リヒャルト・シュトラウス「サロメ」
指揮:パトリック・サマーズ、演出:ユルゲン・フリム
カリタ・マッティラ(サロメ)、ユーハ・ウーシタロ(ヨカナーン)、キム・ベグリー(ヘロデ王)、イルディコ・コムロージ(ヘロディアス)、ジョセフ・カイザー(ナラボート)
2008年10月11日 メトロポリタン歌劇場 (9.2012 WOWOW)
サロメもメトロポリタンとなると、舞台は最初から最後まで明るく、ヨカナーンが入れられている井戸のようなところ以外は、すべてがはっきり見える。これには見えるものについてあまり考え込まないで聴いていられるというメリットがある。
舞台右側はパレスティナ、エジプトなどを思わせる砂漠の中にある階段のようなところ、真ん中の井戸から左は現代の部屋、登場人物はほとんどが現代の衣装。
衣装が現代というのは昨今非常に多いからか、あまり抵抗感はない。主要登場人物の人となりと関係がわかれば、あとは音楽が、という作品でもあるし。
サロメのマッティラは体格が立派すぎて最初心配したが、聴いていくうちにあまり違和感はなくなっていった。それはヨカナーンも同じで、きわめて大柄だから、これが処刑される預言者というのは変な感じなのだが表現力はある。
サロメの歌手はイゾルデの声を持った少女でなければ、という話があるそうで、確かにマッティラは次第に圧倒される。心配したサロメの「七つのヴェールの踊り」もよくやったと言える。もっとも露出度をこのくらいに抑えたのはヨーロッパとちがいアメリカではここまでという事情があったのかもしれない。
サマーズ指揮のオーケストラも表現力は十分、いたるところで「サロメ」よりだいぶ後に作られた「バラの騎士」を連想させるフレージングが聴こえたのは、私にとって今回の発見だった。