー)、ブレイク・ライヴリー(ヴェロニカ)、コリー・ストール(ベン)、ジーニー・バーリン(ロージー)
久しぶりのウディ・アレン作品。それなりのペースで映画は作っているらしいのだが。
 
ニューヨークに住んでいるユダヤ人の一族、姉のロージーの息子ボビーは今の仕事がいやになり、母の口ききで、ハリウッドのプロデューサーとして大成功しているフィルのところに行く。フィルは忙しさにかまけて秘書のヴォニー(ヴェロニカ)に相手をさせるが、そのうち二人は仲よくなる。ところがフィルは長年連れ添った妻と別れ、ヴォニーと一緒になろうとしていた。
 
結局ボニーは仕方なくニューヨークにもどり、やはり叔父でやくざのベンが経営しているカフェ(ナイトクラブ)で働くうちに頭角をあらわし、いろいろあってついにはそこのトップになり、名前も同じヴェロニカと結婚するのだが、その後、フィルがヴォニー(ヴェロニカ)と一緒に現れて、、、
 
筋の一つ一つの描き方はしつこくはなく、さらっと次に移っていくが、あとからあああれは、というところは作者のねらいだろうか。それと1930年代のハリウッドとニューヨーク、風俗の細かいところは、今のスクリーンでくすまないよう、手間をかけている。ヴォニーの衣装も素敵だが、あのころこれほど短いスカートがあったかどうか。それは映画としての工夫かもしれない。
 
男女の仲の話はそれほどどぎつくはないが、やくざのベンの行動についてはかなり、、、
 
見終わってみれば、あの時代の群像劇という面、風俗映画という面でよくできている。アレンの作品ではなく、戦前のヨーロッパなどを描いた映画でもこの何年か、そういう全体としては淡々として、ペーソスを見せながら娯楽作品としてもうまく成立しているものがときどきある。
 
見終わっての感は悪くない。アレンのファンはより細かいところを楽しむだろう。
アイゼンバークとステュワートの組み合わせは役を考えるとぴったりである。
 
ボビーがニューヨークにもどってくるのは残り30分くらいからだが、このあたりバックに何度もピアノで流れるのは「マンハッタン」(リチャード・ロジャース)、十代のころよく耳に入ってきて、マンハッタンってこんな雰囲気なのかな、と思ったことを覚えている。当時はたしかジョー・ブシュキンのピアノだった。

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桑原あい ピアノソロ 「骨で弾く」

2018-07-27 21:27:01 | 音楽一般
桑原あい ソロピアノツアー2018 
7月24日(火)代々木上原Musicasa
久しぶりの桑原あい、それもソロは2016年東京オペラシティ以来である。
 
セットリストは、
1.Over The Rainbow(ハロルド・アーレン)
2.Home(ミシェル・ペトルチアーニ)
3.ウェストサイド・ストーリー・メドレー(レナード・バーンスタイン)
4.Somehow It's Been a Rough Day(桑原あい)
5.Dear Family(桑原あい/石若駿)
6.Love Me or Leave Me(ウォルター・ドナルドソン/ガス・カーン)
7.To The End of This World(桑原あい)
8.?(メロディーは聴き覚えあるけれど)
9.The Back(桑原あい)
10.(アンコール)Money Jungle(デューク・エリントン)
 
ピアノのソノリティがさらに良くなったことを感じたのは、最初のOver The Rainbowからで、これジャズっぽくない名曲なわりに、なぜかジャズピアニストがよく弾くのだが、かなり長くあらゆる角度からか存分に歌うの心地よく、多くの音が厚く重なってくるところでもすべてが明瞭に聴こえ、それは心地よい。
 
彼女が好きでよく取り上げるHomeは以前からペトルチアーニよりいいと思っていたが、今回はさらに完成度が高くなった。
 
ウェストサイド・ストーリー・メドレーは今回もだけれど、自身で語っていたようにこんなに自由な順番、繰り返しなどで好きなように長丁場をやるのは、ソロでないと無理だろう。まさに存分に楽しめた。
日本における1961年の映画公開時、まだ十代で驚愕、ひっくりかえったし、サウンド・トラック・アルバムですべての曲になじんだから、それはなじんで楽しめる。でも、これだけの曲が集まっているのに、初期にすでにアンドレ・プレヴィンがトリオで入れたアルバム以外はあまり扱われてこなかったように思う。今後彼女からどうなっていくか、、、

TVのニュース・ワイドでオープニングに使われているDear Family、こういう耳になじみやすい曲も作っているのだが、今回のソロはより鋭角になっていて、スピード感、スケール感もあり、新しい印象を持った。
 
The Back、最初はクインシー・ジョーンズの背中だったのだが、今回彼女が語ったように、より普遍的な背中になってきたのは確かなようだ。
 
さて「骨で弾く」だけれど、今回語ったことからすると、エレクトーンから途中でピアノに転向、そしておそらく小柄ということもあって、自らの体、ピアノという楽器の構造、など全体を考え、体の筋膜を、そして骨を有効に使いきって弾くということらしい。人体について学んだり、鍛えたりしたこともあるようだ。最近のスピードスケート選手に通じるところがある。
 
彼女を知ったのは2013年のTokyo Jazz(TV)で、驚かされたが、今後は背中をもっと鍛えたらいいなと思ったのを覚えている。それは達成されたかなと感じた。
 
このムジカーザと言うホール、収容は100人ほど、四角形の角にピアノが配置されていて、壁はあまり吸収、発散するようなものではないからか、響きはライヴだが、響きすぎとうことはなく、解像度はあって聴きやすい。鈴木エドワードの設計とか。






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大いなる遺産

2018-07-09 21:05:38 | 映画
大いなる遺産(Great Expectations、2012英、129分)
監督:マイク・ニューウェル、原作:チャールズ・ディケンズ、脚本:デヴィッド・ニコルズ、音楽:リチャード・ハートレイ
ジェレミー・アーヴァイン(成人ピップ)、ホリディ・グラインジャー(エステラ)、ジェイソン・フレミング(ジョー)、ロビー・コルトレーン(弁護士ジャガーズ)、ヘレナ・ボナム・カーター(ハヴィンシャム)、トビー・アーヴァイン(少年ピップ)、ジェイソン・フレミング(ジョー)、レイフ・ファインズ(マグイッチ)
 
さて高齢になってしまった昼、何を読むか聴くか、何を読むかなど、暇になったらなったでありそうなものだが、そこがなかなか、、、
 
前にも書いたけれど、ものごころついた前後、当時は複数の出版社から出ていた日本文学全集、世界文学全集がポピュラーで、街の本屋、学校の図書室に必ずあり、読書を進めていくうえで、参考になったものである。
ただもっともらしい評価がある作家、特に読み進むのが楽そうなものは、その理由であまり手に取らない、ということはあったと思う。
 
ところが中年を過ぎるころから、まだ読んでいないもので、時間に余裕があるからのんびり読んでもいいや、というものを次々と読み始めた。それがイギリス女性作家による長編小説群、特にジェイン・オースティンであり、フランスだとバルザックなどであった。
頭でっかちだったころだと、何か俗っぽいと思っただろうが、半分は娯楽的な期待で読めば、かなりの収穫はあった。
そういう中でイギリスの男性作家の小説もいくつか読んだのだが、有名ではあるが全く手をつけてなかったのがディケンズである。
 
その「大いなる遺産」、原作を読んでから映画というセオリーもあるかもしれないが、そうこだわらなくてもいいかと思っている。
 
さて、19世紀イギリスの田舎、親がいなくなり姉の夫である鍛冶屋のジョーに育てられているピップ、ある時屋外で脱走した囚人マグイッチと出会い、結果として少し助けることになる。囚人は結局つかまって連れていかれるが、その最後の少年との短いやり取りで、後の展開がほぼわかった気になる。ところが、、、
 
少年は屋敷に住む変わった夫人ハヴィシャムに目をかけられ、養女エステラと出会い互いに惹かれる。そこへ弁護士ジャガーズが現れ、ピップが匿名の人の大いなる遺産を相続することになったと告げる。そこからピップはロンドンで紳士の仲間に入る訓練を受け、違う世界に入っていくのだが、それは実は前段の世界ともつながっていて、最後はそれぞれの駒があるべきところにはまっていく、あれあれ、という話である。
 
したがって、ジェットコースター的なミステリー、ちょっとホラーともいえる世界で、アニメになってもいいくらいである。言ってしまえば、娯楽映画ベースのイギリスの田舎、富裕の大きな格差を背景にしたドラマ、エステロとの恋もまだるっこしい。が、最後はなんとか見る側の勘定としてもまとまりがついたというところだろうか。エステロは嫌なところが多いけれど、最後の1シーンで、でも人は変わると思わせるところがいい。
 
俳優としてはやはりヘレナ・ボナム・カーターとレイフ・ファインズ、どちらも老けたメイクの場面が多いが。私がヘレナを見るのは先の実写版「シンデレラ」のフェアリー(ゴッドマザー)以来、こういう歳をとった変わったキャラクターは共通していて、嫌いではない。この映画にはエステラ役のホリディ・グラインジャーもシンデレラの義理の姉アナスタシア役で出ている。


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