プッチーニ:歌劇「修道女アンジェリカ」
指揮:リッカルド・シャイー、演出:ルーカ・ロンコーニ
バルバラ・フリットリ(修道女アンジェリカ)、マリアナ・リポヴシェク(公爵夫人、アンジェリカの叔母)、チンツィア・デ・モーラ(修道院長)
2008年3月6日 ミラノ・スカラ座 2014年2月 NHK BS Pre
三部作の二つ目で、話は修道院内、女声だけで演じられる。アンジェリカは両親を失い、わけあって未婚で産んでしまった男の子と引き離されこの修道院に入って数年、叔母の公爵夫人が訪ねてきて、妹が嫁ぐため遺産分配についてのサインを求められる。そのとき消息が絶えた息子のことをきくが、死んだことを知らされ、悲嘆にくれる。
修道院で薬草に詳しくなっていた彼女は、薬を調合して自殺を図るが、それは罪だと苦しみだす。そこに聖母マリアの奇跡がおこり、息子が現れてきたところで救われたアンジェリカは息絶える。
美しい音楽で、こういう世界をプッチーニが描いたということに驚く。そしてなんといってもフリットリのアンジェリカが、その容貌、声、演技いずれもこの人で聴けてよかったと思わせる。
巨大な女性が倒れているところが舞台になっていて、その上を中心に修道女たちがやりとりする。そして息子が死んだことを知った後にアンジェリカが倒れる姿をそのまま拡大したのがこの舞台だったとわかる、そういう効果をねらったもの。
三部作はダンテの神曲から想を得たといわれていて、先の「外套」が地獄篇、これが煉獄、次の「ジャンニ・スキッキ」が天国だそうで、私などには煉獄が直感的に一番わかりにくいのだが、アンジェリカの終盤の苦しみはそういうものなのかとも思う。しかし、この救済とも幻想とも思えるシーンを説得力を持って進めていくのは、プッチーニの音楽の力であり、ここでもシャイー指揮のオーケストラは見事である。
「外套」の筋はともかく音楽は「ボエーム」を連想させるが、この作品は「蝶々夫人」かもしれない。